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▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない
1-35 Expansion→←Atrophy〜 各互間良‼︎
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sideシロ
3人でいた街の南側の森から目標となる留置場へと向かい易い西側の森に回り込む。
二重の外壁の上をボンヤリとした灯りがゆっくりと動き、更に7~800m間隔くらいで設置されている櫓にも人が。
けどその警備は対人でなく対獣への備えらしいから、この闇夜の中の潜入はオレの認識阻害を抜きにしても難しくない。
しかも~
『カシャ』
このリム君に頼んだ軍用ナイトビジョン(単眼第3世代のオートゲート+拡大レンズ付きヘッドギア)の力で視界は真昼の如くハッキリ。
つまり今のオレは特性+環境でほぼ見えないのに敵は丸見えと言う強化状態。
show me the way to you. lead me now where you are ♪ ってね。
「フゥーーーーーーー~~~… 」
さぁてっと、行きますかね~っと。
タっタっタっタっタっタっタっ
一応櫓の見張りに注意しつつ走る。
タっタタっ
『ガシっ、グイっ、ガシっ」
ほっ…ほっ、ほっよっと。
一重目の外壁は高さ4~5m。
石と土を隙間なく積み上げた上に1.5m程の太い木の柵がある造り。
タタタっ
『ガシっ、ガシっグイっ、ザシッ』
よっ、とっ、ほっ…とぉ。
そして二重目もその高さが5~6mになっただけの同じ構造。
壁自体の厚みは2mを超えるけど、真っ平らではないから越えるのは至極容易。
…
…
中も見張りは……居ない…な。
『ザっ、ザっザっザっスタンっ」
ほっ、ほっ、ほい、再潜入成功…っと。
タっタっタっタっタっタっタっタっタっ…
タタタっ
そして適当な建物の影へ。
((ハァハァ、ハァハァ、ハァ… ))
けど街の周囲に掘りなどが掘られて無かったのは助かったな。
今のオレなら見つかる可能性はかなり低いとしても、汚れた水の中は勘弁して欲しい。
((ハァハァハァ、フゥーーー… ))
しっ行くか。
タっタっタっタっタっタっタっタっタっ…
今回は流石にドライスーツなんて用意していなかったからな。
タタっ…タっタっタっタっタ…
((ハァハァ、フゥうん、問題なし))
いや、けど今考えると用意しておくべきだったか?
入った先が海辺だったからもしかしたら水中からしか潜入出来なかった可能性もあったし…
タっタっタっタっタっタっ…
((ハァハァ、ハァハァ、ハァ… ))
となると酸素ボンベも要ったな……っといかんいかん。
街自体初めての一度目とは違い、変な緊張が無いせいで思考する余裕がある。
タタっタっタっタタっタっタっスタ…
((ハァハァ、ハァハァ、スゥーー、フゥーーーーーーー… ))『カシャ』
出来るだけ押し殺した深呼吸をしつつ単眼部分を上げ一旦休憩。
ゴクっゴクっゴクっ
未来を悲観しつつ行動は楽観《だいたん》に。集中集中。
((スゥーーーー…フゥーーーーーー~~… ))
でもナイトビジョンも高かったなぁ。
あんま貯めていない数字が諸々の経費により一気に吹き飛んだことを思い出す。
けど後悔はないなクソカッコイイから。
しかもこれは変装じゃなくガチ装備。
だから余計にアガル。
滾る。
値段に見合ったこの性能でなっ
『カシャッ』
よしっ
タっタタタタっタっタっタっ…
((ハァ、ハァ、ハァ、ハァ… ))
前回の通過点を確認しつつ見る腕時計は、移動の順調さを教えてくれる。
