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       ~ Ⅳ ~
*********

彼が復活して元の生活に戻った
私は先生方のお手伝いを終え、教室へ向かう
すると
血の匂いがした
ぐらつく視界の中必死にその場所に行く
そこには
頭から血を流している主の姿があったのだ
私はぐらつく視界などどうでも良くなる
「主様!」
返事はない
息は確かにある
そして
私の鋭い目線の先には武器を持ちその武器に血を纏っているクラス全員を捉えていた
「そ、其奴が悪いんだよ」
下らない
「そーだよ!俺たちは正当防衛!」
黙れ
「私は悪くないわ!この人達に命令されて」
罪のなすりつけ合いがはじまる
下衆な醜い人間
私は主の怪我を治し、そっと結界を張る
「全員、生きて帰れると思うな」
ビキビキと青筋を立てて
鞭を鳴らす
ザワザワと黒いオーラが浮き出る
『化け物っ』
逃げようと扉や窓に手をかける皆だが一向に開かない扉
「その化け物を怒らした貴方方はとてもとても」
カツンと靴がなる
「哀れで愉快な人達だ」
その教室からは断末魔の叫び
その教室からは助けを呼ぶ叫び
私は鞭を鳴らす
皆はヒクヒクと気絶している
一番血の濡れた武器を持っていた女の髪の毛を掴み上げた
「あぅ!?!や、やめ、って下さい!!!」
「黙れ」
牙を出して睨む
女は震え上がり泣き出す
私は苛つき首に牙を刺そうとしたその瞬間
結界を叩く音がした
「無月!止めるんだい!」
私は口を閉じて女を叩き下ろす
女は醜い音を出して気絶した
「こっちに来たまえ」
主よ
申し訳ございません
この汚れた姿ではそちらにいけない
「来るんだよ」
主よ
私は静かに近寄る
「結界を解くのだ」
「………」
主は黙る私に主は
「解け!」
と怒鳴る
私は静かに彼らの汚れた血に塗れた手を結界に付けて結界を解く
パラパラとパズルのピースの形になって結界はなくなる
主は私と彼らを見て黙った
「………無月」
近付く主から距離を取ろうとするが
「動くな」
そう言われてしまい動けない
そっと主の腕が伸びてくる
そしてその腕は私の身体に回った
「!?」
私は咄嗟に主を離すように暴れる
だが
主は黙り込んだまま私から離れまいとした
「主様、私は汚れております!主様離れて下さいませ!」
「落ち着くんだよ」
その声は
微かに震えている
そして
泣きそうだった
私は大人しくなり、ガクンと膝を折る
「無月」
「っ」
主は私の名前を呟くと優しく頭を撫でた
「よく、耐えた」
そしてそれだけ言うと私の首に手を叩き落とした
私はそれを甘んじて受け、目を閉じる

「さて」
僕は僕にもたれ掛かる無月を抱き上げて彼らを見た
「ちょうど来たところかな」
僕はそちらに向き直る
「ルイルイ~待たせたね~」
禮が飴をガリガリと不機嫌そうに噛み砕きながら笑っていた
そして
僕の腕の中に入る無月を見て目を見開く
「ムッツー………」
「あぁ、十分耐えていたのだがね」
禮は無月の頬を一撫でして彼らを見る
僕は分かった
その目には憎悪の色をしているのを
「ルイルイ~」
彼はギラギラとする目を僕に向けた
「僕は大目に見るよ」
僕は溜息混じりにそう言い放つ
「あは、やった~」
ビキビキと音を立てて獅子の姿になる禮
「ガルル」
禮に怯える彼らの表情はとても滑稽だ
だから言っただろう
無月は
確かに
「獅子の餌にしてくれる」
とね
僕は腕の中で寝ているのに震えて怯えている無月を強く抱き寄せた
僕が君に頼り、甘え、君の思いに気づくことができなかった
君はいつも僕の味方だったね
だから
僕も君の味方だよ
だから今は
「安心して眠っていろ」

俺は獅子の姿で彼らを睨む
彼らは怯えてプルプル震えてる
「君たちさぁ、」
俺を怒らす理由は充分だよね
一つ
俺の親友のルイルイ傷つけた事ー
二つ
俺の愛しい人を傷つけた挙げ句の果てに心まで傷つけた事ー
三つ
二人を見て化け物と言った事ー
四つ
今までの悪行すべてー
五つ
お前らが生きてる事ー
「お前らぁ、生きてる事当たり前と思うなよ?」
ビキビキと青筋を立てて
「お前らはぁ、生かしてもらってんだよ」
にこりと笑い
「あんまり舐めてっと骨一つ残らずこの世界から消すから」
牙を出す
彼らは怯えて何も言わずに気絶した
俺は毛並みを整えて、顔を空へと向ける
「あー、嫌な空」
俺は獅子の姿で彼らの元へと向かった

