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第55話 山猫
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「助手よ、見えたか?」
「うん、ほとんど見えた。あれは絶対に猫だったよ」
「僕もハッキリではないが猫にしか見えなかった。しかし、普通の野良猫では無く、恐らくは山猫といったところだろうな...」
「そう言われればそうかも知れない、かなぁ...」
目に映ったのがほんの僅かな時間であったため、二人とも決定的な確信を得てはいなかったが、あれは「飼い猫」ではなく「山猫」に違いないという結論に至った。
なぜ僕達が猫は猫でも「飼い猫」ではなく、厳しい自然界で野生的に生きる「山猫」だと判断したのか説明しよう。
世の中には単に可愛いという理由だけで猫を飼い始める人がいらっしゃるわけだが、猫を飼うためのリスクなどをさして調べもせず飼い始めた結果、飼い慣らした温室育ちの可愛い猫を山に捨てるなどの暴挙に至る飼い主も存在する。
ペットフードを与つつ、飼い慣らした獲物を捕らえる術を知らない猫を森や山に捨てた場合、その猫がいったいどのような末路を辿るのか?
稀だが自然に溶け込み生き延びる捨て猫も存在するのだろうけれど、普通に考えれば食糧不足で野垂れ死ぬが関の山といったところであろう。
街中で捨てられた猫に関しては、食料を無駄に捨てたりなんかする人間社会でギリギリ生き延びることも可能であろうが...
「ど」が付くほど田舎の井伊影村の民家の無い森の奥に、無情にも飼い猫が捨てられたとして、生き延びられる可能性は極端に低いのである。
以上の理由から、僕達はあの逃げ去った猫が「山猫」であるという結論に至ったわけだ...
「うん、ほとんど見えた。あれは絶対に猫だったよ」
「僕もハッキリではないが猫にしか見えなかった。しかし、普通の野良猫では無く、恐らくは山猫といったところだろうな...」
「そう言われればそうかも知れない、かなぁ...」
目に映ったのがほんの僅かな時間であったため、二人とも決定的な確信を得てはいなかったが、あれは「飼い猫」ではなく「山猫」に違いないという結論に至った。
なぜ僕達が猫は猫でも「飼い猫」ではなく、厳しい自然界で野生的に生きる「山猫」だと判断したのか説明しよう。
世の中には単に可愛いという理由だけで猫を飼い始める人がいらっしゃるわけだが、猫を飼うためのリスクなどをさして調べもせず飼い始めた結果、飼い慣らした温室育ちの可愛い猫を山に捨てるなどの暴挙に至る飼い主も存在する。
ペットフードを与つつ、飼い慣らした獲物を捕らえる術を知らない猫を森や山に捨てた場合、その猫がいったいどのような末路を辿るのか?
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