オーケーオーケー。
タっタザ…
「……っ⁉︎ 」と…
遠くに見えた人影を捕捉して身を隠す。
一応…
「…………、…… 」
フゥーー…
よし、行ったな。
ス…タっタタっタっタっタっタっ…
((ハァ、フゥ、ハァ、フゥ、ハァ… ))
たった3人のオレ達が得られたアドバンテージは、確実な先攻を取れると言う一点だけなのだから。
ザっタタっタっタっタっタっタ…
((ハァ、フゥ、ハァ、フゥ、ハァ… ))
だから目的地まではとにかく慎重に…
慎重にと只進む。
……
…
((ハァ、ハァ、ハァ、ハァっ… ))
ゴクゴクっゴクゴクっゴクっ
フゥっ
目的地までは2度目という事も有り、慎重に進んでも予定より15分巻いて着くことが出来た。
「………、…… 」
脇道の陰から大通りを窺う。
やっぱ留置場の周囲は見回りが多い。
それと問題はもう一つ。
高さ3.5~4m無いくらいのあの塀の表面は慣らしてあり、素手では登れないだろう造り。
まぁ人を留置する目的上当然だけど。
ジューーーーー…カサカサっ
まさかこれを使う事になるとは…
何とも言えない気持ちになりつつも、下ろしたリュックから取り出したのは忍具。
カチンッ
縄の付いた先っぽを折り畳み傘みたく広げると、手の平より少し大きな四つ又の鉤爪が現れる。
これが上手く引っ掛かると良いけど…
そんな不安を抱えつつ視線を注ぐのは、来る途中に見つけておいた約1mの木材。
最悪この木(約1m)を立て掛けて登るしかないんだけど…
そうなると侵入の形跡が残るし失敗した時にも中から塀を越えれない。
ふぅーーーー…
作戦では約30分後にミレとヒロ君が南門を襲撃。
それにより敵はミレの捕獲に動き出す。
オレはその混乱に乗じこの塀を越え敷地に侵入し、その先の留置施設まで一気に突入って流れだけど…
未確認の留置施設にぶっつけで行くのはリスクが高過ぎる。
だから出来れば作戦決行時にはここじゃなく、留置場の入口付近に潜み突入タイミングを図りたい。
行くべきか…
ヒロ君ならまぁ "透明イェーイ" で気にせず乗り越えて行けそうだけど、小心者のオレはなぁ…
それにこの特性に関する対人検証はミレ一例のみで過信なんて出来ない。
嗅覚や聴覚に優れた動物の結果も同様だったから、彼女だけが特別という事は考え辛いけど…
でも何かしらの穴が無いとも言えない。
待つべきか…
仮に失敗するとしたらどっちがマシだ?
・
・
・
((はぁーーー~ぁぁ…はは…… ))
失敗したら…か。
細く吐き出す呼吸に染み付くカラカラの笑い。
競技なら大概玄人レベルでいけるけど今回はガチ武器使用の全力戦闘。
しかも相手は専業兵士って無謀な対戦条件。
「…………… 」
ズザッザッダタタタタタタっ…
タっタっタっザッ…ヒュッーー~『ガキッ』
『ググィィっ』
トトッ
『ググィィっ』
トトッ
『ググィィっ』
トトッ
『ググィィっ…ガシっ』スゥ…
塀を越えながら掛かったアンカーを掴み取り…
『『スダンッ‼︎ 』』
一気に飛び降りる。
「…ー~~っ…、……っ、………、…… 」
4m近い高さは足の裏から膝に強い衝撃を返すけど、姿や音を捉えられていないかを確認し耳をすます。
・
・
・
・
・
((ハァハァハァ…っし~))
未だジンジンしている下半身はさて置いて、見つからず侵入出来た安堵とセルフハグ。
…
…
そうやって踏み込んだ敷地は多分サッカーコート半分ほど。
そして身を屈めながら眺める目的の建物は、体育館くらいの大きさをした横長の留置施設。
((~×××))
((~×~××、~×××?))
少し遠くから聞こえる話し声に緊張感は皆無。
「……、……、……、…… 」
…2、3人か。
1人で倒せるか?
