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第三章 暴風のコロッセオ
第124話 授業開始
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初日は入学式とホームルームだけで終わり、翌日からは本格的な授業が始まった。
午前中の一限目と二限目はそれぞれ軍事訓練と魔法学で、午後の三、四、五限目は基礎教養の座学という時間割になっている。
軍事訓練の担当は、担任でもあるタヌタヌ先生によるもので、支給された体操服に着替えてグラウンドに集合することになった。
体操服のサイズがあるか不安だったが、小人族サイズが割り当てられているようだ。僕もホムも丁度良いサイズが用意されていた。
「マスター」
「ん?」
グラウンドに出て視線を感じたように思ったが、ロメオがこちらを見ていたようだ。ホムが警戒心を露わにしたが、気にするほどでもない。
「多分、僕のことを気にしているんだろう。とある事情としか言わなかったからね」
ロメオは小人族だが、人間でありながら僕は彼よりも小柄だ。小人族であるロメオはそれなりの苦労をしているだろうし、僕のことを気にかけてくれているのだろう。
「病気のこと、言わなくていいの?」
「珍しい症例だし、病名を言ったところでわからないだろうからね。それに、病気ってことで変に心配されたくない」
問いかけに首を竦めると、アルフェも納得した様子で頷いた。
「……それもそうだね」
頷きながら、アルフェが僕の身体をぎゅっと抱き締める。
「ワタシもリーフが病気って聞いたとき、リーフがいなくなっちゃうんじゃないかってすっごく心配だったもん」
ああ、急にどうしたのかと思えば、当時のことを思い出させてしまったのか。あの時のアルフェの苦しそうな顔は、今思い出しても胸が痛む。
「その節は迷惑をかけたね、アルフェ」
「ううん。リーフのことで迷惑なんて思ったことないよ」
謝罪の言葉を口にすると、アルフェは即座に首を横に振った。揺れる髪が頬に当たり、少しくすぐったい。
「全部ぜーんぶ、ワタシがリーフが大好きで考えたり思ったりしてることなんだもん」
「そっか」
アルフェからそっと身体を離し、その顔を見上げる。ああ、あんなに小さかった赤ん坊は、もうこんなに大きくなってしまったんだな。
「うん」
僕が全ての記憶を持ったままでいることを知らないアルフェは、嬉しそうに僕の手を取り、指を絡めて握ったり離したりを繰り返している。僕がここにいる、僕と手を繋いでいるという感触を確かめるのが好きなのは、変わらないな。
「……はははっ! ちんちくりんがそうやってると、ママとおててを繋いでるベイビーちゃんみたいだなぁ」
アルフェの行動に頬を緩めていると、からかうような笑い声が背後から浴びせられた。
「…………」
はあ、またヴァナベルか。僕のことを嫌っているようだが、いちいち突っかかってくるのが面倒だな。
「そんなことないもん! ママはリーフの方だもん!」
「マスターは精神的に成熟していらっしゃいます。軽口は慎むべきです」
黙っている僕の代わりにアルフェとホムがヴァナベルに反論する。
「それがママって姿かよ!? ちんちくりんは背だけじゃなくて、なにもかもちんちくりんだな」
ヴァナベルは懲りた様子もなく、これ見よがしに胸を張って大股で去って行った。どうやら胸囲のことをからかわれたようだが、少女のまま成長が止まっているのだから僕にはどうしようもない。
「……胸囲があることは、なんらかの優位性を示すのでしょうか?」
「さあね。僕は興味がないけれど」
あってもなくても僕には関係がない。
「アルフェはどんなリーフも大好きだよ」
「ありがとう、アルフェ」
元々気にしていないつもりでも、アルフェがそう言って抱き締めてくれるだけで心が温まるのは、なぜなんだろうな。
午前中の一限目と二限目はそれぞれ軍事訓練と魔法学で、午後の三、四、五限目は基礎教養の座学という時間割になっている。
軍事訓練の担当は、担任でもあるタヌタヌ先生によるもので、支給された体操服に着替えてグラウンドに集合することになった。
体操服のサイズがあるか不安だったが、小人族サイズが割り当てられているようだ。僕もホムも丁度良いサイズが用意されていた。
「マスター」
「ん?」
グラウンドに出て視線を感じたように思ったが、ロメオがこちらを見ていたようだ。ホムが警戒心を露わにしたが、気にするほどでもない。
「多分、僕のことを気にしているんだろう。とある事情としか言わなかったからね」
ロメオは小人族だが、人間でありながら僕は彼よりも小柄だ。小人族であるロメオはそれなりの苦労をしているだろうし、僕のことを気にかけてくれているのだろう。
「病気のこと、言わなくていいの?」
「珍しい症例だし、病名を言ったところでわからないだろうからね。それに、病気ってことで変に心配されたくない」
問いかけに首を竦めると、アルフェも納得した様子で頷いた。
「……それもそうだね」
頷きながら、アルフェが僕の身体をぎゅっと抱き締める。
「ワタシもリーフが病気って聞いたとき、リーフがいなくなっちゃうんじゃないかってすっごく心配だったもん」
ああ、急にどうしたのかと思えば、当時のことを思い出させてしまったのか。あの時のアルフェの苦しそうな顔は、今思い出しても胸が痛む。
「その節は迷惑をかけたね、アルフェ」
「ううん。リーフのことで迷惑なんて思ったことないよ」
謝罪の言葉を口にすると、アルフェは即座に首を横に振った。揺れる髪が頬に当たり、少しくすぐったい。
「全部ぜーんぶ、ワタシがリーフが大好きで考えたり思ったりしてることなんだもん」
「そっか」
アルフェからそっと身体を離し、その顔を見上げる。ああ、あんなに小さかった赤ん坊は、もうこんなに大きくなってしまったんだな。
「うん」
僕が全ての記憶を持ったままでいることを知らないアルフェは、嬉しそうに僕の手を取り、指を絡めて握ったり離したりを繰り返している。僕がここにいる、僕と手を繋いでいるという感触を確かめるのが好きなのは、変わらないな。
「……はははっ! ちんちくりんがそうやってると、ママとおててを繋いでるベイビーちゃんみたいだなぁ」
アルフェの行動に頬を緩めていると、からかうような笑い声が背後から浴びせられた。
「…………」
はあ、またヴァナベルか。僕のことを嫌っているようだが、いちいち突っかかってくるのが面倒だな。
「そんなことないもん! ママはリーフの方だもん!」
「マスターは精神的に成熟していらっしゃいます。軽口は慎むべきです」
黙っている僕の代わりにアルフェとホムがヴァナベルに反論する。
「それがママって姿かよ!? ちんちくりんは背だけじゃなくて、なにもかもちんちくりんだな」
ヴァナベルは懲りた様子もなく、これ見よがしに胸を張って大股で去って行った。どうやら胸囲のことをからかわれたようだが、少女のまま成長が止まっているのだから僕にはどうしようもない。
「……胸囲があることは、なんらかの優位性を示すのでしょうか?」
「さあね。僕は興味がないけれど」
あってもなくても僕には関係がない。
「アルフェはどんなリーフも大好きだよ」
「ありがとう、アルフェ」
元々気にしていないつもりでも、アルフェがそう言って抱き締めてくれるだけで心が温まるのは、なぜなんだろうな。
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