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第14話 探偵の習性
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普段は外で食事をする際は、注文を済ませ料理が届くまでの隙間時間はスマホをで使って費やす。
だが折角遠方まで足を運んだのだから「一期一会」を大事にし、出来る限りこのラーメン屋のことを記憶に留めようと、僕はキョロキョロして店主に不快感を与えぬよう配慮し店内を隈なく眺めることにした。
パッと眺めてすぐに僕の目を引いた物が、店内の片隅に置かれた本棚に並ぶボロボロの少年漫画雑誌。
某超有名週刊漫画雑誌の背表紙には、発行した年が西暦で表示されているのだけれど、本棚に並べられた雑誌の背表紙には「1991年」の文字が印刷されていた。
確か当時連載されていたドラゴンボー○が絶頂期の年代ではなかろうか。
現在が2022年なので30年以上前に発行された雑誌ということになる。
古い、鬼のように古すぎる...
スマホの普及が原因か?などと一瞬だけ考えたけれど、初代スマホのiPhon○が発売されたのは2007年だから関連性は無さそうだ。
他の可能性を頭の中で探っていると、カウンターの端でラーメンを食べていた無精髭の男が立ち上がり、ズボンのポケットからサイフを取り出しお金を払う姿が目に映った。
探偵という特殊な稼業をしていれば、日頃から様々な人や物を注視する癖がついてしまう。
男は30代半ばくらいだろうか...その雰囲気と格好から井伊影村の人で無いことだけは判断できた。
「ご馳走さん」と男は店主に向かって言うと、一切無駄の無いスムーズな動きで店内から出て行った。
あの身のこなし、何者だろうか...
まぁ考えてみれば、食い終わって店から出るまで無駄な動きをする客も少ないけれど、僕にそう思わせた男の動作はとにかく「普通」ではなかったのだ。
僕の興味が余りにも古い漫画雑誌から店を後にした男へ移った頃、店主が両手に持ったラーメンのどんぶりを二つ運んで近づく。
「お待ちど~、ご注文のチャーシューメン二つ。ライスと餃子も只今持って来ますので」
店主は僕達のテーブルへラーメンどんぶりを置くと、カウンターに準備していたライスと餃子の二組も運んでくれた。
「ごゆっくりどうぞ」
店主は皺だらけの顔に皺の数をさらに加え、素敵な笑顔を僕達に見せ厨房へと戻って行った。
「うわぁ美味しそう♪」
「...だな。ほれ」
喜びながらスマホでラーメンの画像を撮る未桜に、僕はパンパンに詰まった箸立てからサッと割り箸を取り出して渡す。
「SNSに画像をアップするのは構わないが、余計なコメントは控えれくれよ」
「そんなこと言われなくても心得てますよ~♪」
現在におけるネット上の情報量は間違いなく「異常事態」と言っても差し支えないだろう。
例えば未桜が日常的にやっているインスタグラ○一つとっても、スマホがあり電波の届く場所であれば、いつでも気軽に全世界へ向けて情報発信できるわけである。
情報が命の探偵としては、ネット社会の現状は情報源としての命綱であると同時に、危険因子を存分に含んだ爆弾であると言わざるを得ない。
だが折角遠方まで足を運んだのだから「一期一会」を大事にし、出来る限りこのラーメン屋のことを記憶に留めようと、僕はキョロキョロして店主に不快感を与えぬよう配慮し店内を隈なく眺めることにした。
パッと眺めてすぐに僕の目を引いた物が、店内の片隅に置かれた本棚に並ぶボロボロの少年漫画雑誌。
某超有名週刊漫画雑誌の背表紙には、発行した年が西暦で表示されているのだけれど、本棚に並べられた雑誌の背表紙には「1991年」の文字が印刷されていた。
確か当時連載されていたドラゴンボー○が絶頂期の年代ではなかろうか。
現在が2022年なので30年以上前に発行された雑誌ということになる。
古い、鬼のように古すぎる...
スマホの普及が原因か?などと一瞬だけ考えたけれど、初代スマホのiPhon○が発売されたのは2007年だから関連性は無さそうだ。
他の可能性を頭の中で探っていると、カウンターの端でラーメンを食べていた無精髭の男が立ち上がり、ズボンのポケットからサイフを取り出しお金を払う姿が目に映った。
探偵という特殊な稼業をしていれば、日頃から様々な人や物を注視する癖がついてしまう。
男は30代半ばくらいだろうか...その雰囲気と格好から井伊影村の人で無いことだけは判断できた。
「ご馳走さん」と男は店主に向かって言うと、一切無駄の無いスムーズな動きで店内から出て行った。
あの身のこなし、何者だろうか...
まぁ考えてみれば、食い終わって店から出るまで無駄な動きをする客も少ないけれど、僕にそう思わせた男の動作はとにかく「普通」ではなかったのだ。
僕の興味が余りにも古い漫画雑誌から店を後にした男へ移った頃、店主が両手に持ったラーメンのどんぶりを二つ運んで近づく。
「お待ちど~、ご注文のチャーシューメン二つ。ライスと餃子も只今持って来ますので」
店主は僕達のテーブルへラーメンどんぶりを置くと、カウンターに準備していたライスと餃子の二組も運んでくれた。
「ごゆっくりどうぞ」
店主は皺だらけの顔に皺の数をさらに加え、素敵な笑顔を僕達に見せ厨房へと戻って行った。
「うわぁ美味しそう♪」
「...だな。ほれ」
喜びながらスマホでラーメンの画像を撮る未桜に、僕はパンパンに詰まった箸立てからサッと割り箸を取り出して渡す。
「SNSに画像をアップするのは構わないが、余計なコメントは控えれくれよ」
「そんなこと言われなくても心得てますよ~♪」
現在におけるネット上の情報量は間違いなく「異常事態」と言っても差し支えないだろう。
例えば未桜が日常的にやっているインスタグラ○一つとっても、スマホがあり電波の届く場所であれば、いつでも気軽に全世界へ向けて情報発信できるわけである。
情報が命の探偵としては、ネット社会の現状は情報源としての命綱であると同時に、危険因子を存分に含んだ爆弾であると言わざるを得ない。
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