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第一章 輪廻のアルケミスト
第35話 嫌がらせの犯人
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アナイス先生のお説教の後、中断されていた魔導工学の授業が再開された。
再開されたといっても残り時間が少なかったので、前回の復習ということで、クリエイト・フェアリーの自習課題が出されただけだった。
僕は予定通り適当なスライムを作り、アナイス先生の魔法学の授業からヒントを得て、スライムに変形出来る機能を組み込んでおいた。
変形といっても、無難に拳の形にして、大きさも適当に書き加える。スライムは変形したり、伸びて相手を包み込んだりして攻撃することもあるわけだし、そういう行動様式が入っているのは自然だろう。なかなか子供らしい発想のコツがわかってきたように思う。
アルフェはというと、僕がプレゼントした術式基盤を白紙の術式基盤にせっせと模写し続けている。なくなったときのための予備、ということらしいが、アナイス先生のあの忠告を受けてなお、同じ嫌がらせが続くようなら先が思いやられそうだ。
とはいえ、アナイス先生もリオネル先生も犯人を捜し出そうとはしなかったし、アルフェも僕も犯人捜しに時間を費やす予定はない。
ただ、誰にも邪魔されずに平穏に過ごすことができれば、たった一回の嫌がらせには目を瞑るつもりだった――のだが……。
◇◇◇
「おい、アルフェ、リーフ!」
授業が終わり、リオネル先生が退室すると同時に、体格の良い男の子が僕たちのことを名指しで呼んだ。アルフェのことを魔族女と侮辱したヤツだということは、僕にでもすぐにわかった。
「先生に告げ口したら、どうなるかわかってるよな?」
肩を高く立てて胸を張り、この学年にしては体格の良い身体を精一杯大きく見せながら、男の子が近づいてくる。
頭に血でも上ったのか、さては自分がなにをしているかわかっていないようだな。
「……驚いた。自分が犯人だとわざわざ教えに来たのか?」
「う……うるさい! 邪魔するなら、お前も同じ目にあわせてやるからな!」
一応忠告してみたのだが、全く話が通じない。これには呆れた。
「やれやれ。論理が破綻しているぞ。まるで子供だな」
「お前も子供だろうが!」
僕の呟きに、取り巻きの男の子が声を上げる。「そうだそうだ!」と野次が飛んだ。
「俺たちの方が優秀なんだ。なのに、どうして途中から来たお前らが、特待生なんかになってるんだよ!」
「能力の問題だと思うけれど?」
何のために入学試験とクラス分けのテストを受けたのか全然わかっていないのか? それとも、そういうものとは別の評価精度でもあるのだろうか。
「グーテンブルク家の長男が、こんな庶民に劣るはずがないんだ! お前らがズルしてんのは、わかってんだぞ」
「……家柄で知能が決まるのだとすれば、苦労はしないな」
おっと、思ったことがそのまま口を突いて出てしまった。今のは子供らしくなかったな。まあ、こうして自分が犯人だと名乗り出るような連中なら、三歩歩けば忘れるか。
「そっ、それなら、どっちが優秀か決闘で決めてやる!」
「決闘?」
話が飛躍したが、この年代の男児らしい発想はこういうところなのだろうな。だが、この体格差は面倒だし、万が一怪我でもしようものなら、両親になんと言い訳をしたものか……。
「フェアリーバトルだよ。そんなことも知らねぇのか?」
ああ、なんだ。子供の遊びか。
それなら実体があるわけじゃないし、お互いの身体に危害が加わる心配もないな。面倒だし、付き合ってやるか。手加減する保証はできないけれど。
「……リーフぅ……」
ずっと黙っていたアルフェが、不安げな声を出して僕の腕に縋りつく。
「僕なら平気だよ、アルフェ。それより、こっちが勝ったらアルフェに謝って、二度とこんな真似はしないって誓える?」
「いいぜ。けど、俺らが勝ったら、お前たちは学校から出て行けよな」
要望が全く釣り合っていないが、まあ、いいだろう。
「そんな……」
「いいよ。じゃあ、やろうか」
僕を相手に選んだことを、少しは後悔してもらわないとな。
