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第四章 絢爛のスクールフェスタ
第337話 愛を知り、愛を歌う
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「みなさまぁあああああああ! 大変ぇええええええん! お待たせいたしましたぁあああああああああーーーーー!! この特設ステージは、ご存じ、ジョニー! ジョニー・スパロウが司会進行を務めさせていただきまぁああああああすッ!!!」
司会として颯爽と現れたのは、武侠宴舞・カナルフォード杯でも活躍を見せてくれたジョニーだった。
「まさか、ジョニーを呼んでるなんて……」
「うっわ~! ひっさびさにマリーの本気を見たわ……」
事前になにも聞かされていなかったらしく、エステアとメルアが驚きのあまり絶句している。
「うふふっ。ライブ会場を盛り上げるに相応しい司会といえば、ジョニー・スパロウ以外に思いつきませんわ~!」
マリーが本当にあっさりと言って退けたのが、いっそ清々しい。
「にゃははっ! まあ、武侠宴舞・カナルフォード杯だけじゃなくて、武侠宴舞の主要公式戦には必ず呼ばれるほどの人気司会だもんな! 明日の大学部とプロリーグの試合にも呼ばれてるし」
「ジョニーさんの声を聞くと、頑張ろうってすごく思うよね。なんでも出来る気がするもん!」
それだけジョニーのあの熱のこもった司会には、不思議な力があるということだ。アルフェが影響を受けたのも当然で、観客はそれ以上に興奮した様子で歓声を上げている。その歓声はすぐに、僕たちの登場を待ち望む期待の声へと変わっていった。
「Re:berty! Re:berty!」
「Re:berty! Re:berty!」
生徒会総選挙でのお披露目とは比べものにならない、Re:bertyコールが響き渡る。武侠宴舞の時とは違い、生身でいることもあり、武侠宴舞・カナルフォード杯の熱狂にも負けない興奮が、ステージを包んでいるように感じられた。
「すっごい声援だよ! もう、やるっきゃないね!」
「ええ! みんなの期待に応え、それを上回るライブにしましょう!」
メルアの意気込みにエステアが頬を上気させて応える。大観衆の声援がエステアの不安を吹き飛ばしたその瞬間を、目の当たりにしたような気がした。
「行こう、アルフェ」
「うん、リーフ、ホムちゃん……」
アルフェが僕の手を取り、ホムに片手を伸ばす。
「みなさま、手をつないで参りましょう」
ホムの提案にエステアが手を取り、メルアとファラがそれに続く。
その間も、Re:bertyへの期待は高まり、僕たちを呼ぶ声が響き続けている。
「準備はよろしいですわね。では、参りますわよぉ~!」
マリーが大きく手を振り、ステージと僕たちを隔てていた暗幕を取り払うよう指示する。それを合図に、ジョニーの声が高らかに響き渡った。
「それでは、早速登場していただきましょう! リバティイイイイイイイイイイーーーーーー!!!」
手を繋ぎ、足並みを揃えて進む僕たちはたくさんの光と歓声、拍手を一斉に受ける。光に包まれたステージは、今まで立ったことのあるどの場所よりも眩しい。
「みんな、行くよ」
アルフェが歌うように口を開く。歓声でほとんど聞こえないはずのその声は、僕たちの胸に染み渡るように強く優しく届いた。
目を合わせて微笑み合い、手を解いてそれぞれの位置に着く。
「ねえ、あれ見て、金色の光……キラキラしてる!」
前方に座っていた小さな女の子が、僕たちの周りを乱舞するエーテルの光に気づいて指差した。ああ、それは僕のエーテルが衣装の簡易術式を通じて具現した光だ。ステージの上を漂う穏やかな風はエステアとホムの感情が共鳴した証。そして弾むように揺れる僕たちの衣装は、僕たちの楽しいという感情の表れだ。
