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▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath

3-24 Give In〔P2〕

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sideリュウコウ

新美タイカク186cmぼくよりも一回り小さい…けどさっきの引き合いツナヒキでは明らかに力負けをした。
そしてあのシロ君にも匹敵しそうな驚異的な瞬発力バネに反応速度…
そもそもが争い向きではない僕では分が悪い。


「…っ、リュウコウ君」

そんな雰囲気を察してか、動こうとしたシロ君。

「っと行かせないぞ。どちらにしろ2対2のつもりだったんだろお前ら。なら少しだけ見てろよ」

しかし芝木より即座に向けられる右手の長いドライバーが挑発的に揺れ、ボンヤリとした川からの白い光を受けうすい影を作った。


そんな顔しないでよシロ君、これでも僕は歳上だよ?
それに言い出しっぺだ。

「ん~~さっきのは古武術で、構えソレはけけ剣道すかね?」

構えた僕を見てそう言う新美の手に武器は変わらず無し。
なのに刃物前少しも怯まずか。

つまりはコイツの前腕ないしも防刃仕様。
いやでも待て…

さっきシロ君に切り掛かられた時、芝木は身体を退け反らして避けていた。
もし完璧に切れない素材であれば急所は防ごうとする筈。

なら振り抜けば良い。
それに最悪切れずとも、打撃ダメージは伝わる。


「スゥーーーーッフゥーーーーーーーー~~… 」

そうなるとここで一番犯してはならないのは躊躇。
長引けば十中八九負ける。

行くッ

ザザッ
「イヤァァアッ」
ーシュンッーシュンッ
「おうっおうっと、まぁまぁ鋭いっすね~」

余裕の笑み。
あのバネと実戦経験の差から考えれば距離を測っての斬撃じゃ届かないか。
だけどこの数十センチの優位性リーチに慣れる前に決めさせてもらう。

『ザク』ザバッー

砂を蹴り上げて即踏み込み肘を切…『バチィッ‼︎ 』
ー「ゥ~ッ⁉︎ 」

だが目眩しで後退サガると思われた新美は一切怯まず腰を落とし、間合いに入った僕の手を完璧なタイミングで斜め上へと弾いた。

ーマズイ下がれッ
ーズザッーー

後方へ飛んで行く包丁と同じくバックステップ~っ⁉︎

しかし新美はそれよりも早く懐へ入り込むステップイン

『『ドフゥッ‼︎‼︎ 』』
「~ゥぉおゴぉ⁉︎ ォっ… 」

「イイぃ感触ぅぅ」~ググゥ

そして身体が浮き上がりかけるほどの衝撃に堪らず顔が落ち

『ガシィっ‼︎ 』
くゥッ

それを俵を担ぐよう半身でホールドされ

ーマズ~ッ

一気に捻られる首ごと上半身が脱水された洗濯物の様に引っ張られる

動…ーー折られー~~ッー

けどそれに対して下半身は少しも反応ピクリともしてくれな『新美ィィイィィッ‼︎ そこまでだァァっ』

ーースポッ

タっタっトっ
「うえぇぇーーーーーーっ何で何で止めるすかぁ~~。っちゃえばしし、シロさんも引けなくなるのに~~」

何事も無かったかの如く子供の様に不満を撒き散らす新美の背中。

「だからだよアホっ」
「何だよそれ~、しし祝杯出来なくしろとか言ったくせにアホだバカだって~」

それは気紛れに僕の隣を通り過ぎて行った死。


「…ッハァハァハァッ…ハァっハァっハァっ」

寸前、だった。

間違いなく…


死に直面した現実が身体から力を奪い去り、フラつくきそうな姿勢を保とうとした膝がカクリと折れると

ズサっ…
「ハァハァハァッ…ー~っ、ハァハァっ」

ーズキッ√  

ーズキッ√  

肋骨か…くそォっ
ここまで敵わないなんて…

ここで漸く追い着いて来た痛みに背中を叩かれる。


「リュウコウさんっ」

急ぎ駆け寄って来た八参君は、僕が落とした包丁を握っていた。

「ハァっハァっハァっゴメン…っッ、八参君。ハァハァっ、カッコ…付けきれなかったよ」

「…ッ、そんなことより大丈夫なのかよっ」
「あぁ…ッハァっハぁっ、身体は…まぁ一応ね」

返事すら邪魔をするこの落ち着かない呼吸は、疲労より痛みよりもさっき握り潰されかけた心臓イノチの悲鳴。

「ねぇねぇねぇ剣道じゃた、短剣術はやってないっしょ?それにこれは試合スポーツと違うからさ、ああ、あんなに目一杯伸ばし切らずもっとこう… 」
ザザッーシュンシュッ

「と細かく鋭く動かなきゃ。あぁ~~でも最初の投げと目潰しは良かったっすよ二重丸。かか川に落として砂かけるとかイジメっ子みたいだけどブフっ。だからまぁ技術はオマケで二流としても、きき基本的な筋力が弱いから遅いし軽いんすよ。つまり準備不足ヌルアマおバカってやつ?」