いけたとして中に人質が居なかったら?
見つかっていない今ならまだ引き返せる。
今ならな?
((ふぅーーぅーーーー~… ))パキっコキっ
所詮1人でする覚悟なんてこんなもの。
どんなに猛々しくキメたって、いざその時に迫られれば辛いのも痛いのも怖いのも嫌に決まってる。
トン、トン、トン、トン、トン…
オレは握った拳の親指側で額を小突きつつ、もう一度…もう何度でもオレ自身の覚悟で以って言い聞かせる。
ここまで来たんだもう迷うな。
一瞬たりと。
トン、トン、トン、トン、トン…
思い出せ、その躊躇いこそが死を招き寄せる事を。
トン、トン、トン、トン、トン…
考えるのは障害を排除すること。
それのみでいい。
sideヒロ
「…………ふぅ……… 」
街の入り口から少し距離を取った平原の草むらと同化している僕。
ここからは見張りが見えるけど、さっきからずっと彼等に動きはない。
あと5分…か。
僕はシロに渡された腕時計のデジタル表示に目を落とす。
" ヒロ君はミレとし……いや、選択はヒロ君がすることだけどさ、一つだけ忘れないで。オレはヒロ君に生きていて欲しいからここに来たんだってこと "
((スゥゥ~~…ふぅーー~~… ))
僕だって死ぬ気なんかないし死にたくなんてない。
でも抗えない相手による暴力と殺意。
それを容易く喰らってしまう野生の脅威。
((ふぅ~~ぅ、ふぅ~~ぅ))
そうじゃなかった。
僕程度の力じゃ及ばない事の方が遥かに多い。
そしてミレには明確な理由があって僕には…無い。
命を賭ける理由が…
だからもし…
もしもミレを助けられない状況……もしくは助からない状況になったとしたら…
((ふぅ~、ふぅ~~))
勿論精一杯のギリギリまでは手を尽くすけど、ここで心中するつもりは無いから安心してよね。
これが何度も何度も葛藤した結果に、何とか絞り出した自分なりの答え。
シロ…
そっちこそ無理はし過ぎないでよ。
sideミレ
決行5分前、か……
何とかここまで来れたな。
「………………… 」
正直家族を助けると言うのは諦めていた。
もし衛都に辿り着き事態が収束したとしても、人質にとなっている家族は無事に済まないだろうと。
だけどヒロの一言でこうして戻って来ることが出来、そして家族の為に戦い家族の近くで死ねるなら…
そう思っていたけれど…
それじゃダメだ。
私の望みはそうじゃない。
そう。
ヒロとシロが私に希望をくれたんだ。
((フゥーーーーーーーーゥ…… ))
手足の力を抜き全身の脱力をする。
たかだか数日間の事だったけど、苦しくて泣きたくて、辛くて痛くて……
何度挫けそうになったことか。
ギュウゥゥッ
愛剣を握る手に力を込める。
『ギリィィッっ』
この落とし前…きっちりと付けさせてもらう。
3人でいた街の南側の森から目標となる留置場へと向かい易い西側の森に回り込む。
二重の外壁の上をボンヤリとした灯りがゆっくりと動き、更に7~800m間隔くらいで設置されている櫓にも人が。
けどその警備は対人でなく対獣への備えらしいから、この闇夜の中の潜入はオレの認識阻害を抜きにしても難しくない。
しかも~
『カシャ』
このリム君に頼んだ軍用ナイトビジョン(単眼第3世代のオートゲート+拡大レンズ付きヘッドギア)の力で視界は真昼の如くハッキリ。
つまり今のオレは特性+環境でほぼ見えないのに敵は丸見えと言う強化状態。
show me the way to you. lead me now where you are ♪ ってね。
「フゥーーーーーーー~~~… 」
