天狗と骨董屋

吉良鳥一

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河童の手のミイラ(下)

第四話

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 お参りして神様にお願いするとは止めといた方がいいと栗郷が言う。

「何でですか?」

「うちは稲荷神社だ。
願いが叶ってお礼参りしねぇと不機嫌になるからな」

「へぇ~、お狐様ってめんどくさいんですね」

 あんなに可愛い動物なのに案外怖い神様なんだなと真尋が言うと栗郷がその言葉に訂正を入れる。

「狐じゃねぇよ」

「はい?」

「だから狐はただの眷属で神様じゃねぇ」

 よく勘違いされるが、稲荷神社の神様は狐ではなく宇迦之御魂神ウカノミタマノカミと言う商売繁盛、五穀豊穣の女神である。
 そして稲荷神社ではお礼参りやきちんと信仰しないと祟られるなんて事も言われる。
 
「それと本来神様にはお願いじゃなくて、日頃の感謝を伝える為にお参りするんだよ。
元気に過ごせてありがとうございますって」

 そう利音が付け加えた。
 真尋は知らない事ばかりで感心した。

「勉強になる……」

 すると栗郷の上から何処からともなく狐が二匹舞い降りてきた。
 突然現れた真っ白で美しい二匹の狐。

「来たか……」

 栗郷はそう言って狐の一匹の頭に触れる。
 そんな綺麗な狐を見て真尋はすっかり心を奪われた。

「か、可愛い……
もふもふ………」

 キラキラした目を向けられ狐は真尋の方を見る。

「なんじゃ、あの子供は」

「喋った!!」

 言葉を発した狐に真尋が反応する。
 二匹の狐は栗郷の横をまるで遊んでいるかのように跳ねたりしながら浮遊している。

「蓮よ、我等は一体何をするのだ?」

「それに此奴らは何者じゃ?」

 狐は説明を求め、それに面倒くさそうに栗郷は彼らの事を説明する。
 狐は状況を理解したところで、また面倒なと不満を言う。

「取り敢えずお前らは犯人を取り押さえる為に張って欲しい。
万が一逃げられたら臭いを覚えて追えるだろ」

 そう栗郷の指示に仕方無くと言った様子で了承する。

 すると真尋は栗郷にこの狐はどちら様と聞いてきた。

「うちの眷属だ。
代々栗郷家が使役してる」

 この狐達は栗郷家の使役する妖狐であり、稲荷神社の眷属である。
 昔この神社を守る事を条件に栗郷家に使役されると言う契約を結んだ。
 もし、その条件を反故にすれば一族を呪うと言う。
 故に栗郷家は呪いに詳しくなった。
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