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第103話 当然
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若女将(仮)に教えられた通り、襖が開け広げられた和式の食事場へ入ると、食欲をそそるほんのりとした醤油の香りが漂っていた。
食事場全体は12畳ほどの面積があり、ちょっとした宴会なら十分に実行可能だという感想を持つに至る。
畳には松林の描かれた純和風置な仕切りが置かれており、それが三組の宿泊客の食事を摂るスペースを作り出していた。
「荒木咲さんは一番奥の席になりますので、どうぞお座りになってください」
料理が乗ったお盆を両手に抱えて僕達の横にスッと現れた若女将(仮)に誘導され、僕達は奥へ歩く。
一番手前の右手に見えたテーブルの上には、料理を食べ終えたと思われる空になった二人分の食器がそのまま置かれていた。
そして二番目のテーブルを素通りしようとした僕達の足は、一人で食事を摂っている男性を目にしてピタリと止まる。
「淀鴛さんじゃないですかぁ♪こんばんはぁ♪」
僕が声を発するより早く、未桜が実に気楽な感じで挨拶した相手は、燈明神社で初めて出会ったばかりだというのに、30年前の事件のことを話してくれた刑事であり、今現在、廃墟となっている燈明神社と家屋の所有者でもある淀鴛さんであった。
「おっ、おぉ君達か。奇遇だな...いや狭い村だ、旅行者が泊まれるところは限られているから当然と言えば当然か」
彼の言ったことに直ぐに納得がいった僕達は、とりあえず会釈をして料理の並べられた自分達の席へ腰を下ろした。
食事場全体は12畳ほどの面積があり、ちょっとした宴会なら十分に実行可能だという感想を持つに至る。
畳には松林の描かれた純和風置な仕切りが置かれており、それが三組の宿泊客の食事を摂るスペースを作り出していた。
「荒木咲さんは一番奥の席になりますので、どうぞお座りになってください」
料理が乗ったお盆を両手に抱えて僕達の横にスッと現れた若女将(仮)に誘導され、僕達は奥へ歩く。
一番手前の右手に見えたテーブルの上には、料理を食べ終えたと思われる空になった二人分の食器がそのまま置かれていた。
そして二番目のテーブルを素通りしようとした僕達の足は、一人で食事を摂っている男性を目にしてピタリと止まる。
「淀鴛さんじゃないですかぁ♪こんばんはぁ♪」
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