29 / 113
ノ29 堕仙女 聖天座真如(せいてんざしんにょ)
しおりを挟む
「ガシャャン!」
老婆の度肝を抜く行動を目の当たりにした団子屋の娘が、店内に戻ろうとし矢先にお盆を落として割ってしまった。
皿の割れた音など耳に入らぬほど驚いた仙花一味も、皆が驚愕の表情で硬直し絶句する。
老婆の信じられない動きはそれほど衝撃なものだったのだ。
長椅子に座る隣の仙花に老婆が話し掛ける。
「お主、儂がただのばばあでないことくらい薄々感じておったのじゃろ?」
驚きで空いたままだった口を一度閉じて仙花が返す。
「...う、む。普通の人間ではないと思っておったが、其方は何者なのじゃ?もしや怪異ではあるまいな?」
「くっくっくっ、怪異とは片腹痛い...信じるも信じないもお主次第じゃが、わしゃぁ元仙女、堕仙女(だせんにょ)の聖天座真如(せいてんざしんにょ)じゃぁ」
「仙女!?其方がか!?」
「そうじゃ、しかし今云ったように『元』や『堕』のつく仙人じゃがなぁ...」
意味ありげな真如の言葉を受けた仙花が「う~む」と一考し、興味津々といった具合で続けて問う。
「なぜ其方は仙女でなくなったのだ?」
「くっくっくっ、初めて会うというのに遠慮せず早々に突っ込んでくるわいなぁ...これについては話せば長くなってしまうからのう...」
「串団子を百本も頼んだのだ。ゆっくり食べながら語れば良かろう。あ、いや。堕仙女の件は端的に頼む。他にも其方に訊きたいことが山ほどあるのじゃ」
養父である光圀の影響を必要以上に受けた仙花の喋り方は実に年寄り臭い。そのためこの二人の会話はまるで老人同士の会話に聞こえてしまうがそこはご愛嬌、というところであろうか...
「簡単に端折って云ってしまえば、仙人界の掟を破ったからじゃなぁ。掟とはつまり人間界で云うところの御法度じゃな、仙人界の者からすれば儂は罪人となるわけじゃ...とはいえ、仙人界への行き来や『仙人』を名乗ることができなくなっただけで、仙人だった頃の能力を失ったわけではないぞえ...」
辛い過去でも思い出したのであろうか、真如は微かに虚な表情を見せた。
「...なるほどのう。ようするに仙人界を追放されたようなものじゃな。その話も些か気になるところではあるが、今は敢えて訊くまい...」
「ほ、ほう。こんなおもしろい話しを聞かんで良いのかえ。興味があるなら話しても良いのだぞ」
「いや、もちろん興味はある。だが先を急がねばならぬゆえ、やはり今は遠慮しておこう」
仙人界をどうやって堕ちたのか話したそうな真如の言葉を、アッサリにしてバッサリと斬り捨てる仙花であった。
老婆の度肝を抜く行動を目の当たりにした団子屋の娘が、店内に戻ろうとし矢先にお盆を落として割ってしまった。
皿の割れた音など耳に入らぬほど驚いた仙花一味も、皆が驚愕の表情で硬直し絶句する。
老婆の信じられない動きはそれほど衝撃なものだったのだ。
長椅子に座る隣の仙花に老婆が話し掛ける。
「お主、儂がただのばばあでないことくらい薄々感じておったのじゃろ?」
驚きで空いたままだった口を一度閉じて仙花が返す。
「...う、む。普通の人間ではないと思っておったが、其方は何者なのじゃ?もしや怪異ではあるまいな?」
「くっくっくっ、怪異とは片腹痛い...信じるも信じないもお主次第じゃが、わしゃぁ元仙女、堕仙女(だせんにょ)の聖天座真如(せいてんざしんにょ)じゃぁ」
「仙女!?其方がか!?」
「そうじゃ、しかし今云ったように『元』や『堕』のつく仙人じゃがなぁ...」
意味ありげな真如の言葉を受けた仙花が「う~む」と一考し、興味津々といった具合で続けて問う。
「なぜ其方は仙女でなくなったのだ?」
「くっくっくっ、初めて会うというのに遠慮せず早々に突っ込んでくるわいなぁ...これについては話せば長くなってしまうからのう...」
「串団子を百本も頼んだのだ。ゆっくり食べながら語れば良かろう。あ、いや。堕仙女の件は端的に頼む。他にも其方に訊きたいことが山ほどあるのじゃ」
養父である光圀の影響を必要以上に受けた仙花の喋り方は実に年寄り臭い。そのためこの二人の会話はまるで老人同士の会話に聞こえてしまうがそこはご愛嬌、というところであろうか...
「簡単に端折って云ってしまえば、仙人界の掟を破ったからじゃなぁ。掟とはつまり人間界で云うところの御法度じゃな、仙人界の者からすれば儂は罪人となるわけじゃ...とはいえ、仙人界への行き来や『仙人』を名乗ることができなくなっただけで、仙人だった頃の能力を失ったわけではないぞえ...」
辛い過去でも思い出したのであろうか、真如は微かに虚な表情を見せた。
「...なるほどのう。ようするに仙人界を追放されたようなものじゃな。その話も些か気になるところではあるが、今は敢えて訊くまい...」
「ほ、ほう。こんなおもしろい話しを聞かんで良いのかえ。興味があるなら話しても良いのだぞ」
「いや、もちろん興味はある。だが先を急がねばならぬゆえ、やはり今は遠慮しておこう」
仙人界をどうやって堕ちたのか話したそうな真如の言葉を、アッサリにしてバッサリと斬り捨てる仙花であった。
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる