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第88話 女将
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「は~い、只今~」
廊下先の奥の部屋、当たり前だが確認したこともないので断定は出来ないけれど、恐らくは台所だと僕は想像している。
そこから聞こえた声は、午前中に初めて訪れた際に迎えてくれた老婆のものではなく、少しばかり若めの女性の声だった。
「あぁ...そっか」
「ん?」
そしてすぐに、電話で予約を入れた際に聞いた声だったことを思い出し呟くと、隣で靴を脱ぎ始めていた未桜が反応してこちらを振り向いた。
「あっ、いや、何でもない。気にしないでくれ」
「...ふ~ん」
この時、僕の方は本当に大したことではなかったのでそう言ったのだけれど、僅かに訝しげな表情を見せた彼女の脳裏には、後に僕が知ることとなるちょっとした、否、ちょっと程度ではない驚くべき事実について考えていたらしい...
と、廊下を小走りにこちらへ近づく足音が聞こえ、40代から50代くらいだと思しき着物姿の女性が僕達の前に現れた。
「荒木咲様ですね。お帰りなさいませぇ。昼間は急用で出迎えができず申し訳ございませんでした」
「いえいえ、女将さんに迎えていただいたので問題ありません」
「えっ?」
「えっ?」
女性の反応が鈍く僕も釣られてしまい思わず疑問符が出てしまった。
僕は午前中に「民宿むらやど」へ到着してから部屋まで案内してくれた老婆が女将で、勝手ではあるがこの人は若女将だと考えそう言ったのだが...
廊下先の奥の部屋、当たり前だが確認したこともないので断定は出来ないけれど、恐らくは台所だと僕は想像している。
そこから聞こえた声は、午前中に初めて訪れた際に迎えてくれた老婆のものではなく、少しばかり若めの女性の声だった。
「あぁ...そっか」
「ん?」
そしてすぐに、電話で予約を入れた際に聞いた声だったことを思い出し呟くと、隣で靴を脱ぎ始めていた未桜が反応してこちらを振り向いた。
「あっ、いや、何でもない。気にしないでくれ」
「...ふ~ん」
この時、僕の方は本当に大したことではなかったのでそう言ったのだけれど、僅かに訝しげな表情を見せた彼女の脳裏には、後に僕が知ることとなるちょっとした、否、ちょっと程度ではない驚くべき事実について考えていたらしい...
と、廊下を小走りにこちらへ近づく足音が聞こえ、40代から50代くらいだと思しき着物姿の女性が僕達の前に現れた。
「荒木咲様ですね。お帰りなさいませぇ。昼間は急用で出迎えができず申し訳ございませんでした」
「いえいえ、女将さんに迎えていただいたので問題ありません」
「えっ?」
「えっ?」
女性の反応が鈍く僕も釣られてしまい思わず疑問符が出てしまった。
僕は午前中に「民宿むらやど」へ到着してから部屋まで案内してくれた老婆が女将で、勝手ではあるがこの人は若女将だと考えそう言ったのだが...
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