大嫌いだった同期

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第四話 流される②

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バクバクと大音量の心音に加え、今度は
脳内がグラグラと揺れる。


瀧田は、こんな顔をする男だっただろうか。


穏やかな微笑みに、心配そうに抑えた柔らかな声音。


なんなら、その辺のTikTokerにも負けないくらい、優しいそうなイケてる顔をしているじゃないか。

頼むから、そんな優しい目で私を見ないで欲しい……これ以上、今までにないことをされてしまったら、私は………


「今日は、やけに素直だな。やっぱり、本当に体調悪いでしょ?」



私に手を伸ばしては来ないものの、私の目をじっと覗き込んでくるから、暴れていた心臓に拍車がかかる。



や、……やめて………
そんな目で見るなって……

私は勉強に仕事、ただそれだけを生き甲斐に今までの人生を送っている。
そんな私にこのTikTokerにいそう系男子は向いていない。

異性への偏差値が違うのだ。私はゼロだけど…



「ん?」



心の声が聞こえたのか、瀧田が僅かに疑
問を浮かべた表情をする。
それから、閃いたというように、すくっと立ち上がった。
いつもみたいに逆らうような、やり返すような態度をとることなど微塵も思いつかずに、その一連の動作を、私はまるで従順な飼い犬のようにただ目で追っていた。



立ち上がった瀧田は、やっぱり私を見おろしていて。普段なら、イラッとせずにはいられないはずなのに、どうしてか瀧田を見たまま目を逸らせず、私の心臓はおかしなリズムを刻み始める。



「もしかして朝飯食ってないな!?腹減ってんだろ!」



そう言ったと思ったら、テーブルに置かれたままの座っている私の手を握り、勢いをつけ引っ張り上げた。


まるで軽い人形でもあしらうように、瀧田は私の体をふわりと持ち上げる。


「メシ、著ってやるよ。なんか栄養のあるもんでも食いに行こうぜ。まー、取り敢えず、スタミナだな。豚肉とかどうだ?あ、スタミナ丼もいいな!ニンニクも入ってるし、元気になりそうじゃん!やっぱ朝はガッツリだよなぁ~♪」



一人ペラペラと楽しそうに話し続ける瀧田に手を引かれ、促されるままに休憩室から引きずり出された私は、やって来たエレベーターに乗り込んだ。

エレベーターの中には、誰一人おらず。
社内は、はやく来ていた瀧田と私だけみたいだった。

ていうか、待ってよ。スタミナ丼て、な
に……

そんなの食べたら、に、臭いが…


口、臭くなるじゃん!?

これ以上瀧田の前で私の女子っぽさがなくなっていくなんて嫌だ!!!


瀧田には嫌われたくないのに…








そう心の中で叫んだ私にまた心の中で叫んだ。


えっっ??ん??



私って瀧田の事が好きなのぉぉ!!??



多分人生初だった。

ここまで盛大に心で叫んだのは。



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