異世界ライフは前途洋々

くるくる

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6.あぁ、お布団

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 ギルドに戻ってさっきの受付嬢に本登録できる街までの道を尋ねると、ここから南西に向かって歩きで3日ほどという事だった。そこはハイミルという街で冒険者ギルドの他に商業ギルドもあると教えてくれた。

  お礼を言って外へ出て、仮のカードを見せにもう一度門番の所へ。それが終わると夕方までヒマなので村の隅に座って仮登録の時に感じたステータスについての疑問をヘルプすると、皆が自分で見られる訳ではない事が分かった。アイテムバッグも早めに欲しいな。

  その後周囲に人が居ないのを確認してステータスのチェック。

 【名前】キラ
 【年令】20才
 【職業】冒険者(仮)

【レベル】20
【体力】112
【魔力】3110
【攻撃力】243
【防御力】246
【素早さ】76

【スキル】剣術(S)・火魔法(F)・解析(S)

【固有スキル】複製(F)3/3

【称号】転移人

  良かった、名前はちゃんとキラになってるし仮だけど職業冒険者だ。後はレベルが少し上がってる。…魔力はもう気にするのやめよう。攻撃力は短剣装備してるから243、レベル20で丸腰攻撃力が43っていうのはどうなんだろう?標準が知りたい。そのうち誰かをこっそり解析してもいいかな?

  さて、次はお金について。ステータスを閉じてヘルプする。

  この世界の通貨は全てギルで統一されている。

  小銅貨10ギル・銅貨100ギル・銀貨1,000ギル・金貨10,000ギル・白金貨100,000ギル

 1ギルは鉄貨なのだがあまり使われていなくて、端数は切り捨てか切り上げになる事が多い。日本円にすると10ギル=100円。物価は結構変動があるようなので自分の目で確かめるしかない。




  する事がなくなってしまい、ぼんやりと考える。

  冒険者の初めての依頼といって思い浮かぶのは、薬草集めや弱い魔物の討伐。やっぱり探索系と回復系のスキルは早めに欲しいな。

  …生えているものをまとめて解析とか出来ないかな。そういえば各スキルについてはヘルプしてないけど、まあやって確かめよう。

  早速自分の周囲の地面を見つめて解析する。と。

  ポンポンポンポンポンッとミニサイズの液晶がいくつも現れる。解析結果は雑草や土だったが見事に成功、さすがSランク。これはいい。直接触れていなくてもいいし探索の代わりになる。

  実はこのやり方、魔力の消費が多いので普通出来ない。こんなんで魔力を使ってしまってはいざ魔法で攻撃、という時に困る事になる。要するに魔力量が人と桁違いなキラだから出来るのだ。











 16時、村に鐘が響き渡る。どうやら2時間おきに鐘を鳴らして村人に時間を知らせているようだ。店はもう閉まり、さっきまで遊んでいた子供達ももう居ない。

  私は閑散とした道を歩いてギルドへ向かった。

  窓口にいたのはさっきの受付嬢とは違う女性。20代半ばの落ち着いた感じの人だ。

 「キラといいます。買い取りの査定を頼んでいたのですが」
 「承っております。カードをお願いします」
 「はい」

  彼女が奥へ行って戻ると、カードと硬貨をカウンターへ出した。

 「ゴブリン7体、ゴブリンの魔石5個、ホーンラビットの皮とツノ、魔石7個ずつで1,910ギルになります。オークは明日の朝までには査定が終わります」
 「ありがとうございます。明日また来ます」

  お礼を言うと女性は何故か少し目を見開く。でもそれ以上何を言うでもないようなので、硬貨とカードを仕舞って表へ出た。

  だが宿の場所を聞くのを忘れたと思い出し、中へ戻ろうとした。その時後ろから声をかけられる。

 「あ、キラさん!」
 「…門番さん?」

  振り向くとそこに居たのはガズリーさんにゲンコツを喰らった門番さん。

 「ギルドに御用ですか?」
 「宿の場所を聞こうと思って」
 「なら案内しますよ!」
 「…はあ」

  気の抜けた返事をしてしまったが彼に気にする様子は全くない。これで相手がよほど嫌な奴なら断って中に戻るんだけど…まあ彼は門番だし、案内してもらおう。

 「…お願いします」
 「はい!こちらです!」

  彼は嬉々として隣を歩きながらも目線を泳がせる。どこを見たら良いか分からない、といった感じだ。入り口でも今も、積極的に誘ってきた割に純情な雰囲気。面白い人だ。


 「ここです」

  村に一件しかないという宿は2階建ての木造で、門番さんの親友が営んでいるらしい。お礼を言おうとしたら彼が扉を開けてくれた。

 「…ありがとうございます」

  中は入ってすぐ右に小さなカウンター、その奥にキッチン。テーブル席が少々あって隅に階段。定番の食事処兼宿屋というやつだろう。

 「いらっしゃい!って、アクトか、よ…?」

  出てきたのは快活そうな男性。年令はやはり門番・・・アクトさんに近い。3度目で漸く門番さんの名前を知りました。

  宿の男性は目をテンにして私とアクトさんを見ている。口をパクパクして何か言いたげだ。アクトさんは何故か胸を張って自慢気なので話が進まない。

 「あの、泊まりたいんですが」
 「は、は?泊まる!?こいつと一緒に!?」

  何故そうなる。

 「…………私ひとりです。アクトさんにはここまで案内していただいたんです」
 「何だ、びっくりさせんなよ…って、悪い、泊まりだったな。朝夕食事付きで一泊300ギル、お湯がいるなら50ギルプラスだ。これに名前な」
 「はい。…では2泊分でお湯もお願いします」

  差し出された宿帳を記入して銀貨を出す。

 「お湯も2泊分か?」
 「はい」
 「なら釣りは300ギルな…ほいっと。飯はすぐ食えるぞ」
 「いただきます」
 「オ、オレも食ってく!」

  会話に入れていなかったアクトさんが手を上げて宣言する。

 「へいへい、分かったよ。…座ってな、すぐ持ってくるから」

  男性はアクトさんに適当に返してから私を席に促し、キッチンへ消えた。




  夕食は硬めのパンとシチューのような煮込み。異世界で初めての食事らしい食事を結局アクトさんと一緒に食べてから別れ、部屋へ上がった。

  部屋は6畳ほどでベッドとサイドテーブル、ロウソク、物を入れるコンテナのみだったが私にはこれで充分。あの廃村や夜通し歩いた事に比べれば天国だ。

  手拭いを借りてお湯をもらい、行水してビキニアーマーも一応拭いたが何故か綺麗で汗の匂いも無かった。これも大剣と同じ劣化なしだったから汚れにも強いのかもしれない。

  素っ裸でベッドに入る。

  ああ、お布団だ…。

  その日の私の思考はそんなマヌケな感じで終わった。

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