さぁてっと、行きますかね~っと。
タっタっタっタっタっタっタっ
一応櫓の見張りに注意しつつ走る。
タっタタっ
『ガシっ、グイっ、ガシっ」
ほっ…ほっ、ほっよっと。
一重目の外壁は高さ4~5m。
石と土を隙間なく積み上げた上に1.5m程の太い木の柵がある造り。
タタタっ
『ガシっ、ガシっグイっ、ザシッ』
よっ、とっ、ほっ…とぉ。
そして二重目もその高さが5~6mになっただけの同じ構造。
壁自体の厚みは2mを超えるけど、真っ平らではないから越えるのは至極容易。
…
…
中も見張りは……居ない…な。
『ザっ、ザっザっザっスタンっ」
ほっ、ほっ、ほい、再潜入成功…っと。
タっタっタっタっタっタっタっタっタっ…
タタタっ
そして適当な建物の影へ。
((ハァハァ、ハァハァ、ハァ… ))
けど街の周囲に掘りなどが掘られて無かったのは助かったな。
今のオレなら見つかる可能性はかなり低いとしても、汚れた水の中は勘弁して欲しい。
((ハァハァハァ、フゥーーー… ))
しっ行くか。
タっタっタっタっタっタっタっタっタっ…
今回は流石にドライスーツなんて用意していなかったからな。
タタっ…タっタっタっタっタ…
((ハァハァ、フゥうん、問題なし))
いや、けど今考えると用意しておくべきだったか?
入った先が海辺だったからもしかしたら水中からしか潜入出来なかった可能性もあったし…
タっタっタっタっタっタっ…
((ハァハァ、ハァハァ、ハァ… ))
となると酸素ボンベも要ったな……っといかんいかん。
街自体初めての一度目とは違い、変な緊張が無いせいで思考する余裕がある。
タタっタっタっタタっタっタっスタ…
((ハァハァ、ハァハァ、スゥーー、フゥーーーーーーー… ))『カシャ』
出来るだけ押し殺した深呼吸をしつつ単眼部分を上げ一旦休憩。
ゴクっゴクっゴクっ
未来を悲観しつつ行動は楽観《だいたん》に。集中集中。
((スゥーーーー…フゥーーーーーー~~… ))
でもナイトビジョンも高かったなぁ。
あんま貯めていない数字が諸々の経費により一気に吹き飛んだことを思い出す。
けど後悔はないなクソカッコイイから。
しかもこれは変装じゃなくガチ装備。
だから余計にアガル。
滾る。
値段に見合ったこの性能でなっ
『カシャッ』
よしっ
タっタタタタっタっタっタっ…
((ハァ、ハァ、ハァ、ハァ… ))
前回の通過点を確認しつつ見る腕時計は、移動の順調さを教えてくれる。
オーケーオーケー。
タっタザ…
「……っ⁉︎ 」と…
遠くに見えた人影を捕捉して身を隠す。
一応…
「…………、…… 」
フゥーー…
よし、行ったな。
ス…タっタタっタっタっタっタっ…
((ハァ、フゥ、ハァ、フゥ、ハァ… ))
たった3人のオレ達が得られたアドバンテージは、確実な先攻を取れると言う一点だけなのだから。
ザっタタっタっタっタっタっタ…
((ハァ、フゥ、ハァ、フゥ、ハァ… ))
だから目的地まではとにかく慎重に…
慎重にと只進む。
……
…
((ハァ、ハァ、ハァ、ハァっ… ))
ゴクゴクっゴクゴクっゴクっ
フゥっ
目的地までは2度目という事も有り、慎重に進んでも予定より15分巻いて着くことが出来た。
「………、…… 」
脇道の陰から大通りを窺う。
やっぱ留置場の周囲は見回りが多い。
それと問題はもう一つ。
高さ3.5~4m無いくらいのあの塀の表面は慣らしてあり、素手では登れないだろう造り。
まぁ人を留置する目的上当然だけど。
ジューーーーー…カサカサっ
まさかこれを使う事になるとは…
