上 下
157 / 396
第三章 暴風のコロッセオ

第157話 ファラとホムの適性

しおりを挟む
 機体の準備が調ったので、予定どおり測定が開始された。

 機兵適性値の測定は、機兵を使った簡単な動作を通じて総合的に測定される。まずは、膝を抱えるようにして駐機している機兵に乗り込み、機兵を立たせた後、指定されたエリアを一周し、タヌタヌ先生に倣い、格闘技の簡単な型を模倣した後、機兵を駐機させて終了だ。素早さは加点となるので、機兵を走らせたり、タヌタヌ先生の格闘技の型に素早く反応することで、適性値の上限を引き上げることが可能になる。

「よし、はじめるぞ。適性値80越えがどれだけ出るか、わしも楽しみだ」

 機兵適性値は100が上限値となっており、適性値が80を越える生徒は、武侠宴舞ゼルステラ・カナルフォード杯への参加申請が可能となる。参加申請の後、第二審査が行われるため、本戦へ進めるのは、三人一組を1チームとした合計15チームのみだ。

 早くに測定を始めたA組は、もう半分以上が測定を終えたらしく、自分たちの適性値を喜んだり嘆いたりしている姿が目立つ。

「軍事科の生徒でしょうか……」
「そうだろうね。授業内容を考えると、成績の序列が出来るようなものだから」

 軍事科において、機兵適性値が高いことはかなり有利に働くが、タヌタヌ先生が言っている80という値は、中央値のかなり上の値だ。80を目標にしている大抵の生徒は、そこに到達できないことも多い。A組の悲観的な様子の生徒たちは、おそらく80に及ばなかったのだろうな。

 そうでなくても、武侠宴舞ゼルステラ・カナルフォード杯で結果を残した生徒は、大学部への推薦の他、帝国軍への登用も行われるため、軍事科でなくともそこを目標としている生徒は多いはずだ。

 セント・サライアスとは異なるが、このカナルフォード学園も実力主義であることには変わりないので、生徒会は成績優秀者で構成されている。当然機兵適性値も上位のため、武侠宴舞ゼルステラ・カナルフォード杯において、生徒会にはシード権が与えられているほどだ。

 それを考えると、ホムはきっと武侠宴舞ゼルステラ・カナルフォード杯の参加申請権を得られる成績だろうな。僕がそのように造ったわけだし。

「……ホムは、武侠宴舞ゼルステラに出たいかい?」
「その方が、マスターのお役に立てますので」

 もうすぐ僕たちの番だ。心づもりを聞いておきたくて確認すると、ホムは笑顔で即答してくれた。

「それを聞いて安心したよ」

 問題は、このF組で同じくらい適性値の高い生徒が出てくるかどうかだな。僕もアーケシウスで測定するのでそれなりの適性値になるだろうけれど、戦うとなるとアーケシウスをもっと改造する必要がありそうだ。

 この先のことを考えながらレギオンを見ると、ちょうどファラが指定エリアを走っているところだった。ほとんどの生徒が駐機姿勢の機兵を立たせることすら出来ない中、機兵を歩ませたりするだけでもかなり注目されているのに、軽々と走らせているのには驚かされた。

 しかも、映像盤に投影されているファラは、かなり落ち着いている様子だ。父親の愛機を受け継いでいて、機兵に慣れているという話だったが、かなり適性がありそうだ。

 ファラはそのままタヌタヌ先生の格闘技の型を難なく模倣し、滑らかな動きで機体に駐機姿勢を取らせた。

「マジか、すげぇ!!」

 測定値が出たのか、クラス委員長として測定をサポートしていたヴァナベルの大声が聞こえてくる。

「ファラ殿、98! 98でござるよ~!」

 興奮した様子でアイザックが測定値を叫ぶと、ざわめきは一気に広がり、他のクラスの生徒たちが集まって来た。

「にゃはっ、100じゃなかったか~」

 ファラが照れたように笑いながら、操縦槽から移動を始める。その発言からもかなりの自信があったことが窺えた。

「次、リーフとホム」

 ああ、僕の場合はアーケシウスだから同時に測定出来るようだな。

「行って参ります、マスター」
「普段どおりでいいからね、ホム」

 ホムを見送り、久しぶりのアーケシウスに乗り込むと、外のざわめきが少し遠くなったが、ほどなくして爆発的な歓喜の声が響き渡った。

 やれやれ、クラスのこの喜び様を考えるとホムはきっと適性値100を出しそうだな。

「さあ、僕たちも頑張ろうか、アーケシウス」

 話しかけながら起動すると、アーケシウスは僕の手足のように動いてくれた。

しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー
ファンタジー
転生した主人公は、平民でありながらダンジョンを作る力を持って生まれ、その力を持った者の定めとなる貴族入りが確定します。 ですが主人公は、普通の暮らしを目指し目立たない様振る舞いますが、ダンジョンを作る事しか出来ない能力な為、奮闘してしまいます。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

対人恐怖症は異世界でも下を向きがち

こう7
ファンタジー
円堂 康太(えんどう こうた)は、小学生時代のトラウマから対人恐怖症に陥っていた。学校にほとんど行かず、最大移動距離は200m先のコンビニ。 そんな彼は、とある事故をきっかけに神様と出会う。 そして、過保護な神様は異世界フィルロードで生きてもらうために多くの力を与える。 人と極力関わりたくない彼を、老若男女のフラグさん達がじわじわと近づいてくる。 容赦なく迫ってくるフラグさん。 康太は回避するのか、それとも受け入れて前へと進むのか。 なるべく間隔を空けず更新しようと思います! よかったら、読んでください

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

処理中です...