ギャペラ～獣の世界に落ちて～

愛

第四話

 絵が得意なケイにミーシェは昔を思い出した。
 まだケイが日本に行ってしまう前の話だ。

 幼い頃から絵を描くのが好きだったケイは外に遊びに行っても地面に木の枝で絵を描いていたと言う。

 それを聞いたケイは確かに日本での幼い頃の写真には地面に木の枝で絵を描く姿が写っていたななんて思い出した。

 ケイは徐にもう一枚紙を手に取ると両親に目を移した。

｢二人を描いてもいい？｣

 そう聞くと二人は嬉しそうに改まった様子のポーズを取った。

｢あ～いや、普通にしてていいよ。
普通に椅子に座ってお茶でも飲んで談笑でもしてて｣

 そう言うと二人は少し戸惑う様子を見せたが、ケイの言う通りにした。
 
 どうやら絵を人物画を描くと言うと、畏まったポーズをしなければならないと言うイメージなのだそう。
 実際この世界の絵は綺麗なポーズで描かれているものばかりだ。
 何気無い日常を描く事はあまり無いそうだ。

 絵は"美しい物"と言うイメージが強いらしい。
 飾るならやはり綺麗だと思う瞬間の絵なのだと言う。

 きっとピカソや抽象画と言うのは理解されないんだろうなとケイは思う。

 ケイが絵を描くのに集中している中、両親や祖父のノーザン、ノイルはこちらの言葉で談笑していた。
 
 何を話しているのかは分からないが、時折笑顔も交えながら話しているので、楽しい会話なのだろうと思った。

 それからどのくらいが経ったろうか……
 ラジェッドがケイに声を掛けた。

｢ずっと描いていて疲れてないかい？
そろそろ夕飯の準備をしようと思うがどうだろう？｣

 絵に熱中し過ぎて時間を忘れてしまっていた。
 ケイは別に何時間でも描いていられるが、モデルの方がずっと同じような体勢で大変だろう。
 ケイは鉛筆を置き、彼らの方へ入っていった。

｢うん。悪い……｣