ギャペラ～獣の世界に落ちて～

ケルティマ王国

第六話

 久々の再会を果たした兄弟だが、お互いの表情は違った。
 涼しい顔のシルヴァとは対照的に、アーシェルは険しい顔を見せる。

｢兄上、今までどちらにいらしたのですか？
せめて従者をつけて頂かないと何かあったらどうされるのですか!!｣

｢問題ない。
剣術も体術もそれなりに心得ている。
それに一人の方が気楽でいい｣

｢兄上!!｣

 第一王子と言う立場でありながらその自覚がないのか、しょっちゅう王宮を抜け出しては放浪しており、周りは大変頭を抱えている。

 しかも数年帰って来ない事もざらにあり、その間便りも寄越さないので従者をつけろと言うが、それすらも無視していつの間にか王宮から消えているからまた質が悪い。

 特にアーシェルは真面目で王子と言う立場をよく理解しているからこそ、どうしても兄の言動が解せない。

 二人が会話を交わしていると向こう側から二人の女性が歩いてくるのが見えた。

｢母上、ユフィリタ……｣

 二人はシルヴァの実母と異母妹のユフィリタで、どちらもホワイトタイガーのギャペラだ。
 妹のユフィリタだけは側室の子である。

 元々繁殖能力はそれほど高くないギャペラ。
 王となると跡継ぎの男子が必須なので、側室は数名存在する。

 その中でシルヴァとアーシェルは正妻、クレヴィアの子である。
 そしてシルヴァの目元は母、クレヴィアにそっくりだ。

｢まぁまぁシルヴァ。
やっと帰ってきたの？｣

｢母上、お久しゅう。
実は一目惚れした者を連れ帰りまして、後々紹介しようかと｣

｢はい!?｣

 シルヴァの唐突な発言に一番反応したのはアーシェルだった。