60 / 113
ノ60 新たな人生
しおりを挟む
「貴方ぁ、ちょぉっと酒癖が悪いようねぇ...まぁ仙桃を与えてしまった我にも責任があると言えばあるけれどぉ...そいっ!!!」
「ズドムッ!!」
「っ!!??...........」
雲峡は言葉尻に伊乃の鳩尾へ肘鉄をかまし、地味な動きに反して強烈過ぎるその一撃は、泥酔した伊乃を悶絶させると共に気絶させてしまった。
「睡眠も足りてなさそうだったから丁度良いかもねぇ♪『迷いの森』へ着くまでは寝てると良いわん♪」
雲峡が静かになって清々したかのようにそう言ったあと、二人を乗せた仙葉は暫くのあいだ出雲国へと空を真っ直ぐ飛んだ。
やがて、仙人覚醒を成す為の最初の試練となる地、出雲大社近くに存在する「迷いの森」へ辿り着いたのだった。
此処から数々の試練を命からがらなんとか乗り越え、全ての仙人を統べる仙人王より「聖天座真如(せいてんざしんにょ」の名を拝命し、人間の魂から仙人の魂への洗い替えも行った伊乃は、仙女への覚醒を見事に果たしたのである。
彼女、仙人としての名で「真如」は、人間界での絶望から新たに仙人としての人生を手に入れ、百五十年という人間からすれば途方もない年月を、摩訶不思議な仙人界で実に有意義に暮らすことが出来ていた。
永遠に続くものだと思われた仙人としての暮らしだったけれど、真如の前に突然現れた一人の男と出会った所為で終わりを迎えることになる...
さてさて、意外にも長くなってしまった伊乃こと聖天座真如の物語もいよいよ佳境となった次第でありまして、此処からは精一杯の力でもって「真如」の物語りを語ることに致しましょう...
仙人界といえども人間界と同じく地球にあれば、朝昼晩の風景や概念、時間の経過などは人間界と等しく存在する。
男と出会ってしまう運命の日は、いつもと変わらぬ何気ない日常の朝から始まった。
真如は自ら建築した一軒家に一人で暮らしており、極々たまに仙術の修行はするものの、金を稼ぐ為の仕事などという労働に縛られることもなく、朝はぐっすりゆっくりと寝過ごすのが常であった。
「...ふぅ、ふぅわぁ~、良く眠ったわい」
目覚めた真如が身体から掛布団を横へどける。といっても人工的に作られた羽毛布団などではなく、巨鳥の霊獣である朱雀(すざく)から奪った巨大な羽毛一枚であり、それを身体にちょんと乗せて寝るのが彼女にとっては気持ちが良いらしい。
真如は寝起きから腹を空かせて何かを食べたりすることは滅多にない。仙人は特異な体質を持っており、人間と違って空腹になることが極端に少ないからである。
「ズドムッ!!」
「っ!!??...........」
雲峡は言葉尻に伊乃の鳩尾へ肘鉄をかまし、地味な動きに反して強烈過ぎるその一撃は、泥酔した伊乃を悶絶させると共に気絶させてしまった。
「睡眠も足りてなさそうだったから丁度良いかもねぇ♪『迷いの森』へ着くまでは寝てると良いわん♪」
雲峡が静かになって清々したかのようにそう言ったあと、二人を乗せた仙葉は暫くのあいだ出雲国へと空を真っ直ぐ飛んだ。
やがて、仙人覚醒を成す為の最初の試練となる地、出雲大社近くに存在する「迷いの森」へ辿り着いたのだった。
此処から数々の試練を命からがらなんとか乗り越え、全ての仙人を統べる仙人王より「聖天座真如(せいてんざしんにょ」の名を拝命し、人間の魂から仙人の魂への洗い替えも行った伊乃は、仙女への覚醒を見事に果たしたのである。
彼女、仙人としての名で「真如」は、人間界での絶望から新たに仙人としての人生を手に入れ、百五十年という人間からすれば途方もない年月を、摩訶不思議な仙人界で実に有意義に暮らすことが出来ていた。
永遠に続くものだと思われた仙人としての暮らしだったけれど、真如の前に突然現れた一人の男と出会った所為で終わりを迎えることになる...
さてさて、意外にも長くなってしまった伊乃こと聖天座真如の物語もいよいよ佳境となった次第でありまして、此処からは精一杯の力でもって「真如」の物語りを語ることに致しましょう...
仙人界といえども人間界と同じく地球にあれば、朝昼晩の風景や概念、時間の経過などは人間界と等しく存在する。
男と出会ってしまう運命の日は、いつもと変わらぬ何気ない日常の朝から始まった。
真如は自ら建築した一軒家に一人で暮らしており、極々たまに仙術の修行はするものの、金を稼ぐ為の仕事などという労働に縛られることもなく、朝はぐっすりゆっくりと寝過ごすのが常であった。
「...ふぅ、ふぅわぁ~、良く眠ったわい」
目覚めた真如が身体から掛布団を横へどける。といっても人工的に作られた羽毛布団などではなく、巨鳥の霊獣である朱雀(すざく)から奪った巨大な羽毛一枚であり、それを身体にちょんと乗せて寝るのが彼女にとっては気持ちが良いらしい。
真如は寝起きから腹を空かせて何かを食べたりすることは滅多にない。仙人は特異な体質を持っており、人間と違って空腹になることが極端に少ないからである。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる