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ノ34 魔窟

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 にしてもだ。最低の三百歳だったとしても三世紀を生きたことになる仙人の雲峡。
 かの仙女に対して仙花達の持った印象を敢えて点数で云うならば、100点中おまけしても5点といったところであろう。
 仙花達にとって、昨日時点での雲峡の存在価値は、降って沸いた災難程度でしかなかったのである。
 まぁ、仙花達の前に突然現れ、いちゃもんをつけ逆ギレ状態で道を破壊し、挙げ句の果てには道の修復をお銀と妖狐の弧浪が成したのだから、当然といえば当然の評価であった。

 だが、仙花達にとって災難でしかなかった仙女の雲峡は、真如からすれば最高の仙人であり恩人でもあるらしい...

「...真如様にとっては崇高な存在なのだな、雲峡、様は...」

「そうなんじゃぁ、雲峡様のお陰で儂は自らの命を絶たずに済んだでのう...でじゃぁ、儂が仙女になれたのは、雲峡様のご教示くだされた洞窟と、その洞窟におったり、おらなかったりする仙人の力によるものなのじゃぁ」

「おったり、おらなかったりという箇所が引っかからないわけでもないが、取り敢えずその洞窟とやらは何処にあるのじゃ?」

「...この出雲国の地に、大国主神(おおくにぬしのかみ)を祀った出雲大社(いずもおおやしろ)と呼ばれる神社があるのは知っておろう?」

「うむ、じっ様が昔言っておった。いつの日か共に出雲大社へ旅でもしようではないかと...結局じっ様とは共に行けずじまいであったがな...」

 仙花と光圀の出会いの物語は以前語ったことはあるが、徳川御三家の水戸光圀は隠居の住処として建てた西山御殿に、当時十歳だった仙花を養子として迎え入れ、蝶よ花よとはいかないまでも、それはそれはたいそう可愛がったものである。
 光圀は時より、「いつの日か、親子水入らずで旅でもしようぞ」と、仙花に言っては喜んでいたものだけれど、隠居をしても幾人もの要人が西山御殿を訪れ、相談や依頼ごとを持ち込むものだから、結局、一泊二日程度で済むような近場への旅を余儀なくされた。
 それでも光圀には何故か、「出雲大社へは行きたいものだな」と仙花に言っていたと云う。

 しかし、天下の水戸光圀をよく知らぬ天聖座真如は、残念ながら無関心で続きを伝える。

「お主のじっ様と呼ぶ者のことは知らぬゆえ、話しを続けさてもらうぞい。良いか、今申した洞窟は「魔窟(まくつ)」、いわゆる魔境の洞窟じゃなぁ。儂も仙女になるため一度は入ったものの、用が済めば二度と入りとうない危険な場所じゃて」
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