ボクサーの様なフットワークを見せ少しだけ息を弾ませた新美は最後、頭の横で指先をクルクルと回した。

「っ…何なんだテメぇ来んじゃねェェっ」

言い返せない僕に代わり怒りを露わにする八参君。

「あぁほいほい」

しかしへの字口の新美は馬鹿にするかのような視線を向けるだけ。

けど仕方がない。
全てが言う通りだ。
それにあの膂力と反射速度スピードは…

ーズキッ√  

ーズキッ√  

敵うイメージが毛ほども湧いて来ない歴然たる差。


「……やっぱかアンタ。あの人と居るからってかか勘違いしてた」
『ドカッ』
ー「っ⁉︎ 」ザザァ

突然蹴り倒された。

「お前玉無しだな?」
「何しやがるテメ『バコッ‼︎ 』がアっ⁉︎ 」

「俺よりこんなに弱いクセに~」

更に八参君も殴り飛ばした影は僕の上に重なると

「殺るっ『ゴチっ‼︎ 」
「気がっ『ゴスっ‼︎ 」

振り抜き握ったままの拳を僕に叩きつける。

「無いっ『ゴっ‼︎ 』
「とかっ『べチっ‼︎ 』
「ならっ『ドコっ‼︎ 』

でもその音と衝撃は頭に響くけど、痛みは余り感じない。

「もう死ね」

「オイゴラ新美ぃィィ、いい加減にしとけよテメェぇえ」

血塗れの拳をピタリ止めたのは、包丁を構え殺気立つ八参君。

「ふふふ八参~~、今のお前のがよよ余程イイ顔してるよコイツより。でも近付いた瞬間こここの忘感者フヌケの目~潰すよ?平和ピースぅ~~つって」

だが僕の頭髪を乱雑に掴み上げる新美は、もう一方の手で二本の指を立てる。

「ザケンなよテメェ、それ以上やればここじゃ命取りになんだよっ」

「へ~ぇ?そうなのぉ~?」

「新美ィーーーっ」

再び飛んで来た芝木の叫び声。

「ブふゅ、ブしゅ~~~~っ、ブヒュ~~~~っ」

口の中いっぱいの塩気とベタつく鼻から下。
そこへ残る指チョキ開いたパーにした新美は、その手を流れ出る僕の鼻血に押し付けながら顔全体に塗り広げる。

「ンもうウルサイなぁ…て殺しちゃダメなんだっけ?ぁ~ぁ、イケメンが台無しだなぁ」

そして戯ける様に言い放つと引き掴んだ頭から手を離し、ゆっくりと立ち上がって僕を見下ろした。

「ねぇ、結局アンタは何がしたかったの?もしかアレ?自分は大して何も出来ないのに誰にも死んで欲しくな~~い的な、世界平和とか願って悦っちゃう系の人?でででも知ってるでしょ?争いは無くなんないってこと。だって神様ですらおお、思い通りにならなきゃ戦争しちゃうんだもん」


" 弱いクセに殺る気がない "

そうだ、僕は間違っていた。

「ブヒュ~~~~っ、ブシュ~~~~っブっ」

打ち据えられた全身に力が入らないまま、口の中でコロコロと転がる違和感を吐き出す。

歯か…

「ハハはっ、ヒドイなぁ… 」

それなりに嗜んで来たつもりだけど、それなりなんてのは所詮こんなもの。


「……ふん」

そして自嘲する僕から興味を失った新美は体の向きを変えると

「あれ、なんかマズい?」

そう言って何故か固まったその瞬間はしるのは

" まもらなくては "

身体の機能ダメージを踏み超える強烈な衝動。
それは使命感オノレか、はたまた借りを返すカレノ為かと疑問を挟む間も無く僕を突き動かし

ーザスッダダタッ

まるで追い風に乗る様一息に身体を起こし駆け出して

『ガシィッ‼︎ 』
~「ちょ⁉︎ 」

新美のハイゴから腕を回し持ち上げる。

ーズキズキズキィッ√

その途端背中にはさっきまでと比べ物にならない激痛が走るけど

ザスっザスっ
「っぅ~ゥグッ…ブヒュっ」

「しつこいし血汚っ」
~『バタバタっ』~

今の僕には至極どうでもいい。


~「マジ殺すよ?投げとか意味ないし」~

「リュウコウさんもうイイってっ」


" アイツの為に殺せますか?人を "

そう。
君が前もってあそこまで直接的な苦言を呈してくれていたのに

ザスっザスっ
「ブフーーー~っ」

僕には相手を殺してでもやり遂げると言う覚悟が足りていなかった。

~「ってそっちかっクッ」~

ザスっザスっザスっ
「ブフゥ~っ」

そのツケを弟分に払わせはしない。

決して。

何故なら僕は

ザスザスザスっダンっ~
「フシュ~っハハハハハ」


君と並んで戦っているんだ。


『『バッシャァンッ‼︎ 』』








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