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現在編4
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あれから、弟は僕の鎖を外し、室内での移動の自由を許してくれた。
弟が学校に行っている間に直接の見張りがつくことはなかったけれど、天井や壁にいくつもの監視カメラが設置されていた。
もしも僕が手首を切ったらその瞬間に誰かが駆け込んでくるのだろう。
首を吊ろうにもそれこそ死ぬ前に止められてしまいそうだ。
窓から外を見る限り部屋は高層階にある。ここから飛び降りれば即死だろうけど、鍵はビクともしなかった。
椅子をぶつけて窓を割ればいいかもしれない。
でも、弟のことだから、僕の行動なんてお見通しで、簡単に割れない窓の可能性もある。そして刃物やロープにできそうな物もどこにも見当たらなかった。
死のうとして失敗した時が怖いから、慎重にならなければ。
僕は一人で部屋にいる間、死ぬ計画を立てながら、温泉旅行のことを考えた。
ママは僕のことを覚えていない。
だから、家族として旅行に参加できない。
他の客として接触すればいいと、弟は簡単に言っていた。
高宮奏はどうするんだと聞けば、許可は得ていると答えた。
信じられなかったけれど、深く考えないことにした。
ママに会えたら、もう関わることはないのだから。
「お兄ちゃん、母さんに会えたら、次は何したい?」
「……会えるだけで、十分だよ」
「嘘でしょ。一度会ったら、もう一度ってなって、次も、その次も、もっと、もっと近づきたい、離れたくないってなるはずだよ。俺の前では嘘をついたり、我慢したりしなくていい。僕は、お兄ちゃんが願うなら、なんでも叶えてあげたいって思っているんだよ」
「次はもっと最低なことを求められると考えたら怖くてお願いなんてできるわけがない」
「昨日のあれは、ちょっと事情が違うんだ。反省は、してる。でもさ、仕方ないよ。一緒にお風呂に入って、平気でいられるわけないじゃん。これでも結構我慢してるんだよ。ほんとは、もっと、ずっと、触れていたいんだから」
「やっぱお前、おかしいよ。兄に向ける感情じゃない」
「お兄ちゃんだって、母さんに普通以上の感情を向けてるんじゃないの?」
「一緒にするな。ママは、特別なんだ。ママだけが、特別なんだよ」
「そんなふうにさ、俺がお兄ちゃんの特別になるのは、無理なの?」
「無理だよ。ありえない」
「最初から決めつけないでよ。母さんの次でいいから、ちゃんと目の前の俺と向き合ってよ。俺がお兄ちゃんの願いを叶えたいのは、本気でお兄ちゃんに好きになってもらいたいからなんだよ。そしてお兄ちゃんを、幸せにしたいからなんだ。次々良い事があれば、幸せでしょ?死にたいなんて、思わないでしょ?」
やっぱり、僕が死のうとしてるのをお見通しか。
好かれたいのだとしたも、ママを利用するなと思う。
「なら言うけど、僕の1番の願いは、お前がいない、お前の父親もいない、ママと僕、二人っきりの昔に戻ることだ。叶えられるなら、ちょっとはお前のことを好きになれるかもね」
「それは、流石に無理だね。でも、お兄ちゃんをもう一度母さんの息子にすることはできるよ」
「……どうやって?」
「俺たち、結婚すればいいんだよ」
弟が学校に行っている間に直接の見張りがつくことはなかったけれど、天井や壁にいくつもの監視カメラが設置されていた。
もしも僕が手首を切ったらその瞬間に誰かが駆け込んでくるのだろう。
首を吊ろうにもそれこそ死ぬ前に止められてしまいそうだ。
窓から外を見る限り部屋は高層階にある。ここから飛び降りれば即死だろうけど、鍵はビクともしなかった。
椅子をぶつけて窓を割ればいいかもしれない。
でも、弟のことだから、僕の行動なんてお見通しで、簡単に割れない窓の可能性もある。そして刃物やロープにできそうな物もどこにも見当たらなかった。
死のうとして失敗した時が怖いから、慎重にならなければ。
僕は一人で部屋にいる間、死ぬ計画を立てながら、温泉旅行のことを考えた。
ママは僕のことを覚えていない。
だから、家族として旅行に参加できない。
他の客として接触すればいいと、弟は簡単に言っていた。
高宮奏はどうするんだと聞けば、許可は得ていると答えた。
信じられなかったけれど、深く考えないことにした。
ママに会えたら、もう関わることはないのだから。
「お兄ちゃん、母さんに会えたら、次は何したい?」
「……会えるだけで、十分だよ」
「嘘でしょ。一度会ったら、もう一度ってなって、次も、その次も、もっと、もっと近づきたい、離れたくないってなるはずだよ。俺の前では嘘をついたり、我慢したりしなくていい。僕は、お兄ちゃんが願うなら、なんでも叶えてあげたいって思っているんだよ」
「次はもっと最低なことを求められると考えたら怖くてお願いなんてできるわけがない」
「昨日のあれは、ちょっと事情が違うんだ。反省は、してる。でもさ、仕方ないよ。一緒にお風呂に入って、平気でいられるわけないじゃん。これでも結構我慢してるんだよ。ほんとは、もっと、ずっと、触れていたいんだから」
「やっぱお前、おかしいよ。兄に向ける感情じゃない」
「お兄ちゃんだって、母さんに普通以上の感情を向けてるんじゃないの?」
「一緒にするな。ママは、特別なんだ。ママだけが、特別なんだよ」
「そんなふうにさ、俺がお兄ちゃんの特別になるのは、無理なの?」
「無理だよ。ありえない」
「最初から決めつけないでよ。母さんの次でいいから、ちゃんと目の前の俺と向き合ってよ。俺がお兄ちゃんの願いを叶えたいのは、本気でお兄ちゃんに好きになってもらいたいからなんだよ。そしてお兄ちゃんを、幸せにしたいからなんだ。次々良い事があれば、幸せでしょ?死にたいなんて、思わないでしょ?」
やっぱり、僕が死のうとしてるのをお見通しか。
好かれたいのだとしたも、ママを利用するなと思う。
「なら言うけど、僕の1番の願いは、お前がいない、お前の父親もいない、ママと僕、二人っきりの昔に戻ることだ。叶えられるなら、ちょっとはお前のことを好きになれるかもね」
「それは、流石に無理だね。でも、お兄ちゃんをもう一度母さんの息子にすることはできるよ」
「……どうやって?」
「俺たち、結婚すればいいんだよ」
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