プロメテウスの神託

流川おるたな

文字の大きさ
上 下
24 / 36
序章

24話目 味覚

しおりを挟む
「おっしゃる通り、早めに使いたい食材もございましたので今夜はカレーにしました。プロメさんに喜んでもらえれば嬉しいのですが」

 黒川は優しい笑顔でプロメテウスに視線を送った。

 因みに、インド料理は香辛料を多用するため外国人の多くはインド料理の煮込み料理を「カレー」と認識している。しかし外国人がカレーと呼ぶインドの煮込み料理は、サーグ、サンバール、コルマ、ダールなど、それぞれに固有の名称があり、「カレー」という料理はないらしい。

 環奈とプロメの二人が黒川が作った料理などを運ぶ手伝いをして、テーブルに全て並んだところで三人が揃って食事を摂る。
 環奈と黒川の二人がスプーンを握ったままカレーには手をつけず、心配そうにしてプロメに注目した。

「プロメさん、カレーの食べ方は知ってますか?」

「もちろんカレーに関する情報も全て頭に入っております。ですが初めて食べ物を口に入れるとなると意外に緊張するものですね」

 普通の人間であれば、赤ん坊の時期は離乳食などを親から一方的に与えられ、幼児の時期になると食べ方を教わり徐々に食べられるものが増えてき、やがて一人で食事ができるようになるという段階を踏んでいくものだが、ことプロメテウスに関してはその全過程をすっ飛ばし、大きな赤ん坊的存在となっているわけで...

「では、いただきます」

 プロメテウスがカレーと米粒を半々の割合でスプーンに乗せ口にし、モグモグと口を動かすと彼女の口角が上がり満足そうな笑みを浮かべた。

  環奈がプロメテウスの感想を早く聞きたくてウズウズしながら訊く。

「プロメ、美味しい?ねぇ美味しい?」

 プロメテウスがカレーを喉に流し込み「ぷふぅ~」と息を吐き。

「こっ!これがカレーというものでございますか!!??わたしは美味しさのあまりもの凄い高揚感で満たされております!これが人間の持つ味覚というものなのでございますね!素晴らしい!わたしは感動し過ぎてブルブルと膝の震えが止まりません!」

 環奈と黒川の二人は興奮したプロメテウスを初めて見た。そしてテーブルの下を覗き込み、彼女の言うブルブルと振動する膝の震えを確認したのだった。

「そうですかそうですか。そんなに喜んでいただけるとは、作った甲斐があったというものです」

 黒川は料理人としての喜びを表情にあらわしていた。

「宗ちゃん!わたしたちも早く食べよう!」

「そうですね。いただくとしましょう」

 三人が三人とも遅くなった夕食を心ゆくまで堪能し、プロメテウスの圧倒的な知識量を知ることとなる会話が夜更かしするまで続いたあと、それぞれの個室に移り、密度の濃い悲しみと喜びに溢れた一日を終えたのだった...



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ
ファンタジー
キャッチフレーズは二話から本編! 最強魔王による、おしのび冒険者育成旅行日記! 異世界といえば、冒険者。 そう思っていた時期がありました。 魔王に転生して社畜のような生活を送っていた田中は、さらなる異世界に呼び出され……そして、旅立った。 仕事を投げ出して。 そこでは、理想の冒険者が闊歩する町並みが。 キタコレ! 田中の異世界冒険者(育成)日記の幕開け! そして以下あらすじ ある世界に、転生してすぐに魔王になってしまった日本人の若者が居ました。 彼は、魔王として部下に慕われつつも、良いように使われ、人間達に良いように使われ、城の運営が上手くいくようにあれこれ苦心し、城下に住まう魔物達を守り、その生活を向上させることに苦心し、自分の国の為に大魔王に歯向かい、大魔王の住む地で国を興し、迫害される人を助けたり、魔族を助けたり、さらには… とにかく、王のくせに一番働いて、一番苦労をしていたのです。 ところが、ある日強力な魔力を感じ、その魔力にされるがままに他の世界に召喚されたのでした。 異世界転生からの、異世界転移という数奇な運命を辿りながらも、今度こそ異世界チートヒャッハーを楽しもうと思ったのですが、そこで一人の少年に出会い、彼との出会いが元魔王の考えを変えたのです。 うん、冒険者になって、この新人を育ててみるか… 育成ゲーム感覚で、この新人冒険者を適当に育て始めます。 そこから、冒険者育成にはまった魔王様。 そこから始まる魔王の暇潰しかつ異世界満喫物語。 最初に育てた新人だけでは飽き足らず、あちこちの冒険者にちょっかいを出す魔王の、自己満おせっかいストーリーです。

『え?みんな弱すぎない?』現代では俺の魔法は古代魔法で最強でした!100年前の勇者パーティーの魔法使いがまた世界を救う

さかいおさむ
ファンタジー
勇者が魔王を倒して100年間、世界は平和だった。 しかし、その平和は少しづつ壊れ始めていた。滅びたはずのモンスターの出現が始まった。 その頃、地下で謎の氷漬けの男が見つかる。 男は100年前の勇者パーティーの魔法使い。彼の使う魔法は今では禁止されている最強の古代魔法。 「この時代の魔法弱すぎないか?」 仕方ない、100年ぶりにまた世界を救うか。魔法使いは旅立つ。

なんで私だけなんですか!?

Liry
ファンタジー
『さぁ、冒険へ出発だ!』 どうも、私、今井若菜25歳、元気と言いたいところですが、あまり元気ではもない、しがない社畜のOLです。 ある日、ちょっと会社に嫌気がさして会社に行く途中で少し寄り道しようと公園のベンチでコーヒーを飲みながら一休みしていたら、高校生五人組が私の前を通りかかったときですねぇ、私も詳しくはわからないのですが凄い光に包まれて気づいたらあんなことに!! 友情のドキドキストーリーです!!

夢にまで見た異世界召喚に巻き込まれたけれど、虐め勇者の高校生に役立たずはいらないと追放された。

克全
ファンタジー
「カクヨム」「アルファポリス」「ノベルバ」にも投稿しています。 横断歩道で信号待ちしていた佐藤克也は、酔っ払い運転のトレーラーに突っ込まれ、一緒に信号待ちしていた高校生4人組と一緒に絶命した。 だがこれは、虐め抜いて自殺強要をした高校生に天罰を与えるものだった。 それを、バカでドジで調子者の天使が設定をミスったせいで巻き込まれたのだった。 佐藤克也は配下の天使の失敗に責任を感じて詫びる神に奇跡の生還劇を願うが、多数の目撃者がいる無残に潰された身体を再生する事はできないと断られてしまった。 代わりに提案されたのが、これまで生きてきた記憶と知識、経験と技術を反映させた異世界転生だった。 だが佐藤克也は、ヒーローに憧れる少し痛い熟年だった。 仮〇〇イダー、ウ〇トラ〇ン、勧善懲悪時代劇に憧れていた。 激しい交渉の末に、神が作った仮空間で修業するという条件で、無双の力と大賢者の知識を授かる事になった。  そして佐藤克也改めカーツ・サートは、自殺強要高校生が勇者として召喚された世界に、偶然勇者召喚に巻き込まれた被害者として転移するのだった。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

【完結】Giantkilling

松竹梅
ファンタジー
普通の会社員は何者かに殺され異世界に転生してしまう!

処理中です...