167 / 396
第三章 暴風のコロッセオ
第167話 武侠宴舞の参加申請
しおりを挟む
「おはようございます、マスター」
翌朝、僕が目を覚ますと既に仕度を調えたホムがベッドの傍に控えていた。
「おはよう、ホム。調子はどうだい?」
「マスターのお陰で、よく眠れました」
誘眠を使ったので、ほとんど強制的に眠らせたに等しいのだが、ホムは感謝してくれているようだ。
「それは良かった」
僕もベッドから起き上がり、ホムの頭を撫でてやる。ホムの身体から少しだけ力が抜けるのがわかった。昨日の敗北を引き摺って、かなり気を張っているのが窺える。
「……気にしないように言っても難しいとは思うけれど、僕にはホムが必要だよ。それだけはわかっていてほしい」
「ありがとうございます」
ホムの顔にほんの一瞬、迷いのようなものが浮かんだのは多分気のせいではないだろうな。生みの親としては、ホムの心の傷をどうにかして癒やしてやらなければ。
けれど、どうすればホムに自信を取り戻してあげられるのだろう。僕が褒めたりするだけでは到底足りないことだけは、わかっているのだけれど。
考えても答えが出ないとわかっていても、心配が勝ってそのことばかり考えてしまう。上の空で朝食を摂り、いつものように教室に向かうと、教室の前にF組の生徒たちが集まっていた。
「リーフ!」
足音かなにかで判別したのか、ヴァナベルが大声で僕を呼ぶ。
「なにかあったのかい?」
早足でヴァナベルの方へ向かうと、彼女は教室の扉の貼り紙を指差した。
「酷ぇんだぜ。見てくれよ、これ!」
貼り紙には、教頭であるサクソス・カールマンの署名が見える。それだけで読む前から良い知らせでないことだけは理解できた。
『今後貴族寮の生徒がいる場合は、一般寮の生徒は中庭の使用を遠慮されたし――』
長々と前置きがついているが、要するにこういうことらしい。
「決闘に勝ったらオレたちの言い分を通すとか言いながら、コレだぜ。やっぱりあいつらは信用ならねぇ」
「……まあ、僕たちもちゃんと主張しなかったといえばそうだけど、まさかこんな露骨な制限がくるとは思っても見なかったな」
やれやれ、昨日のイグニスとリゼルはどうにかしてF組を排除したいのだろうな。昨日のイグニスの発言からも、亜人差別の強い意識を持っているのは明白だし、教頭先生と結託している可能性も高いだろう。
「これはやっぱり、武侠宴舞でこっちの実力を見せつけるしかねぇよなぁ!」
ヴァナベルが怒りに任せて足を踏み鳴らしながら、貼り紙を睨めつけている。この学校の評価すべきは実力主義が残されているという点であり、ヴァナベルのその意見には完全に同意だ。
「けど、機兵適性値の成績順だとオレは出られねぇ。リーフ、オレと代わってくれないか!?」
「僕と……?」
ヴァナベルの突然の申し出には驚いた。順当に行けば、ホムとファラ、僕で三人一組になるはずだが、ホムとファラ、ヴァナベルという組み合わせは、戦闘センスを考えれば悪くない選択肢に思えた。
「僕は――」
「……わたくしは、嫌です」
僕の返事を聞きたくないと言わんばかりの表情で、ホムがきつく唇を噛んでいる。
「悪ぃ。お前のマスターのこと、馬鹿にしてたのは、さすがに許してくれねぇよな」
「いえ、そうではありません。わたくしが戦うのは、マスターのためだからです」
そんなことを考えなくても良いと自分で言っておきながら、ホムのその強い想いに胸を打たれた。ああ、戦わなくていいとホムを戦いから遠ざけようとするのは、もしかすると間違っているのかもしれないな。
「……思うんだけど、ヴァナベル。君とファラ、ヌメリンで組むのはどうだろう?」
「はぁ!? 適性値100のホムはどうするんだよ!?」
僕の提案にヴァナベルが眉を吊り上げる。
「ホムは僕と組む。それから――」
「ワタシも一緒だよ、ホムちゃん」
僕の意向を汲み取ったアルフェが微笑んで同意を示してくれる。機兵適性値の値は81と武侠宴舞の参加申請にはギリギリではあるが、アルフェには魔法という武器がある。
通常の機兵では魔法の発動が不可能だが、この際なので僕がカスタマイズすることにしよう。共に戦ってくれるアルフェには、苦手とすることを強いるのではなく、強みを活かしてほしいし、僕にはそれを可能にする術がある。
「「リリルルは、観戦を楽しむとしよう」」
「にゃはっ。リリルルは三人で戦うより、二人一組の方が強そうだしな!」
「じゃあ、オレたちとリーフたちの2チームで申請しようぜ。数値だけで言えば、審査は通るだろうしな」
機兵適性値の高いリリルルが辞退の意向を示したことで、F組からは2チームの参加申請を行うことが決まった。
