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世界とは悲しいものだ
決められた中での自由
そんな世界に私達姉妹は生まれ落ちた
漆黒と純白の王者として
この世界に君臨した
「姉様!」
愛しい妹は純白の髪に銀の瞳を持つ
「どうしたのだ?」
私は漆黒の髪に金の瞳を持つ
互いに正反対な姉妹になった
けれど私達は互いを尊敬し合い想い合っている
だから問題はない
生まれて幾年喧嘩などしたことはないが言い合いはしたことはある
私を呼びながら走って来た妹、レベッカの頭を撫でた
妹は嬉しそうに目を細め、私に抱き付く
私は妹を受け止めつつクスクスと笑った
「何だ、疲れたのか?」
ゆっくりと妹を抱えたまま椅子に座る
「いえ、違いますわ」
妹は左右に首を振ると静かにポツリポツリと話し出した
私と妹の違い
下らない噂話
それが妹の負担になっているとわかり私は困った様に溜息を吐いた
「レベッカ、良いか?」
顔を上げることなく、妹は頷く
私はそっと妹の頭を撫でて言葉を紡いでいく
「下らない噂話など耳を貸すな」
ピクリと妹の肩が動いた
「お前がいてこそ私がいる様に私がいてこそお前がいるだろう?」
そして顔を上げた妹は元気良く頷いた
「そうですわね!」
その顔はまだ不安ではあるものの安心した様だった
私はそっと妹の額に口付けを落とし、微笑む
「大丈夫だ、お前は良い子だからな」
「そう言う姉様の方が頭いいじゃないですか」
むすっとする妹のコロコロ変わる表情には飽きない
私はクスクスと笑い、妹の差し出された手を握る
「レベスト様!レベッカ様!」
私達の元に走って来る騎士達に私は妹を背後に回して睨む
「何用だ」
低く、いかにも王らしい品格で物を言う
騎士達はビクッと肩を揺らして説明をする
「騎士団長が暴れてしまって」
私は額に手を当て、またかと溜息を吐いた
「止めて下さい!」
「お願いします!!」
妹も妹で呆れている
今回で五回目なのだ
注意しても治らないならいっそのことクビにでもしてしまおうかとも思うがその実力は誇らしく、実に優秀
だからできないのだ
「取り敢えず案内しろ」
歩き出す私の後ろを妹が走って追いかけて来る
「は!!」
騎士達は私たちに気を使いつつも歩き出す
「此方です!」
歩いて数分、何やら騒がしい
「レベッカ」
「分かってますわ」
そっと私は庭に咲いている漆黒の薔薇と純白の薔薇を一本ずつ取る
妹は嬉しそうに純白の薔薇を手に取り、私の元へと来た
「純白の薔薇よ、力を貸して」
「漆黒の薔薇よ、力を貸してくれまいか」
二つの薔薇は答えるように震える
私は妹の方を振り返ると妹は頷いた
今回は薔薇の力を使おう
そう言う意味合いだった
「漆黒の薔薇よ、あの者たちの動きを止めよ」
漆黒の薔薇の蔓が彼らに巻きつく
「純白の薔薇よ、あの者たちの怒りを抑えよ」
純白の薔薇が光出す
二つの薔薇が合わさり、光となり消えた
「で、何をしていたのだ?」
私が微笑みながら騎士団長に聞く
騎士団長はめんどくさそうに私を見る
「あいつらが馬鹿にしたんだよ」
ふいっとそらされた目
「馬鹿に?何をだ?」
私はその目を見つめる
「あんたらをだよ」
騎士団員を睨む彼に私は頷く
「ほぉ」
妹が後から来て
「全く、下らないわ」
純白の髪をなびかせて、妹は言う
「そんなんだから勝てるものも勝てないのですわ」
全くの
「同感だ」
人を馬鹿にしているものが上に立つなど言語道断
誰が許すものか
騎士団員は悔しそうに唇を噛む
「だが、その気持ちを剣に込めよ」
勝てる
そう信じな
私の言葉に騎士団員は目を見開いた
自分達を馬鹿にされたのにも関わらずアドバイスをくれる
そんな人を馬鹿にしたことを後悔した皆
「行くぞ、レベッカ」
妹と肩を並べる
「はい!!」
「あ、そうだ騎士団長」
私はくるりと振り返り微笑んだ
「ありがとうな」
「まぁ、流石ですわね?」
私は妹の言葉に笑いつつも片手を振った
「では」
その言葉とともにその場から妹と消えた
まるでいなかったかの様に
それを目の当たりにしたものたちは
「すごい」
としか言えなかったそうだ
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