上 下
36 / 62

再会

しおりを挟む
 城下町ミシルにはアディア城へ続く一本道の大通りがあり、そこをミアは歩いて行きアディア城の門まで辿り着いた。

 門の前には兵士が二人立っていて、片方の兵士がミアに問いかける。

「そこの者。用件と名を申せ」

「ミアと申します。この度は明日開かれる闘技大会の手続きに参りました」

 闘技大会への参加申込みは、ペタリドから送った申込書により済んでいるのだが、アディア城側が参加者の到着を確認するため手続きが必要だったのである。
 兵士が闘技大会参加者一覧を確認して言う。

「よし、中に入って左に受付がある。そこで手続きを済ませ戻るがいい」

「ありがとうございます」

 門を通って言われた通りに進む。
 受付のカウンターがあり、そこには女性が立っていた。

「あなたも闘技大会の参加者ね。ここに記名してくれるかしら」

「あ、はい!」

 ミアが名前を書いているところへ受付の女性が話し掛ける。

「あなた若いわね。しかも華奢に見えるけど本当に出場するの?」

 女性は心配して言ってくれたのだろう。
 ミアは元気に応える。

「自分の腕を確かめてみたいんです。わたしこう見えて結構強いんですよ」

「そう、なら良いわ。でも危なくなったら躊躇せず棄権するのよ」

「お気遣いありがとうございます」

 手続きの済んだミアが入って来た門に向かうと、扉が開き三人の男が場内に入って来た。
 三人の内の一人が城内の階段の方へ歩く途中、ミアの存在に気付き歩み寄って声を掛ける。

「失礼、もしかして君も闘技大会に出場するのかい?」

「はい!そうです!」

 後から近寄った男が話す。

「ほ~勇気のあるお嬢さんだな。武器は何を使うんだい?」

 ミアは腰に着けていた銀の剣を鞘ごと取って見せた。
 その鞘を見た最初に声を掛けた男が驚きの表情をして言う。

「まさか君はセトさんの娘のミア?」

 そう言われて男の顔をまじまじと見たミアがハッとする。

「ひょっとしてシャナン兄ちゃん?」

「そうだ。12年前ペタリドの魔物退治に行ったシャナンだ!」

「お髭を生やしてるから全然分からなかったわ」

「ああ、そうか。この髭は表面的な威厳を出す為に生やしているんだよ」

 シャナンがウインクして言った。
 三人の内最後に近寄った男がシャナンに言う。

「この子が統括長から何度も聞かされたペタリドの娘さんですか。折角だから俺達のことも紹介して下さいよ」

「聞かされたとは心外だな。まあ良い。ミア、こっちがアーダイン、でこっちがデュバル。一応二人とも剣聖七葉の剣聖だ」

 シャナンの雑な紹介に、笑いながらアーダインとデュバルが手を差し出しミアと握手を交わした。

 このあとシャナンに夕食に誘われたミアは、それを了承して別れたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~

笹原うずら
ファンタジー
獣人ばかりの世界の主人公は、炎を使う人間の姿をした少年だった。 鳥人族の国、スカイルの孤児の施設で育てられた主人公、サン。彼は陽天流という剣術の師範であるハヤブサの獣人ファルに預けられ、剣術の修行に明け暮れていた。しかしある日、ライバルであるツバメの獣人スアロと手合わせをした際、獣の力を持たないサンは、敗北してしまう。 自信の才能のなさに落ち込みながらも、様々な人の励ましを経て、立ち直るサン。しかしそんなサンが施設に戻ったとき、獣人の獣の部位を売買するパーツ商人に、サンは施設の仲間を奪われてしまう。さらに、サンの事を待ち構えていたパーツ商人の一人、ハイエナのイエナに死にかけの重傷を負わされる。 傷だらけの身体を抱えながらも、みんなを守るために立ち上がり、母の形見のペンダントを握り締めるサン。するとその時、死んだはずの母がサンの前に現れ、彼の炎の力を呼び覚ますのだった。 炎の力で獣人だらけの世界を切り開く、痛快大長編異世界ファンタジーが、今ここに開幕する!!!

神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎
ファンタジー
生まれながらに2つの特性を備え、幼少の頃に出会った「神さま」から2つの能力を授かり、努力に努力を重ねて、剣と魔法の超絶技能『修羅剣技』を習得し、『剣聖』の称号を得た、ちょっと女好きな青年マッツ・オーウェン。 ランディア王国の守備隊長である彼は、片田舎のラシカ地区で起きた『モンスター発生』という小さな事件に取り組んでいた。 やがてその事件をきっかけに、彼を密かに慕う高位魔術師リディア・ベルネット、彼を公に慕う大弓使いアデリナ・ズーハーなどの仲間達と共に数多の国を旅する事になる。 ランディア国王直々の任務を遂行するため、個人、家族、集団、時には国家レベルの問題を解決し、更に心身共に強く成長していく。 何故か老化が止まった美女や美少年、東方の凄腕暗殺者達、未知のモンスター、伝説の魔神、そして全ての次元を超越する『超人』達と出会い、助け合い、戦い、笑い、そして、鼻の下を伸ばしながら ――― ※「小説家になろう」で掲載したものを全話加筆、修正、時々《おまけ》話を追加していきます。

僕達の世界線は永遠に変わらない 第一部

流川おるたな
ファンタジー
 普通の高校生だった僕はあることが理由で一ヶ月のあいだ眠りにつく。  時間が経過して目を覚ました僕が見た世界は無残な姿に変わり果てていた。  その要因は地球の衛星である月にあったのだが...  

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

ギミックハウス~第495代目当主~

北きつね
ファンタジー
 男は、重度の肺炎で息を引き取った・・・・。はずであった。  男は知らない豪奢なベッドの上で覚醒する。  男は、自分の手足が縮んでいることを知る。  男に与えられた情報は、少ない。  男が得た物は、豪奢なベッドと、分厚い本だけだ。  男は”ハウス6174”の第495代目当主になったことを知る。  男は、なぜ呼び出されたのか?死にたくなければ、戦わなければならない。  男には、戦う手段が無い。男は、本とハウス6174で侵入者を迎え撃つ。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第、直していきますが、更新はまとめてになると思います。   誤字脱字、表現がおかしいなどのご指摘はすごく嬉しいです。

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...