「………」
暗闇の中で一人
私はいた
目の前に私が蹲って泣いている
「私がいけない」
そう言いながら
「いけないとはどう言う事でしょう?」
私は私にそう問いかける
泣いている私は顔を上げ
「力を使う事」
「確かにそうですね」
でも
その力は
「人を守る為に使うのですよ」
「守る?」
私は私に抱きつき
「主様や皆を守ることに?」
「左様で御座います」
泣いていた私は笑って
「そっか」
そう消えた
段々と子供になる私
そして
赤子になり小さな小瓶に収まる
その小瓶はヒビが入り割れて消えた
それを見つめたまま私は一言呟く
「哀れで愉快な人なのは私でしょうね」

「月ー無ー無月!!」
主の声が頭に響く
私はその方へ手を伸ばす
そして
ゆっくりと目を開くと主が私の手を握っていた
私は暫くして意識を覚醒し起き上がる
血で汚れていた私の身体は綺麗になっていてそして怪我の手当てまでされていた
「保健の先生がしてくれたんだ」
その言葉に私は目を伏せて
「そうですか」
そう言った
主は優しい
その優しさに甘えてしまった
主ならと
情けない
「無月」
「はい」
主の命令とあらばどんな処罰も受けましょう
例え従者で無くなりこの世界に居れなくても
「君を」
「はい」
硬く目を閉じる
ふわりと何かに抱き締められた
「?」
目を開くと主の胸元だった
そして
静かに顔を上げさせられる
「っ!?」
間近に映る主の顔
唇に感じる柔らかな感触
「執事から恋人になって貰うよ」
「え、な?え」
戸惑っていると主は優しい笑みで
「答えはYESかハイしか受け取らない」
「それにこの僕が易々と逃すわけないだろう?」
主は私を見つめる
汚れた私を見つめて
私は顔を伏せて
「私は汚れております………主様の隣には」
「汚れてなど居ない」
主は私の顔を掴む
「僕の隣には君しか似合うわけないだろう」

「君が汚れているなら僕だって汚れている」
主様
「君がそばに隣にいないなら僕はどうすることもできない」
おやめ下さい
それ以上言われたら
「もう一度言うよ」
「君が好きだ、僕と恋人になってくれるね?」
私の目からボロボロと涙が溢れる
あぁ、あんなことを考えていた私が馬鹿でした
「主様、分かっているでしょう?」
私は
「貴方しか」
貴方を
「忠誠を誓っていると」
愛していると
「ふ、流石だ」
私を抱き締める主の力は強くて
愛しい
私はそっと主の背中に腕を回す
「禮」
私がそう呼ぶとグルルと唸りながら禮が現れる
「あ~ぁ振られちゃった~」
悲しそうに笑う禮
「禮、私は貴方も好きです」
私の手が禮の頭に触れる
「!」
禮が顔を上げた
「だから禮は私達の家族になってくれませんか?」
主も頷いた
「家族?俺?がルイルイと無月の家族?」
私と主もまた頷く
禮は理解した瞬間人の姿になり私達に抱き着いた
「俺のママとパパ?」
禮はグリグリと私達に擦り寄る
「僕がパパか、悪くないね」
主は嬉しそうだ
「ふふ、ママですか」
私も嬉しい
実は言っていなかったのですが
私は現在二十八歳です
主は現在二十九歳
禮は現在十九歳
です
なのに学生?
と思われていますが
私達は大人の学校に通っています
特例の特例で数握られた中での学校に通っています
「これから宜しくお願い致します」
禮の頭を撫でる
「これから宜しく頼むよ」
主も禮の頭を撫でる
禮は微笑んで
「うん!」
そう笑った
そして私たちを抱き締めたまま眠った禮を見つめる
「無月」
「はい」
主は私の引き寄せて微笑む
「末永く僕と過ごしてくれ」
「言われなくても過ごしますよ」
どちらからでもなく引き寄せられる口付け
「真っ赤だね」
「な、主様!」
私は困ったように顔を伏せる
主はクスリと笑い
「早く兄弟も作らないとね?」
「っ~~~!?」
にこりと妖艶に微笑む主に私は爆発しそうだった
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