「……さて、武侠宴舞の参加申請の相談もいいが、昨日の騒ぎについて話を聞かせてもらうぞ」
いつの間にか背後に立っていたタヌタヌ先生が、手を叩いて僕たちを教室に促す。
「そっちはアルフェが投影魔法で記録してくれてるから、後で見てくれよ。それより、模擬戦でA組に勝ったのに、それで差別されんのは納得行かねぇよ」
ヴァナベルが率直に不満を口にして腕を組む。タヌタヌ先生は、苦笑を浮かべながら溜息を吐き、僕たち全員が着席するのを待ってから口を開いた。
「この学園は実力主義だ。クラス対抗模擬戦のみならず、全校生徒のなかでもとりわけ優秀な生徒が参加する武侠宴舞・カナルフォード杯……ここでそれ相応の成績をおさめれば、F組の真の実力は証明される」
「つまり、オレたちに勝てって言ってんだよな! やってやるぜ!」
「タヌタヌ先生、あたしとヴァナベルとヌメリン、リーフとホム、アルフェの2チームでエントリーするからさ」
ヴァナベルとファラの発言にタヌタヌ先生は大きく頷き、F組の生徒の面々を見回すように眺めた。
「平均値93と92なら、一次選考突破は固いだろう。本戦では、お前たち同士で戦うこともあるだろうが、想定済みだな?」
ああ、確かにトーナメント戦と言いながら、僕たち同士をぶつける可能性もあるわけだ。
「それこそ、オレたちの本気を見せてやって、度肝を抜いてやるさ」
タヌタヌ先生の問いかけをヴァナベルが笑い飛ばすと、ホムの顔にも少しだけ笑顔が戻ったような気がした。
武侠宴舞・カナルフォード杯には、生徒会がシード枠で参加することが既に決定している。エステアとイグニスとの再戦を果たし、勝つことが出来れば、ホムの自信を取り戻すことに繋がるはずだ。
翌朝、僕が目を覚ますと既に仕度を調えたホムがベッドの傍に控えていた。
「おはよう、ホム。調子はどうだい?」
「マスターのお陰で、よく眠れました」
誘眠を使ったので、ほとんど強制的に眠らせたに等しいのだが、ホムは感謝してくれているようだ。
「それは良かった」
僕もベッドから起き上がり、ホムの頭を撫でてやる。ホムの身体から少しだけ力が抜けるのがわかった。昨日の敗北を引き摺って、かなり気を張っているのが窺える。
「……気にしないように言っても難しいとは思うけれど、僕にはホムが必要だよ。それだけはわかっていてほしい」
「ありがとうございます」
ホムの顔にほんの一瞬、迷いのようなものが浮かんだのは多分気のせいではないだろうな。生みの親としては、ホムの心の傷をどうにかして癒やしてやらなければ。
けれど、どうすればホムに自信を取り戻してあげられるのだろう。僕が褒めたりするだけでは到底足りないことだけは、わかっているのだけれど。
考えても答えが出ないとわかっていても、心配が勝ってそのことばかり考えてしまう。上の空で朝食を摂り、いつものように教室に向かうと、教室の前にF組の生徒たちが集まっていた。
「リーフ!」
足音かなにかで判別したのか、ヴァナベルが大声で僕を呼ぶ。
「なにかあったのかい?」
早足でヴァナベルの方へ向かうと、彼女は教室の扉の貼り紙を指差した。
「酷ぇんだぜ。見てくれよ、これ!」
貼り紙には、教頭であるサクソス・カールマンの署名が見える。それだけで読む前から良い知らせでないことだけは理解できた。
『今後貴族寮の生徒がいる場合は、一般寮の生徒は中庭の使用を遠慮されたし――』
長々と前置きがついているが、要するにこういうことらしい。
「決闘に勝ったらオレたちの言い分を通すとか言いながら、コレだぜ。やっぱりあいつらは信用ならねぇ」
「……まあ、僕たちもちゃんと主張しなかったといえばそうだけど、まさかこんな露骨な制限がくるとは思っても見なかったな」
やれやれ、昨日のイグニスとリゼルはどうにかしてF組を排除したいのだろうな。昨日のイグニスの発言からも、亜人差別の強い意識を持っているのは明白だし、教頭先生と結託している可能性も高いだろう。
「これはやっぱり、武侠宴舞でこっちの実力を見せつけるしかねぇよなぁ!」
ヴァナベルが怒りに任せて足を踏み鳴らしながら、貼り紙を睨めつけている。この学校の評価すべきは実力主義が残されているという点であり、ヴァナベルのその意見には完全に同意だ。
「けど、機兵適性値の成績順だとオレは出られねぇ。リーフ、オレと代わってくれないか!?」
「僕と……?」
ヴァナベルの突然の申し出には驚いた。順当に行けば、ホムとファラ、僕で三人一組になるはずだが、ホムとファラ、ヴァナベルという組み合わせは、戦闘センスを考えれば悪くない選択肢に思えた。
「僕は――」
「……わたくしは、嫌です」
僕の返事を聞きたくないと言わんばかりの表情で、ホムがきつく唇を噛んでいる。
