天狗と骨董屋

吉良鳥一

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片割れは傍らに在り(下)

第十話

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 悪鬼を助けた兎のぬいぐるみは白く光りながら姿を変えて行き、悪鬼と同じ姿へと変貌した。

「さえちゃん?
さえちゃん!!」

 悪鬼はぬいぐるみから姿を変えた少女へ抱きついた。

「やっと会えた……」

 二人はお互いを愛おしそうに抱き締め合い、再会を喜んでいた。

「これ、どう言うこと?」

 二つの同じぬいぐるみ、そして瓜二つの少女はが二人。
 状況が呑み込めない一同は、秋人が持っていたぬいぐるみについての説明を求め、ここに来る道中に会った男性の事を話した。

「利音さん、それって……」

  真尋と利音が探していたぬいぐるみは男によって盗まれた。
 しかも利音の推測通りぬいぐるみに憑依され、盗まされたと言う事だ。
 ネコが気配を追うのに迷っていた理由はこれか……
 どちらも似ているから区別がつかなかった。

 そして秋人と竜樹が探していた悪鬼を真尋と利音が、真尋と利音が探していたぬいぐるみを秋人が見つけ、それが奇跡的にここへ集まった。
    だが、そう喜んではいられない。

「面倒だな……
もう俺が殺る」

 利音は強力な妖が二人もいるとなると祓うのは容易ではない。
 更に悪鬼は人の心臓を抉り取り奪っている。
 利音の経験上その心臓を力を高めるため食べている可能性が高いと感じた。
 これ以上被害を拡大させて人を喰われれば手がつけられなくなる。
 ここで一気に方をつける。

「真尋、竜樹さんとそっちの天狗。
ここで叩くから退いてて」

「は?」

 上から目線の利音に何を言っているんだと疑義をただす。
 だが利音は彼らに耳を貸すつもりはなく、掌を高く掲げた。
 この術を使えば建物も木も周りの物は壊滅するだろう。
 ここにいる者も巻き込まれたらただではすまない筈だ。
 利音自身も相当の霊力を削られるためこれで決まらなければ少女らを倒すことは難しくなる。
 だがもうそんな事は言っていられない。

東方とうほうかみ彼岸ひがんかみ……」

「……っ!!」

 利音が紡ぐことばにビリビリとした空気がその場にいた皆が感じた。
 そして上空には雲が渦を巻き始める。

身命しんめいに……」

「待って!!」

「……!?」

 利音が術を唱え終わる前に秋人の持ってきた方の少女が両手を横に広げ攻撃をしないで欲しいと懇願する。


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