柄にもなく興奮している。平常心なんて保てないほど、楽しくて、嬉しくて堪らない。こんなに沢山の人の期待と好意が、アルフェの感情を介して僕にも伝わってきている。僕が生み出した簡易術式の効果が、こんなに広く影響を及ぼすなんて思わなかった。
「……ワン、ツー……」
エステアに代わりリードギターを務めるホムが、皆と目を合わせながら合図する。ファラのドラムがリズムを刻んでいく。
「ワンツースリー」
――奏でよう、僕たちのラブソングを。
第一音が重なった瞬間、僕たちは――Re:bertyはひとつになった。
「もしも世界が明日変わっても――」
アルフェの澄んだ声が、想いを込めてラブソングを歌い上げる。
「ワタシのキミへの想いは変わらない――」
目を合わせ、僕もベースを奏でてその音に応える。
――僕も、僕も同じだよ、アルフェ。
想いを込めた分だけ、衣装が僕のエーテルに反応して煌めき出す。ステージが金色の光に溢れて煌めく。観客席に驚愕と興奮のざわめきが広がっていく。みんな笑顔で、僕たちのラブソングに合わせて手を振り、身体を揺らし、唇を動かしている。
ステージ上には、キラキラした眩しい景色が広がっている。
みんなの笑顔が弾けて、音が踊っている。なんて楽しいんだろうと感じながら隣を見れば、ホムがこの上ない優しい笑顔で僕と目を合わせてくれる。
ホム――僕の大切な娘、僕が愛を教えるべき家族。そんなホムと、今は言葉を交わさなくても通じ合っている、愛し合っている実感がある。ホムのギターの音色が優しく、時に強くそれを僕の心に届けてくれる。これがホムの愛だ。今表現できる、精一杯の感情をこの曲にぶつけているのが全身で感じられる。
ホムのギターに寄り添い、共に歩んでいるのはエステアの芯の通ったギターの音色だ。彼女の戦い方と同じ、真っ直ぐで淀みない美しい音色は、僕たちの強さを表現してくれている。
僕たちは、きっと大人になるだろう。これから目覚ましく世界も変わるだろう。
だけど、この瞬間をこうして過ごせる奇跡を全身で覚えていたい。
ファラのドラムが力強く、それを訴えて、メルアの鍵盤のメロディが未来への道標になろうとしてくれている。
ああ、このステージで僕たちは本当の意味でひとつになっている。
やっとわかった、エステアはこの未来を表現したくて、この曲を作って僕たちに託してくれたのだ。
遠くの人に届くように、文字通りアルフェが美しい歌声を響かせている。アルフェの声に滲むアルフェの想いが、ステージを更に煌めかせている。アルフェが歌いたかったラブソングは、今、ここにある。きっと、今完成した。
そしてみんなで造り上げたこのステージで、僕はもう一度愛を知る。
アルフェに出逢えていなかったら、僕は今でも愛を知らないかもしれない。孤独のままで良いと思っていたかもしれない。でも、今は違う。
アルフェが幼い頃に僕に約束を結ばせてくれて本当に良かった。
あの約束が僕がひとりではないと教えてくれる。僕に本当の意味での強さをくれる。
リリルルの占いを聞いた後だからなのか、アルフェと一緒に作った歌詞に深みが増している。もしも、リリルルが言うような残酷な運命の波に呑まれて、世界が明日変わったとしても、僕はアルフェが好きだ。アルフェもきっと僕を好きなままでいてくれる――そうあってほしい。
ああ、僕は愛を知らなくて、ずっと一人で生きていけると思っていたのに、いつの間にかこんなに欲張りになってしまったんだな。女神はそれを幸福を知り、求める権利に気づいたのだと笑うだろう。だけど、だけどそれでいい。
誰に笑われようとも、アルフェが僕にくれたこの気持ちは僕の宝物だ。そしてアルフェはそれをいつだって最高の輝きに導いてくれる。