「悪ぃ。お前のマスターのこと、馬鹿にしてたのは、さすがに許してくれねぇよな」
「いえ、そうではありません。わたくしが戦うのは、マスターのためだからです」
そんなことを考えなくても良いと自分で言っておきながら、ホムのその強い想いに胸を打たれた。ああ、戦わなくていいとホムを戦いから遠ざけようとするのは、もしかすると間違っているのかもしれないな。
「……思うんだけど、ヴァナベル。君とファラ、ヌメリンで組むのはどうだろう?」
「はぁ!? 適性値100のホムはどうするんだよ!?」
僕の提案にヴァナベルが眉を吊り上げる。
「ホムは僕と組む。それから――」
「ワタシも一緒だよ、ホムちゃん」
僕の意向を汲み取ったアルフェが微笑んで同意を示してくれる。機兵適性値の値は81と武侠宴舞の参加申請にはギリギリではあるが、アルフェには魔法という武器がある。
通常の機兵では魔法の発動が不可能だが、この際なので僕がカスタマイズすることにしよう。共に戦ってくれるアルフェには、苦手とすることを強いるのではなく、強みを活かしてほしいし、僕にはそれを可能にする術がある。
「「リリルルは、観戦を楽しむとしよう」」
「にゃはっ。リリルルは三人で戦うより、二人一組の方が強そうだしな!」
「じゃあ、オレたちとリーフたちの2チームで申請しようぜ。数値だけで言えば、審査は通るだろうしな」
機兵適性値の高いリリルルが辞退の意向を示したことで、F組からは2チームの参加申請を行うことが決まった。
「……さて、武侠宴舞の参加申請の相談もいいが、昨日の騒ぎについて話を聞かせてもらうぞ」
いつの間にか背後に立っていたタヌタヌ先生が、手を叩いて僕たちを教室に促す。
「そっちはアルフェが投影魔法で記録してくれてるから、後で見てくれよ。それより、模擬戦でA組に勝ったのに、それで差別されんのは納得行かねぇよ」
ヴァナベルが率直に不満を口にして腕を組む。タヌタヌ先生は、苦笑を浮かべながら溜息を吐き、僕たち全員が着席するのを待ってから口を開いた。
「この学園は実力主義だ。クラス対抗模擬戦のみならず、全校生徒のなかでもとりわけ優秀な生徒が参加する武侠宴舞・カナルフォード杯……ここでそれ相応の成績をおさめれば、F組の真の実力は証明される」
「つまり、オレたちに勝てって言ってんだよな! やってやるぜ!」
「タヌタヌ先生、あたしとヴァナベルとヌメリン、リーフとホム、アルフェの2チームでエントリーするからさ」
ヴァナベルとファラの発言にタヌタヌ先生は大きく頷き、F組の生徒の面々を見回すように眺めた。
「平均値93と92なら、一次選考突破は固いだろう。本戦では、お前たち同士で戦うこともあるだろうが、想定済みだな?」
ああ、確かにトーナメント戦と言いながら、僕たち同士をぶつける可能性もあるわけだ。
「それこそ、オレたちの本気を見せてやって、度肝を抜いてやるさ」
タヌタヌ先生の問いかけをヴァナベルが笑い飛ばすと、ホムの顔にも少しだけ笑顔が戻ったような気がした。
武侠宴舞・カナルフォード杯には、生徒会がシード枠で参加することが既に決定している。エステアとイグニスとの再戦を果たし、勝つことが出来れば、ホムの自信を取り戻すことに繋がるはずだ。
0
お気に入りに追加
794
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
夫に離婚を切り出したら、物語の主人公の継母になりました
魚谷
恋愛
「ギュスターブ様、離婚しましょう!」
8歳の頃に、15歳の夫、伯爵のギュスターブの元に嫁いだ、侯爵家出身のフリーデ。
その結婚生活は悲惨なもの。一度も寝室を同じくしたことがなく、戦争狂と言われる夫は夫婦生活を持とうとせず、戦場を渡り歩いてばかり。
堪忍袋の緒が切れたフリーデはついに離婚を切り出すも、夫は金髪碧眼の美しい少年、ユーリを紹介する。
理解が追いつかず、卒倒するフリーデ。
その瞬間、自分が生きるこの世界が、前世大好きだった『凍月の刃』という物語の世界だということを思い出す。
紹介された少年は隠し子ではなく、物語の主人公。
夫のことはどうでもいいが、ユーリが歩むことになる茨の道を考えれば、見捨てることなんてできない。
フリーデはユーリが成人するまでは彼を育てるために婚姻を継続するが、成人したあかつきには離婚を認めるよう迫り、認めさせることに成功する。
ユーリの悲劇的な未来を、原作知識回避しつつ、離婚後の明るい未来のため、フリーデは邁進する。
何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる