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空虚

第一話

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 ベッドで暫くボーッとしていると突然ドアがノックされ、ガチャリと開いてノイルが入ってきた。

「なんだ、起きていたのか……
オハヨウ」

「あ、ああ……
おはよ……」

 お互い挨拶すると、ノイルの後ろに誰かいるのが見えた。

「誰……」

「ああ、紹介する。
ヴィアン、ケイの世話係りだ」

「ヴィアン デス。
ヨロシクオネガイシマス」

 たどたどしい日本語で挨拶するヴィアンと言う青年。
 いや、少年だろうか?
 小柄で可愛らしい顔をしていて、真っ白な長い耳が生えており、見たところウサギのギャペラのようだ。

 「つか、世話係りって……
俺ほんとにここに住むわけ?」

「王子がそう仰っている。
それにココも悪く無いと思う」

「お前他人事だと思って……」

 別に王子の愛人になりたい訳じゃない。
 ただ帰りたいだけなのに、何故こうなってしまったのだろう……

「お前があまりよく思って無いのはワカッてる。
だが、ここよりアンゼンな場所も無い。
それはワカッて欲しい」

 そう言われたら、ケイも黙るしかない。

「ああそうだ。
ケイ、お前のニモツが届いたぞ」

「ほんとか!?
どこにある?」

「先ずは食事が先だ。
もう出来てる」  

 ケイの早る気持ちを抑え、先に朝食を取るよう促す。

 その前に寝巻きから着替えるのだが、ヴィアンに寝巻きを脱ぐ所から世話される。
 自分でやると断るが、そう言うわけにはいかないと押しきられた。

 ケイよりも小柄な為、時折背伸びをしながら着替えを手伝う姿が可愛らしいなと思った。

 なんと言うか、元カレの奏多を思い出す。
 彼もこのくらいの背丈で可愛らしい顔立ちをしていたから……

 高校卒業前に一方的に振られたのだが。
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