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第120話 カチン!

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 朝食を食べたいがためであろう、未桜は二日酔いの症状など一切見せずリュックから着替えを取り出すと、僕がそばに居るのを忘れているのか、はたまた夢見心地で寝ぼけているのか、普通に着用している服を脱ぎ始めた。

「こらこら、僕がそばに居ることを忘れるな」

 このまま黙って見過ごすことは、正常な一日本男児として「アリ」と言えば「アリ」なのではなかろうかと一瞬頭をよぎったのだけれど、そこは僕の自尊心が許さず声をかけた。

「ひゃっ!?一輪!?居るなら居るって言ってよぉ!もう!」

 「もう!」とはことのほか侵害である。

「いやいや、君を起こしたのは僕なのだが何か落ち度でもあったかな?」

「あっ、そうだったの...気付かなかったぁごめ~ん」

 日が変わって手を合わせての最初の謝罪。昨日あれだけ人に謝罪をしたというのに懲りないやつだ...

「それより昨夜、酔い潰れた君をここまで運んだのは僕なのだが、そのことに関して一言くらいあって然るべきなんじゃないのか?」

 断っておくが僕は普段、人に親切を施した際に礼を要求するようなちっぽけな男ではない。今回の場合、彼女が寝起き早々から的外れな物言いをするものだから少々「カチン!」と来ただけである。

「ななななぁんとぉ!そんなこととはつゆ知らずご無礼な言葉の数々、平に!平にお許しを~!」

 だから変な言葉使いをチョイチョイ入れてくるなよな...
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