ギャペラ～獣の世界に落ちて～

情勢

第二話

 ケルティマ王国の隣国、テンペニル王国。
 極寒地に存在するその国とは小競り合いが絶えず、互いの兵を削るだけでメリットは少ない。
 かと言って手を引けば領土を取られる。

 だからこそ今回テンペニル側から受けた最大の譲歩。

 "話し合いをしましょう
でもこちらがマウント取ります"

 そう言っているようなこんな提案を受けた所でケルティマは受け入れる事は皆無だった。

 ケルティマは元々複数の小国が合併して出来た大国。
 最後に合併した国はライオンのギャペラが治める国で、ケルティマの現王族の先祖が戦争で勝ち取った。

 だからこそ散って行った者の為にも譲歩するなんてみっともないマネは出来ない。
 取れる物は力ずくでも取る。
 それが最大の弔いであるとシルヴァは考える。

｢先方に伝えろ。
断る、と……｣

｢御意。
………時に殿下｣

｢なんだ？｣

 外交官の男が聞きづらそうに言葉を投げ掛ける。

｢殿下のお連れになったあの少年は一体……｣

｢ケイの事か？
言っただろう婚約者だと｣

｢いやしかし彼は……
失礼を承知で、あまりご勝手が過ぎますと我が国が好奇の目に晒されてしまいます｣ 

 そもそも男との婚約など前代未聞。
 それも素性が分からなければ、普通の身体でもない。
 そんな者を王家へ迎えるなど国民からも批判を浴びるのは必至で、王家の求心力も低下となればこの国の安寧も担保出来ない。

｢くだらん……
俺が誰を娶ろうが政治が安定していれば国民は着いてくる。
他国が何を言おうが毅然としていれば良い。
他に何か言いたい者はいるか？｣

｢………｣

 そう言いながらも誰にも意見を言わせない雰囲気を纏わせていた。