この愛は、僕だけのものではなく、アルフェと二人の大切な宝物だ。アルフェはそれをこの歌を通じて、どこまでも真摯に僕に伝え、教えてくれたのだ。
―――――――
作中でRe:bertyが演奏した命の歌『アニマ』がYouTubeで公開中です。
よければMVを観にきてください。
https://www.youtube.com/watch?v=1ZFR8BZpDYc
司会として颯爽と現れたのは、武侠宴舞・カナルフォード杯でも活躍を見せてくれたジョニーだった。
「まさか、ジョニーを呼んでるなんて……」
「うっわ~! ひっさびさにマリーの本気を見たわ……」
事前になにも聞かされていなかったらしく、エステアとメルアが驚きのあまり絶句している。
「うふふっ。ライブ会場を盛り上げるに相応しい司会といえば、ジョニー・スパロウ以外に思いつきませんわ~!」
マリーが本当にあっさりと言って退けたのが、いっそ清々しい。
「にゃははっ! まあ、武侠宴舞・カナルフォード杯だけじゃなくて、武侠宴舞の主要公式戦には必ず呼ばれるほどの人気司会だもんな! 明日の大学部とプロリーグの試合にも呼ばれてるし」
「ジョニーさんの声を聞くと、頑張ろうってすごく思うよね。なんでも出来る気がするもん!」
それだけジョニーのあの熱のこもった司会には、不思議な力があるということだ。アルフェが影響を受けたのも当然で、観客はそれ以上に興奮した様子で歓声を上げている。その歓声はすぐに、僕たちの登場を待ち望む期待の声へと変わっていった。
「Re:berty! Re:berty!」
「Re:berty! Re:berty!」
生徒会総選挙でのお披露目とは比べものにならない、Re:bertyコールが響き渡る。武侠宴舞の時とは違い、生身でいることもあり、武侠宴舞・カナルフォード杯の熱狂にも負けない興奮が、ステージを包んでいるように感じられた。
「すっごい声援だよ! もう、やるっきゃないね!」
「ええ! みんなの期待に応え、それを上回るライブにしましょう!」
メルアの意気込みにエステアが頬を上気させて応える。大観衆の声援がエステアの不安を吹き飛ばしたその瞬間を、目の当たりにしたような気がした。
「行こう、アルフェ」
「うん、リーフ、ホムちゃん……」
アルフェが僕の手を取り、ホムに片手を伸ばす。
「みなさま、手をつないで参りましょう」
ホムの提案にエステアが手を取り、メルアとファラがそれに続く。
その間も、Re:bertyへの期待は高まり、僕たちを呼ぶ声が響き続けている。
「準備はよろしいですわね。では、参りますわよぉ~!」
マリーが大きく手を振り、ステージと僕たちを隔てていた暗幕を取り払うよう指示する。それを合図に、ジョニーの声が高らかに響き渡った。
「それでは、早速登場していただきましょう! リバティイイイイイイイイイイーーーーーー!!!」
手を繋ぎ、足並みを揃えて進む僕たちはたくさんの光と歓声、拍手を一斉に受ける。光に包まれたステージは、今まで立ったことのあるどの場所よりも眩しい。
「みんな、行くよ」
アルフェが歌うように口を開く。歓声でほとんど聞こえないはずのその声は、僕たちの胸に染み渡るように強く優しく届いた。
目を合わせて微笑み合い、手を解いてそれぞれの位置に着く。
「ねえ、あれ見て、金色の光……キラキラしてる!」
前方に座っていた小さな女の子が、僕たちの周りを乱舞するエーテルの光に気づいて指差した。ああ、それは僕のエーテルが衣装の簡易術式を通じて具現した光だ。ステージの上を漂う穏やかな風はエステアとホムの感情が共鳴した証。そして弾むように揺れる僕たちの衣装は、僕たちの楽しいという感情の表れだ。
柄にもなく興奮している。平常心なんて保てないほど、楽しくて、嬉しくて堪らない。こんなに沢山の人の期待と好意が、アルフェの感情を介して僕にも伝わってきている。僕が生み出した簡易術式の効果が、こんなに広く影響を及ぼすなんて思わなかった。
