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第139話 治外法権

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 彼女が人並み外れているところがあるのは特段驚くべきではないのかも知れないが、たまに鈴村未桜に現れる事象には驚いてしまうのが心情と言うべきであろう...

 そんなことより。

「淀鴛さん、病院まではあとどれくらいで着きそうですか?」

 井伊影村の中心から病院へ車を走らせ、彼の豪快な運転で山道を抜けるのに20分足らずだった。

「...あぁ、そうだなぁ...恐らくあと20分も車を走らせれば着く筈だ」

「は、早いですね」

 あれだけ飛ばせば、ね...

 確か出発前に「最低1時間はかかる」と言っていた彼の予測には、全くもってご自分の運転速度は加味されていなかったらしい...

 淀鴛さんがタバコを一本根っこまで吸い終わると、「よし、そろそろ行くとしますか」と声をかけられ、僕達はほぼ同時に車へ乗り込んだ。

 完全ではないけれど折角気分が良くなったのだから、もう同じような気持ち悪さを味わうのは絶対に遠慮したい。
 ここは言うだけ言ってみるのも悪くないだろう。

「淀鴛さん、できることなら運転はお手柔らかにお願いします」

「ハハハ、運転のことは心配しなくて良いよ。町も近くなったことだし、流石にここから先はスピードは出さない。法律をもって取り締まる職業につく俺が違反なんかしたら洒落にならないからね」

 なるほど、さっき通った山では治外法権の効果が働いていたようである...
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