プロメテウスの神託

流川おるたな

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序章

30話目 桐生要の復活

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 ガラス張りで造られたカプセル状のベッドの上には、何も着ていない裸の少年が仰向けの姿勢で眠っており、頭には情報転送に必要な機器が幾つも取り付けられていた。
 ベッドへプロメテウスが歩み寄りガラス部分に手をかざすと、ガラスが左右に開きベッドの両脇へと収まった。彼女はそのまま少年の頭に取り付けられた機器を外していく。

「プロメ、俺は話を詳しくしらないんだが本当に要様は生き返るんだな?」

「…冬春様、あと数分もすればその疑問は払拭されます。もう暫くお待ちください」

「わ、わかった。大人しく待つとしよう」

 プロメテウスに諭されるように言われた冬春は口を閉じ、彼女の邪魔にならないよう黙っておくことにした。
 黒川と環奈の二人も同様に固唾を飲むようにして静かに待つ。

 そして数分のあいだプロメテウスが周囲の機械をスムーズな手つきでいじり出し、一通り作業を済ますと再び性根の横に立った。

「要様、全ての工程は完了いたしました。もう目覚めていただいても大丈夫でございます」

 彼女の声が少年に届いたのか、死んだようにピクリとも動かず眠っていた少年の両手の指が微妙に動く。

「おっ!!??おおぅ!?宗ちゃん見た?いま指が動いたよぉ」

「ええ、ええ。見てますとも見てますとも。いよいよその時が来たようですね」

「…なんだか嫌にドキドキするな…」

 桐生要の復活を心待ちにする三人がざわつき出した瞬間!
 少年が腹筋でもするかのような速さで上半身をムクっと起こし「カッ!」と目を見開いた。

「っ!!?」

「うひょっ!!?

「ぬぅお!!?」

 少年の急な挙動にそれぞれが驚きの表情をして声をあげた。
 そのままプロメテウスを含めた四人が黙視していると、少年が自分の両手を顔に近づけ指が動くことを確かめ口を開く。

「…これが僕の新しい身体か…動く、動くぞ!喋ることもできる!さっきはプロメの声が耳にも届いた。成功だな…僕はすごく嬉しく思う!よくやってくれたなプロメ!」

「要様!わたしも喜びの感情をたったいま非常に感じている次第でございます!」
 
 要とプロメテウスの二人が面と向き合い、喜びを分かち合っているところへふくれっ面をした環奈が口を挟む。

「ねぇねぇ!要様!二人の世界に入り込んでないでさぁ!こっちの三人の方も見てよぉ…私たちがどんなに心配してたか知ってるのぉ?」

 環奈の声に気づいた要が三人の方へ視線を移し、それぞれの顔を確認するようように眺める。

「黒川さん、冬春、環奈…みんな、心配かけて悪かったね。でも見ての通りだ。僕は一度確かに死んだが、こうして無事に生き返ることができたよ。しかもこの通り、ずっと若返った少年期の姿でね」
 
 

  
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