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ノ80 父なる悪魔

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 不意な攻撃を受けた府刹那が吹き飛ばされながらも波動の軌道を辿り、攻撃した当人を睨みつけ、ほぼ同時に雅綾と亜孔雀も素早く視線を向けた。

 中でも亜孔雀に関しては攻撃した主を見た瞬間、表情の分かり辛い顔が強張り明らかなる動揺の色が見え。

「ちっ!?父上!?」

 口から飛び出した言葉は雅綾と府刹那を驚かせるものだった。

 亜孔雀に父上呼ばわりされた者の姿は、亜孔雀の身体を一回り大きくした屈強な体格をしており、親子らしく顔も亜孔雀にそっくりであったが、黒く長い髭と傷の多い長い角が風格を醸し出している。

「せがれよ。貴様はなぜ仙人どもと戦っているのだ?オレは仙人界に密かに潜伏しろと命令したのではなかったか?」

 父らしき者の声は、まるで地獄の底から聴こえ恐怖心を煽るような重くゾッとする響きがあった。

 思わぬ展開に府刹那の集中力が途切れ、重力の壁から腕を抜いた亜孔雀が慌てて弁解する。

「もっ、申し訳ありません。今日まで上手くやっていたのですが、油断して此奴らに正体がバレてしまいまして...」

 先程まで老仙人の二人に見せていた傲慢で横柄な態度は何処へやら、今の亜孔雀はガラッと代わり、蛇に睨まれた蛙のように身をすくめていた。

 それだけ父と呼んだ悪魔を恐れているのであろう...
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