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第145話 老化

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 確かに、男性が歳を取って薄毛が進行し、場合によってはハゲ散らかしてしまう悩みと同等、否、女性にとっての老化というものは、男性の「ハゲ散らかし問題」とは比較にならないほど悩ましいかも知れない。

 だが冷静的でも情熱的でもどちらでも構わないが、なんとなく世間を眺めてみれば、昭和時代の日本人と令和を生きる現代の日本人とを比べると、令和時代の40~60代の女性が如何に美しさを保てるようになったか歴然としているではないか。

 だがしかし、今はそんなことを考えている場合では断じてない。

 僕としては遺体を調べるにあたって髪の毛一本見逃さないよう緊張感を持ってやっているのだけれど、彼女に関しては僕のそれとは程遠く、我が助手ながら呆れるくらい空気の読めない奴である。

 ある意味ではそれでも構わないのだが...

「おい、未桜。老化するのは人間の定めだから考えるまでもないぞ。若い今のうちから精々老けないように勤しむことだな」

「ほ~い♪そうさせていただきま~す♪」

 結構な皮肉を込め、しかも悪態風に言ってみたのだけれど、彼女には僕の意図するところの半分も届いてないのかも知れない。無念だ...

 未桜とそんなやり取りをしているあいだに、淀鴛さんの方は受話器を置いて用事を済ませていた。

「一輪君、今回はラッキーだったな。今から看護師さんが被害者の衣服を持って来てくれるそうだ」

 淀鴛さんが言った言葉の裏には「警察の事情」というものが微かに垣間見えた。
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