64 / 97
苦悩
しおりを挟む
部長は谷口さんの座っていた椅子に腰掛けた姿勢でスーッと現れた。お陰様で幽霊には慣れたかも、昼間限定だけれど。
「部長、姿を見せてくれましたね。あの方は奥さんで間違い無いですか?」
幽霊が声を出せるのか検証だ。
しかし、部長が口をパクパクして何かを話しているが何も聞こえない...
「何かを話して頂いているのは分かるんですが、こちらには何も聞こえなです」
部長はしかめ面で俺を静止するような素振りをした。ちょっと待てという事だろう。それから発生練習のような動きをする。
「ん、あ、ん、あーあー」
ようやく俺の耳に声が届いた。
「どうだ今度は聞こえるか?」
「あ~はい、今聞こえるようになりました。声を出すのって大変そうですね」
「波長というか何というか。まぁ簡単に言えばラジオの周波数を調整する感じかも知れん」
この世とあの世の違い、他の異世界のように物理的には存在していないのだろうか。確か天照様に異世界について説明を受けた時は霊界という単語は出て来なかった。霊界が存在するとしても異世界と違い多分特別なものだろう。
幽遊白書って漫画では確か...!?、長考に入ろうとした俺を部長が睨みつけているので考えるのはまた今度。
「何があったか知らんが仙道君は若返ったような気がするな。ふむ、それはさておき話しをしても善いか?」
「あ、すみませんどうぞどうぞ」
やはり俺の異変に気づいていたか。
「あれは妻で間違い無い。それと俺が自殺したのは妻が言ってた通り仕事、いや、正確には職探しが原因だった」
「部長が自殺をするほど追い込まれたって事ですよね。差し支えなければ詳しく教えてください」
もはや生きている人と同じように会話出来てるな。
「元部下のお前に愚痴のような話しをしたくは無かったが、もう死んでるんだ。恥ずかしがる事もあるまい。始まりは石橋フーズの倒産だ」
石橋フーズが倒産した時、俺も含めて働いていた従業員はみんな大変だったろうな。
部長は続ける。
「倒産して突然職を失い俺は焦っていた。よくある話しだが、家のローンがまだ残っていたからな。当てにしてた退職金は一切支給されなかったし次の日から直ぐハローワークに通ったよ」
俺は相槌を打つ。
部長には家族があった事を思い出していた。
「当時の私は58歳。求人によっては年齢制限もあって厳しい状況だった。それでもプライドなんか捨てて、石橋フーズ時代の取引先にも空きがないかと頭を下げた」
就活の厳しさなら俺も分かる。部長は年齢的にもっと厳しかっただろう。
「かなり妥協もして会社の面接を何件、何十件受けてもダメだった。取引先に頭下げたのも含めて全て無駄に終わったよ」
「部長、姿を見せてくれましたね。あの方は奥さんで間違い無いですか?」
幽霊が声を出せるのか検証だ。
しかし、部長が口をパクパクして何かを話しているが何も聞こえない...
「何かを話して頂いているのは分かるんですが、こちらには何も聞こえなです」
部長はしかめ面で俺を静止するような素振りをした。ちょっと待てという事だろう。それから発生練習のような動きをする。
「ん、あ、ん、あーあー」
ようやく俺の耳に声が届いた。
「どうだ今度は聞こえるか?」
「あ~はい、今聞こえるようになりました。声を出すのって大変そうですね」
「波長というか何というか。まぁ簡単に言えばラジオの周波数を調整する感じかも知れん」
この世とあの世の違い、他の異世界のように物理的には存在していないのだろうか。確か天照様に異世界について説明を受けた時は霊界という単語は出て来なかった。霊界が存在するとしても異世界と違い多分特別なものだろう。
幽遊白書って漫画では確か...!?、長考に入ろうとした俺を部長が睨みつけているので考えるのはまた今度。
「何があったか知らんが仙道君は若返ったような気がするな。ふむ、それはさておき話しをしても善いか?」
「あ、すみませんどうぞどうぞ」
やはり俺の異変に気づいていたか。
「あれは妻で間違い無い。それと俺が自殺したのは妻が言ってた通り仕事、いや、正確には職探しが原因だった」
「部長が自殺をするほど追い込まれたって事ですよね。差し支えなければ詳しく教えてください」
もはや生きている人と同じように会話出来てるな。
「元部下のお前に愚痴のような話しをしたくは無かったが、もう死んでるんだ。恥ずかしがる事もあるまい。始まりは石橋フーズの倒産だ」
石橋フーズが倒産した時、俺も含めて働いていた従業員はみんな大変だったろうな。
部長は続ける。
「倒産して突然職を失い俺は焦っていた。よくある話しだが、家のローンがまだ残っていたからな。当てにしてた退職金は一切支給されなかったし次の日から直ぐハローワークに通ったよ」
俺は相槌を打つ。
部長には家族があった事を思い出していた。
「当時の私は58歳。求人によっては年齢制限もあって厳しい状況だった。それでもプライドなんか捨てて、石橋フーズ時代の取引先にも空きがないかと頭を下げた」
就活の厳しさなら俺も分かる。部長は年齢的にもっと厳しかっただろう。
「かなり妥協もして会社の面接を何件、何十件受けてもダメだった。取引先に頭下げたのも含めて全て無駄に終わったよ」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる