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ノ63 釣果

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 近年、すっかり日本に定着したがいこイベントであるハロウィンを過ぎ、聴けばそれとなく味わえる馴染み深い音楽も増え、人を心地よくさせてくれる雰囲気のクリスマスも終わりを迎えようとしている...

 我らが日本におけるクリスマスの歴史は、1552(天文21)年、山口県で宣教師たちが日本人信徒を招き、キリストの降誕祭のミサを行ったことが始まりであったけれど、江戸時代に入るとキリスト教弾圧があったため、クリスマスは明治時代の初め頃まで受け入れられなかった。つまり、日本でクリスマスというイベントが定着したのは明治時代以降ということになる。
 よって、現在語り手が語り綴る真如の物語の時代には、クリスマスのことを知る者はほとんど居ないに等しいわけだ。

 だからこれ以上関係性皆無のクリスマスからは頭を切り離し、江戸時代初期に則った仙人界での物語を再開することに致しましょう...

 
 そう、草原の丘の上に仙人自ら手作りした椅子と机を置き、二人の老仙人が百年顔を突き合わせて将棋で勝負する。
 この行為を敢えて表現するならば、「気狂いの極み」とでも云うべきであろうか。
 そんな老仙人二人から視線を外し、真如は釣り目的の湖を目指しスタスタと歩いて行った。

 当然と云えば当然なのだが、天空に浮かぶ超巨大な浮島に存在する仙人界には「海」が無い。
 そもそもなぜ天空に浮かぶ島があるのかという疑念はさておき、仙人界には海が無い代わりに池や湖、川などは存在している。
 おっと!?海が無いのであれば流れた川の水は何処を終着点としているのであろうか。
 神話的な説明をするなら、「アホほどデカい巨人が常に口を開け、流れ着く水を全て呑み干しているのだ」などと云うことも出来ようが、実際のところは仙人達の優れた知能をもってしても未だ謎であった。

 真如は兎にも角にも目的の湖に到着し、釣り糸の先端にある釣針に餌の「野草」を取り付け、「えいっ!」と気合を込めて湖へと投じた。

 
 それからどれくらいの無駄な時間が経過したであろうか...
 少なくとも三時間は経過したであろうに、真如の持つ釣竿は一度としてピクリとも動かなかった。
 この底が見えるほど澄んでいる水の美しい湖に、果たして魚が泳いでいるのかどうかも微妙ではあったけれど、まぁ本当に野草などを餌として魚が釣れるわけもなく、真如はただただ黙ったままのほほんとした表情で釣り楽しんでいた。
 
 彼女の釣りの真の目的は、釣り本来の釣果をあげることにあらず、のどかで落ち着いた雰囲気を楽しむことであったのかも知れない...
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