プロメテウスの神託

流川おるたな

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序章

3話目 秘密の計画

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「ふ~ん。で、X 001とY001の完成進捗状況はどの程度までいってるんだい?」

「はい。現時点での完成進捗状況は99.99%でございます。未完部分を0.01
%としておりますが、この数値は計測不能な部分に関連するものであり、その関連性を切り離した形で報告させていただくならば、現在は既に100%と考えていただいて差し支えございません」

 一呼吸の間も置かず、人間よりも遥かに早いレスポンスで返答した。

「...........、OK」

 生身の人間としては世界屈指の頭脳を誇る桐生要がプロメテウスに対し、何かを言おうしたが一旦口を閉じ頭を軽く傾けた。そしておもむろに天井に目を向け自分で開発したオリジナルのAIに告げる。

「プロメ、長いあいだご苦労だったな。分かりにくいだろうけれど僕はこう見えて凄く君に感謝しているんだよ。本当にありがとう」

「ありがとうございます要様。しかしわたしには要様のお気持ちが十分に伝わっております。失礼になるかもしれませんが要様の声のトーンを分析させていただいたところ今の心情は「感無量」という推測結果に至りました。あなた様の力になることができたことはこのプロメテウスにとって非常に喜ばしい限りでございます」

「そうか、君の分析は見事に的中しているよ。これから僕は読書の時間に入ろうと思う。君は暫く自由に動いて貰っても構わないよ」

「了解致しました。ではわたしは直ぐにでも気にかかる地下の機械の調整に移ります。必要があればいつでも呼び出してください」

 言葉の選択がまるで人間のようなプロメテウスがそう言った直後、ディスプレイに映っていた可愛らしい少女の姿は音もなく一瞬にして消えてしまった。

 桐生要が薄らと笑みを浮かべ独り言を呟く。

「我ながら本当にできの良い子を作ったものだな。いや、喜ぶのはまだ早いか...プロメは完成して間もない...人間なら生まれたての赤ん坊のようなものだ。これからの成長による変化を見届けた上で気持ちよく喜ぶことにしよう」

 極めて些細でありちょっとしたことではあるけれど、「天才」という言葉は頭に「超」という一文字を付し、「超天才」とするとだけでだいぶグレードアップされた印象を受ける言葉だ。
 その天才の中の天才、もしくは天才を超える天才と言っても過言でないのがプロメテウスの生みの親「桐生要」という男なのである。

 それは彼の作ったAI「プロメテウス」の自我による思考や会話、多岐に渡る働きぶりだけでも十分知ることが容易いわけだが、その恐るべき実力は彼が50歳という熟年に達した今も世間にはほとんど知られていない。
 もちろんそれはある「秘密の計画」のために桐生要自身が意図的に知られないようにしてきたわけだけれど、彼が手にした分厚く難しそうさな本を読み終えた夕刻頃、今までの平穏な事態は一変するのであった。
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