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ノ21 伝説の巨人

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 本気で棒っきれを打ち込んでいた九兵衛は肩透かしを喰らい、大勢を崩して前のめりによろめき...

「おっとと!?うっ!?うわぁっ!!??」

 闇雲に全身を包まれた九兵衛の叫び声が辺りに響いた!

「九兵衛ぇっ!!」

 救援に間に合わなかった蓮左衛門が名を叫び、真土間の仕業か本能による危険回避だったかは分からぬが途中で脚をピタリと止めてしまった。

 闇雲が九兵衛の身体から離れ宙に浮き、地べたにぐったりと倒れる彼の姿だけが残る...

 蓮左衛門が絶望している折、家の中から寝ていた仙花、お銀、そして珍しく目を覚ました雪舟丸の三人が駆けつけた。

「どうした蓮左衛門!何かあったのか!?」

 仙花の声に気付いた蓮左衛門が動揺し少し震えた口調で応える。

「きゅ、九兵衛が怪異に...やられてしまったでござる...」

 駆けつけた三人が蓮左衛門の視線を追い、倒れる九兵衛とその真上に浮かぶ闇雲を認識した。

「九兵衛...あれは何奴じゃ?」

「あの怪異は闇雲にございます。わたくしの所為で申し訳ございません...」

「んにゃっ!?」

 背後から聞き慣れぬ声がして振り向いて向いた仙花がお雛を目にして退き驚いた。彼女もまた幽霊初見の身なれば仕方がない。さらに云えば、お銀と雪舟丸の二人も若干引いていたことを付け加えておこう...

「そ、其方は?」

「お雛と申します。それより皆さん闇雲が動き出します」

 幽霊というものには感情こそあれど?、それをを表現することは些か難しいらしく、お雛の言い方は酷く冷静で辛辣なものに三人は聞こえた。

 が、幽霊の存在やものの言い方云々などどうでも良い状況と判断し、三人が揃って闇雲へ目線を戻す。

 立ち止まったまま動かず、動揺している蓮左衛門の心を感じとった闇雲が動かんとしたその刹那!

 倒れる九兵衛の身体が白い光を帯びたかと思うと、すぐさま青白く巨大な何かが溢れるように飛び出す!

「ウヴォオオオーーーーーーッ!!!低級な怪異が好き勝手暴れてくれよるわ!!我が一呑みにしてくれる!!」

 それは唐突で驚愕の出来事であった!

 九兵衛の身体を凌駕するほど巨大な人に近い形の頭が現れ、全てを喰らい尽くすが如き凶暴な口が「グァバァッ!!」と開き地響きを立てて吠えたのである!

「デイダラボッチか!!?」

 頭だけでも強烈な存在感と想像を絶するその姿に、怪異であるお雛を含めた全員が身体的にも精神的にもかつて経験したことのない衝撃を受けた!
 
 これが怪異にして山や湖沼を作ったという伝説の巨人。能力、危険度共に特級の桁違いな妖気を持つデイダラボッチであった!
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