「……ワン、ツー……」
エステアに代わりリードギターを務めるホムが、皆と目を合わせながら合図する。ファラのドラムがリズムを刻んでいく。
「ワンツースリー」
――奏でよう、僕たちのラブソングを。
第一音が重なった瞬間、僕たちは――Re:bertyはひとつになった。
「もしも世界が明日変わっても――」
アルフェの澄んだ声が、想いを込めてラブソングを歌い上げる。
「ワタシのキミへの想いは変わらない――」
目を合わせ、僕もベースを奏でてその音に応える。
――僕も、僕も同じだよ、アルフェ。
想いを込めた分だけ、衣装が僕のエーテルに反応して煌めき出す。ステージが金色の光に溢れて煌めく。観客席に驚愕と興奮のざわめきが広がっていく。みんな笑顔で、僕たちのラブソングに合わせて手を振り、身体を揺らし、唇を動かしている。
ステージ上には、キラキラした眩しい景色が広がっている。
みんなの笑顔が弾けて、音が踊っている。なんて楽しいんだろうと感じながら隣を見れば、ホムがこの上ない優しい笑顔で僕と目を合わせてくれる。
ホム――僕の大切な娘、僕が愛を教えるべき家族。そんなホムと、今は言葉を交わさなくても通じ合っている、愛し合っている実感がある。ホムのギターの音色が優しく、時に強くそれを僕の心に届けてくれる。これがホムの愛だ。今表現できる、精一杯の感情をこの曲にぶつけているのが全身で感じられる。
ホムのギターに寄り添い、共に歩んでいるのはエステアの芯の通ったギターの音色だ。彼女の戦い方と同じ、真っ直ぐで淀みない美しい音色は、僕たちの強さを表現してくれている。
僕たちは、きっと大人になるだろう。これから目覚ましく世界も変わるだろう。
だけど、この瞬間をこうして過ごせる奇跡を全身で覚えていたい。
ファラのドラムが力強く、それを訴えて、メルアの鍵盤のメロディが未来への道標になろうとしてくれている。
ああ、このステージで僕たちは本当の意味でひとつになっている。
やっとわかった、エステアはこの未来を表現したくて、この曲を作って僕たちに託してくれたのだ。
遠くの人に届くように、文字通りアルフェが美しい歌声を響かせている。アルフェの声に滲むアルフェの想いが、ステージを更に煌めかせている。アルフェが歌いたかったラブソングは、今、ここにある。きっと、今完成した。
そしてみんなで造り上げたこのステージで、僕はもう一度愛を知る。
アルフェに出逢えていなかったら、僕は今でも愛を知らないかもしれない。孤独のままで良いと思っていたかもしれない。でも、今は違う。
アルフェが幼い頃に僕に約束を結ばせてくれて本当に良かった。
あの約束が僕がひとりではないと教えてくれる。僕に本当の意味での強さをくれる。
リリルルの占いを聞いた後だからなのか、アルフェと一緒に作った歌詞に深みが増している。もしも、リリルルが言うような残酷な運命の波に呑まれて、世界が明日変わったとしても、僕はアルフェが好きだ。アルフェもきっと僕を好きなままでいてくれる――そうあってほしい。
ああ、僕は愛を知らなくて、ずっと一人で生きていけると思っていたのに、いつの間にかこんなに欲張りになってしまったんだな。女神はそれを幸福を知り、求める権利に気づいたのだと笑うだろう。だけど、だけどそれでいい。
誰に笑われようとも、アルフェが僕にくれたこの気持ちは僕の宝物だ。そしてアルフェはそれをいつだって最高の輝きに導いてくれる。
この愛は、僕だけのものではなく、アルフェと二人の大切な宝物だ。アルフェはそれをこの歌を通じて、どこまでも真摯に僕に伝え、教えてくれたのだ。
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