45 / 168
第45話 廃墟探索
しおりを挟む
淀鴛さんの願いが僕の予測の範疇を超えて来なかったことに少しばかり安堵した。
というか30年前かの事件の話しが聞いた通り事実だとすれば、時間の許す限り協力したい気持ちもあったくらいである。
「淀鴛さん、お安い御用です。何か気付いたことがあれば伝えますよ。で、ですね。これから燈明神社と後ろのご実家を探索したいのですが...」
僕は今まで廃墟探索する際はある程度下調べをして、所有者と連絡が取れた場合は許可をもらって探索して来た。
今回の燈明神社に関しても当然調べたのだが取得できた情報が余りにも少なく、仕方がないから無許可で探索しようと思っていたのだが、所有者を目の前にして無許可で探索する訳にもいくまい。
「構わん。30年前に捨てた家だ。好きなだけ探索すれば良い。その変わり」
「事件の手掛かりがもし見つかれば知らせれば良いんですね。了解です」
「ククク、そうだ」
僕が被せるように返したのが可笑しかったのか淀鴛さんは苦笑していた。
そのあと、淀鴛さんは自分の携帯番号を書き記したメモを僕に渡すと、背を向けて煙草に火をつけ鳥居のある方へと去って行った。
時刻をスマホで確かめると午後の2時半を回っている。
「予定より随分と時間が押してしまったなぁ。まぁそれは良いとしてじっくり探索を楽しもうじゃないか」
未桜に向かってそう呼びかけたのだが、彼女は神社の後ろに見える淀鴛家の方をジッと見詰めたまま動かない...
明らかに彼女の様子は変であり、嫌な予感が僕の中に湧き上がる。
目線を固定したまま恐ろしく低いテンションの未桜が言う。
「一輪、あのさぁ...あそこに」
「待てーーーっ!!待て待て待て待て待て待ってくれ!皆まで言ってくれるなよ!僕は淀鴛さんの話しを聞いてただでさえ警戒心が働いてしまってるんだ。これ以上余計な情報を耳に入れた暁には探索どころじゃなくなってしまうじゃないか!」
前にも言ったが一際霊感の強い彼女のことだ。
この不穏な様子からして何かを視るなり感じるなりしてるに決まってる。
図らずも淀鴛さんの話しのお陰で全くの無警戒だった廃墟に対し、余計な警戒心やら恐怖心の生まれ出した僕の心は既にキャパオーバーなのだ。
これ以上余計な情報など仕入れたくない僕は本気で未桜の言葉を遮った。
「...ふ~ん、フフフ、なるほどねぇ、わかったぁ。じゃあ探索終了間際にお知らせしちゃうね♪」
僕の慌てふためく様を眺めた彼女の様子は一転し、さも揶揄うように、そして嬉しそうにそう言ったのだった。
というか30年前かの事件の話しが聞いた通り事実だとすれば、時間の許す限り協力したい気持ちもあったくらいである。
「淀鴛さん、お安い御用です。何か気付いたことがあれば伝えますよ。で、ですね。これから燈明神社と後ろのご実家を探索したいのですが...」
僕は今まで廃墟探索する際はある程度下調べをして、所有者と連絡が取れた場合は許可をもらって探索して来た。
今回の燈明神社に関しても当然調べたのだが取得できた情報が余りにも少なく、仕方がないから無許可で探索しようと思っていたのだが、所有者を目の前にして無許可で探索する訳にもいくまい。
「構わん。30年前に捨てた家だ。好きなだけ探索すれば良い。その変わり」
「事件の手掛かりがもし見つかれば知らせれば良いんですね。了解です」
「ククク、そうだ」
僕が被せるように返したのが可笑しかったのか淀鴛さんは苦笑していた。
そのあと、淀鴛さんは自分の携帯番号を書き記したメモを僕に渡すと、背を向けて煙草に火をつけ鳥居のある方へと去って行った。
時刻をスマホで確かめると午後の2時半を回っている。
「予定より随分と時間が押してしまったなぁ。まぁそれは良いとしてじっくり探索を楽しもうじゃないか」
未桜に向かってそう呼びかけたのだが、彼女は神社の後ろに見える淀鴛家の方をジッと見詰めたまま動かない...
明らかに彼女の様子は変であり、嫌な予感が僕の中に湧き上がる。
目線を固定したまま恐ろしく低いテンションの未桜が言う。
「一輪、あのさぁ...あそこに」
「待てーーーっ!!待て待て待て待て待て待ってくれ!皆まで言ってくれるなよ!僕は淀鴛さんの話しを聞いてただでさえ警戒心が働いてしまってるんだ。これ以上余計な情報を耳に入れた暁には探索どころじゃなくなってしまうじゃないか!」
前にも言ったが一際霊感の強い彼女のことだ。
この不穏な様子からして何かを視るなり感じるなりしてるに決まってる。
図らずも淀鴛さんの話しのお陰で全くの無警戒だった廃墟に対し、余計な警戒心やら恐怖心の生まれ出した僕の心は既にキャパオーバーなのだ。
これ以上余計な情報など仕入れたくない僕は本気で未桜の言葉を遮った。
「...ふ~ん、フフフ、なるほどねぇ、わかったぁ。じゃあ探索終了間際にお知らせしちゃうね♪」
僕の慌てふためく様を眺めた彼女の様子は一転し、さも揶揄うように、そして嬉しそうにそう言ったのだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
ヨハネの傲慢(上) 神の処刑
真波馨
ミステリー
K県立浜市で市議会議員の連続失踪事件が発生し、県警察本部は市議会から極秘依頼を受けて議員たちの護衛を任される。公安課に所属する新宮時也もその一端を担うことになった。謎めいた失踪が、やがて汚職事件や殺人へ発展するとは知る由もなく——。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる