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第26話 違和感

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 一旦落ち着き、YouTubeと小型カメラの話しはこの辺で切り上げ、メインディッシュの廃墟たる豆苗神社の探索に集中しようと思う。


 鳥居は片方の柱が荒々しく真っ二つに折れ、通常なら平行に並んでいる最上段の笠木とその下の貫(ぬき)と呼ばれる部位が斜め45度に傾いていた。

 まるで神社本殿へ人が踏み入ることを拒むかのように...

 だがそんなことを気にするどころか興味が沸き上がって仕方なのない僕は、歩く速度を加速して一気に近づく。

 小さい鳥居であるとはいえ、笠木と貫を支えていた柱は僕の腰くらいもの太さがあり、どうやったらこの太い柱が折れるのか検分しながら暫し考える。

 折れたのは木造建築物の天敵であるシロアリの仕業なのか、経年劣化により弱ったところで強風にでもやられたのか、雷が直撃し破壊された可能性も無くはない。
 もしかしたら人為的なものかも知れないが、仮にそうだとしたら罰当たりにも程があるというものである。

 結局、鳥居の柱が折れた原因を突きとめることは出来なかったけれど、遅まきながら一つ肝心なことに気が付いた。

 普通の鳥居なら掲げられているであろう、神社の名称の彫られた「神額(しんがく)」が何処にも見当たらないのである。

「んん、『神額』が掲げられていない鳥居ってのもあるかも知れない。か...」

 神社の入り口で立ち止まったまま、多くの時間を割くわけにはいかないと考えた僕が前へ進もうとした直前。

 空気の澄んだ荘厳ともいえるこの静まり返ったこの空間に、助手のご機嫌な声が響く。

「一輪!見て見て~!そこの草むらで神社の『看板』見つけちゃった~♪」

 看板だと!?

 僕は「看板」というこの場に相応しくない単語に強く反応し、彼女の声がする方向へサッと目を向けた。

 そこにはまるで何かの大会で優勝でもしたかのように満面の笑みを浮かべ、「神額」を両手で持ち頭上に掲げる彼女の姿があった。

「...未桜、君の持っているそれは広い意味で看板ではあるけれど、決して『看板』などと軽く言ってはいけない重みのある物なんだ...ん!?待て、その看、『神額』に彫られている文字、なんだか変じゃないか?」

 僕は神額に彫られた文字を遠目から直視して、頭の中がぐにゃっとなるような違和感を覚えた。

「だよねぇ、わたしも最初に見た時『アレ!?』って思ったんだよねぇ...」

 未桜の疑問符はもっともであったし、僕も自分の目を疑わないわけにはいかなかった。

 何故なら神額に彫られた神社の名称は僕達の知る「豆苗神社」ではなく、恐らくは読み方だけ同じの「燈明神社」だったのだから...
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