天狗と骨董屋

吉良鳥一

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緋色の罪

第十一話

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「クソッ!!」

    珍しく感情を露にする利音は慌てて術を放とうとする。

「もう遅い」

    椿は持っている水晶をぎゅっと握ると光を放ち、パリンと割れるように消えてしまった。
    すると光が椿の体を包み吸収されるように光は消えた。

    その瞬間に利音の術が放たれるがそれが椿の目の前で弾かれた。
    花椿の花弁が盾となったのだ。

「椿さん、なんで……
嘘だったんですか?」

    ショックを隠せない真尋に椿は淡々と答える。

「別に嘘はついてませんよ。
人に薬品をかけられたのも、弱っているのも本当です。
ただ少々祓い屋さんが男性であることを利用しただけです」

    女性が倒れそうになれば、さすがの利音も無下には出来ないだろうと思った。
    あとは賭けでもあったが、上手く行った。

    利音にしてみればまんまと騙された。
    雑魚だと思って油断してしまった。
    完全に判断ミスで、自分にも腹が立ってイライラする。
 
    しかし真尋は彼女の行為の真意が理解出来ず戸惑ったままだ。

「なんでそこまで……」

「何故?
樹木医などどうだっていい。
それにこれを使えば、元の妖力を上回る力を手に入れられる。
……嗚呼、これで人に復讐出来る」

「………っ!!」

    ニヤリと笑った椿に真尋は愕然とする。
    椿は最初から人に復讐をするのが目的だった。
    従来以上の力を手に入れ、草木を軽視する人の世を壊してやろうと思った。

「ネコ、あいつを捕らえろ!!」

    利音はネコを使って椿の動きを制限し確実に術を当てようと試みるが、地面から伸びてきた木の根が逆にネコを捕らえた。

「邪魔をするな」

    椿は花弁を無数に舞わせ、利音らの視界を封じ、突風が襲ってくる。

「マズい……
真尋、奴を追え!!」

「え?」

    どう言うことかと尋ねる前に、彼女の妖気が何処かへ移動するのが感じられた。
    どうやらここから逃げたようだ。

    真尋はすぐさま翼を生やし、椿の妖気を追い掛ける為に飛んだ。
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