「で、出て行くんだぞ、学校から!?」
「構わないよ。負けなければいいだけのことだから」
再開されたといっても残り時間が少なかったので、前回の復習ということで、クリエイト・フェアリーの自習課題が出されただけだった。
僕は予定通り適当なスライムを作り、アナイス先生の魔法学の授業からヒントを得て、スライムに変形出来る機能を組み込んでおいた。
変形といっても、無難に拳の形にして、大きさも適当に書き加える。スライムは変形したり、伸びて相手を包み込んだりして攻撃することもあるわけだし、そういう行動様式が入っているのは自然だろう。なかなか子供らしい発想のコツがわかってきたように思う。
アルフェはというと、僕がプレゼントした術式基盤を白紙の術式基盤にせっせと模写し続けている。なくなったときのための予備、ということらしいが、アナイス先生のあの忠告を受けてなお、同じ嫌がらせが続くようなら先が思いやられそうだ。
とはいえ、アナイス先生もリオネル先生も犯人を捜し出そうとはしなかったし、アルフェも僕も犯人捜しに時間を費やす予定はない。
ただ、誰にも邪魔されずに平穏に過ごすことができれば、たった一回の嫌がらせには目を瞑るつもりだった――のだが……。
◇◇◇
「おい、アルフェ、リーフ!」
授業が終わり、リオネル先生が退室すると同時に、体格の良い男の子が僕たちのことを名指しで呼んだ。アルフェのことを魔族女と侮辱したヤツだということは、僕にでもすぐにわかった。
「先生に告げ口したら、どうなるかわかってるよな?」
肩を高く立てて胸を張り、この学年にしては体格の良い身体を精一杯大きく見せながら、男の子が近づいてくる。
頭に血でも上ったのか、さては自分がなにをしているかわかっていないようだな。
「……驚いた。自分が犯人だとわざわざ教えに来たのか?」
「う……うるさい! 邪魔するなら、お前も同じ目にあわせてやるからな!」
一応忠告してみたのだが、全く話が通じない。これには呆れた。
「やれやれ。論理が破綻しているぞ。まるで子供だな」
「お前も子供だろうが!」
僕の呟きに、取り巻きの男の子が声を上げる。「そうだそうだ!」と野次が飛んだ。
「俺たちの方が優秀なんだ。なのに、どうして途中から来たお前らが、特待生なんかになってるんだよ!」
「能力の問題だと思うけれど?」
何のために入学試験とクラス分けのテストを受けたのか全然わかっていないのか? それとも、そういうものとは別の評価精度でもあるのだろうか。
「グーテンブルク家の長男が、こんな庶民に劣るはずがないんだ! お前らがズルしてんのは、わかってんだぞ」
「……家柄で知能が決まるのだとすれば、苦労はしないな」
おっと、思ったことがそのまま口を突いて出てしまった。今のは子供らしくなかったな。まあ、こうして自分が犯人だと名乗り出るような連中なら、三歩歩けば忘れるか。
「そっ、それなら、どっちが優秀か決闘で決めてやる!」
「決闘?」
話が飛躍したが、この年代の男児らしい発想はこういうところなのだろうな。だが、この体格差は面倒だし、万が一怪我でもしようものなら、両親になんと言い訳をしたものか……。
「フェアリーバトルだよ。そんなことも知らねぇのか?」
ああ、なんだ。子供の遊びか。
それなら実体があるわけじゃないし、お互いの身体に危害が加わる心配もないな。面倒だし、付き合ってやるか。手加減する保証はできないけれど。
「……リーフぅ……」
ずっと黙っていたアルフェが、不安げな声を出して僕の腕に縋りつく。
「僕なら平気だよ、アルフェ。それより、こっちが勝ったらアルフェに謝って、二度とこんな真似はしないって誓える?」
「いいぜ。けど、俺らが勝ったら、お前たちは学校から出て行けよな」
要望が全く釣り合っていないが、まあ、いいだろう。
「そんな……」
「いいよ。じゃあ、やろうか」
僕を相手に選んだことを、少しは後悔してもらわないとな。
「で、出て行くんだぞ、学校から!?」
「構わないよ。負けなければいいだけのことだから」
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