縁を結んで切り裂いて

札神 八鬼

文字の大きさ
上 下
14 / 51
本編

第九話 クランチパニック!(カミサマ入学偏)

しおりを挟む
一言で神様と言っても、色んなイメージが出てくる。
怒らせてはいけない相手だとか、
人の願いを叶える慈悲深い存在だとか、
厳格で、威厳のある存在だとか。
人によって神様に対しての印象は変わってくるのだろう。
ちなみに私は神様なんていないとか思ってた派だ。
家庭では暴力を振るわれ、学校では変なものが見える
気味の悪い子として虐められる。
教師に助けを求めようとしても目を逸らされる。
学校ですら私の助けを求める手を振り払う。
例え私がいくら虐められていようが、
家族は心配すらもしてくれない。
そんな環境でも神様を信じられると言えるならば、
会ってその顔を拝んでみたいものだ。
私の話はさておき、バレンタインとやらは近い。
チョコの準備はバッチリだし、
後は真斗くんにこの愛を渡すだけなのだけど……

「今日は転校生を紹介する」

先生が『入ってきなさい』と声をかけると、
三人の男女が教室に入ってきた。
一人目の女性は茶髪のおしとやかな雰囲気で、
どことなくあの人に似てるような……
いや、きっと気のせいだろう。
二人目は金髪の爽やかそうな男性だ。
いかにも王子様って感じで凄くモテそうなのだが……
何故かあの人にはあまり良い印象を持てない。
どこぞの金色キメラを思い出すからだろうか。
三人目は黒髪のクールそうな男性だ。
眠いのか、彼は教室に入る前に軽くあくびをしている。
どことなく虚さんを思い出すな……
まずは一人目の女性が黒板に名前を書いていく。

「皆様初めまして、私は縫川 希美ぬいかわ のぞみと申します
今日から同級生として、宜しくお願いしますね」

物腰も柔かだし、お辞儀も丁寧だったんだけど、
その明治の女学生みたいな服装が気になる……
でも誰も何も言わないしな……私にだけそう見えてるのだろうか。
そして次は二人目の男性が黒板に名前を書く。

「僕は松雪 守まつゆき かみ、宜しく
確かここには僕の妹がいたと思うから、
仲良くしてやってくれると嬉しいな」

松雪の妹と聞いて、皆の視線が私に向けられる。
私は首が取れるんじゃないかってくらいに、
全力で首を横に降る。私こんな人知らない。
松雪くんがニコニコ笑顔で私を見るのに対し、
縫川さんは可哀想なものを見る目で松雪くんを見て、
黒髪の男性は『お前まじか』みたいな顔で松雪くんを見ていた。

「あーー……悪いな、こいつ今情緒不安定なんだ
そいつがあまりにも妹に似てるもんだから混乱したみたいで……」

黒髪の男性は面倒臭いという顔をしながらも口を開く。
男性の一言で先程までざわざわしていた教室が静かになり、
私に向けられた視線もなくなった。
その一方、松雪くんは皆に見えない所で、
黒髪の男性を親の仇のような目で睨み付けていた。

「たくっ、こうなるからやめとけって言ったのに……」

黒髪の男性が何か呟いたが、声が小さくて良く聞き取れなかった。

「断川、最後はあなたの番ですよ」

「分かってるよ、そんなことは」

断川と呼ばれた黒髪の男性は、
縫川さんに呼ばれて面倒そうに黒板に向き合う。
そして黒板に名前を書いていった。

断川 旭たちかわ あさひ……宜しく」

自己紹介も終わり、自由時間になった所で、
突然縫川さんが私に話しかけてきた。

「あなたが松雪 暦さんですね?」

「は、はい、そうですけど……」

「ふふっ、敬語なんていりませんよ
私達、もう同級生ではありませんか」

雰囲気があの人に似てるせいか、
つい反射的に敬語になってしまっていた。
それもそうだ、彼女はあの人とは違う。

「それもそうだね……」

「ということで、私達友達になりましょう」

「……………はい?」

私の聞き間違いだろうか。
何か初対面なのに友達になろうと言われたような……

「そのはいは承諾という意味ですね?
つまりはもう私達は友達ということですね?
バレンタインの友チョコ期待していますよ」

「い、いや、その……」

矢継ぎ早に早口でまくし立てられて混乱する。
おっとりそうに見える外見ではあるが、
どうやらかなり押しが強いらしい。

「何ですか?私と友達になるのは嫌だとでも?」

「いや、そういうわけではないんだけど……」

「なら良いではありませんか
あの畜生だって貰っているのでしょう?
それならあなたに加護を与えてる私が
友チョコを貰えないのはおかしいと思うんですよ
こよみんもそうは思いませんか?」

「こ、こよみん?」

まさか初対面で突然あだ名を付けられるとは思わなかった。
いや、それよりも少し気になることが……

「加護を……与えてる?」

「はい、だって私……カミサマですから」

「……………」

こんな気軽に来て良いのかカミサマ。
そんな簡単に姿晒して良いのかカミサマ。
尊厳はどこに置いてきてしまったの?

「アタエ、突然距離を詰めようとするな
暦がびっくりしてるだろ?」

「いいえ、これは自然に任せてはいけません
バレンタインが始まるまで後僅かなのですよ?
それなら今日のうちに友達になっておかないといけません」

「たかが友チョコの為にようそこまで出来るな……」

「たかがとは聞き捨てなりませんねクワイ
虚さんからチョコを貰ってはしゃいでたのは
どこのどいつでしたか?」

「ばっ!それとこれとは関係ねえだろ!」

今度はクワイも出てきた……
てかあの黒髪の転校生クワイだったのか……

「初めましてクワイさん、虚さんがお世話になってます」

「おお、まあお気に入りだからな
力を貸すのは当然のことだろう?」

何だかこの人はまともそうだ。
この二人なら仲良く出来そうな気がする。

「やあレキ、二人と仲良くお喋りかな?僕も入れてよ」

「お前は神域にでも帰ってろ」

この良く分からん自称お兄ちゃんを除いて。

「馴れ馴れしくレキとか呼ばないでくれません?」

「レキ……お前まさか、反抗……」

「いや普通に嫌いなだけです」

「おお良いぞ良いぞ、もっと言ってやれ」

「嫌いならカミに対してゴミを見るような目で
見つめれば少しは精神も削られるかもしれませんよ」

試しに松雪くんをゴミを見るような目で見つめてみた。

「こ、これが妹の反抗期……
こういう反抗的な目付きもなかなか……」

しかし松雪くんは想像以上に変態だった。
何か興奮してるようで気持ち悪い。

「あいつもうダメだ、早く何とかしないと」

「最早あいつの幼馴染みというだけで嫌になってきましたね」

「二人とも酷くないかな?」

こうして、私の学生生活に個性豊かなカミサマが
入ってきたのであった……
帰ったらアタエさんとクワイさんのチョコ作っておくか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...