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模擬戦

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「鳳よ汝の愛でる者達を護りたまへ。ウィンドアーマー!」
 リアーネが言葉を発すると4人それぞれが風の渦に包まれ、一瞬にして風の渦は消え去った。目には見ないけれど、衣服の上にもう一枚服を着ているような不思議な感覚がある。
「貴方達に風の鎧を贈らせて頂きました。これで物理や魔法攻撃などのダメージを少し軽減出来ます。模擬戦とはいえ大怪我でもしたら大変ですからね。そうそう、この効力は1時間で消滅してしまうので、模擬戦を続行する場合は何度でも贈らせて頂きます」
「これは助かるよ!ありがとうリアーネ!」
 俺対泉音、みくる対治志という組み合わせで模擬戦を1時間。休憩を挟んで組み合わせを変更した後1時間。また休憩を挟んで組み合わせ変更後1時間のスケジュールを立てて模擬戦を開始した。
 リアーネには風の鎧の件と周りの監視役として残ってもらい、ルカリは回復魔法が使えると言うので救護班として残ってもらった。ミーコとミニョルの2人には食料調達をしてもらう。異世界者は狩りもするらしいので、山中に動物が存在するのであれば狩って来てくれるかも。
 自ら立てたスケジュールだったが考えが甘過ぎた。模擬戦といってもいわゆる戦闘をするのだから、体力や精神の消耗は半端ない。バスケやサッカーよりも遥かに疲労が激しいと言っても過言では無いだろう。
 俺達が10分~15分経つと疲労で動けなくなる度にルカリに回復してもらうという有様だった。例えるなら、宇宙船の中で無理な修行をしては仙豆で回復するというカカロットのやり方なのである。
 修行に厳しさは付き物だ。というか厳しくない楽な修行に意味などあろうものか!などと自分で自分を励ましながら取り組む。
 そんなこんなで模擬戦が終了したのは夕方5時過ぎだった。
 模擬戦実践者は当たり前だが、サポートしてくれたルカリとリアーネもへとへとになっていた。しかし、このスケジュールでやり切った泉音、みくる、治志の根性には平伏する。
 6人とも疲れて会話も無く休憩しているところへミーコとミニョルが帰って来た。
「おーい源九郎!帰って来たよ~!」
「今夜はこいつらの肉でバーベキューだ」
 ミーコは猪、ミニョルは熊を引きずっている。
「おいおい猪はともかく、その熊も仕留めたのか?」
「二人がかりでやったら楽勝だったぜ」
 ミニョルが自慢げに言う。
 この山に熊の存在が確認されたという驚きの情報はさておき、今夜のバーベキューがめちゃくちゃ楽しみになった。
「よし!みんな疲れているけれど、全員で夕食の準備に取り掛かろう!」
 こうして全員が残っている気力を振り絞り、共同で夕食作りを始めるのであった。
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