何とも言えない気持ちになりつつも、下ろしたリュックから取り出したのは忍具。
カチンッ
縄の付いた先っぽを折り畳み傘みたく広げると、手の平より少し大きな四つ又の鉤爪が現れる。
これが上手く引っ掛かると良いけど…
そんな不安を抱えつつ視線を注ぐのは、来る途中に見つけておいた約1mの木材。
最悪この木(約1m)を立て掛けて登るしかないんだけど…
そうなると侵入の形跡が残るし失敗した時にも中から塀を越えれない。
ふぅーーーー…
作戦では約30分後にミレとヒロ君が南門を襲撃。
それにより敵はミレの捕獲に動き出す。
オレはその混乱に乗じこの塀を越え敷地に侵入し、その先の留置施設まで一気に突入って流れだけど…
未確認の留置施設にぶっつけで行くのはリスクが高過ぎる。
だから出来れば作戦決行時にはここじゃなく、留置場の入口付近に潜み突入タイミングを図りたい。
行くべきか…
ヒロ君ならまぁ "透明イェーイ" で気にせず乗り越えて行けそうだけど、小心者のオレはなぁ…
それにこの特性に関する対人検証はミレ一例のみで過信なんて出来ない。
嗅覚や聴覚に優れた動物の結果も同様だったから、彼女だけが特別という事は考え辛いけど…
でも何かしらの穴が無いとも言えない。
待つべきか…
仮に失敗するとしたらどっちがマシだ?
・
・
・
((はぁーーー~ぁぁ…はは…… ))
失敗したら…か。
細く吐き出す呼吸に染み付くカラカラの笑い。
競技なら大概玄人レベルでいけるけど今回はガチ武器使用の全力戦闘。
しかも相手は専業兵士って無謀な対戦条件。
「…………… 」
ズザッザッダタタタタタタっ…
タっタっタっザッ…ヒュッーー~『ガキッ』
『ググィィっ』
トトッ
『ググィィっ』
トトッ
『ググィィっ』
トトッ
『ググィィっ…ガシっ』スゥ…
塀を越えながら掛かったアンカーを掴み取り…
『『スダンッ‼︎ 』』
一気に飛び降りる。
「…ー~~っ…、……っ、………、…… 」
4m近い高さは足の裏から膝に強い衝撃を返すけど、姿や音を捉えられていないかを確認し耳をすます。
・
・
・
・
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((ハァハァハァ…っし~))
未だジンジンしている下半身はさて置いて、見つからず侵入出来た安堵とセルフハグ。
…
…
そうやって踏み込んだ敷地は多分サッカーコート半分ほど。
そして身を屈めながら眺める目的の建物は、体育館くらいの大きさをした横長の留置施設。
((~×××))
((~×~××、~×××?))
少し遠くから聞こえる話し声に緊張感は皆無。
「……、……、……、…… 」
…2、3人か。
1人で倒せるか?
いけたとして中に人質が居なかったら?
見つかっていない今ならまだ引き返せる。
今ならな?
((ふぅーーぅーーーー~… ))パキっコキっ
所詮1人でする覚悟なんてこんなもの。
どんなに猛々しくキメたって、いざその時に迫られれば辛いのも痛いのも怖いのも嫌に決まってる。
トン、トン、トン、トン、トン…
オレは握った拳の親指側で額を小突きつつ、もう一度…もう何度でもオレ自身の覚悟で以って言い聞かせる。
ここまで来たんだもう迷うな。
一瞬たりと。
トン、トン、トン、トン、トン…
思い出せ、その躊躇いこそが死を招き寄せる事を。
トン、トン、トン、トン、トン…
考えるのは障害を排除すること。
それのみでいい。
sideヒロ
「…………ふぅ……… 」
街の入り口から少し距離を取った平原の草むらと同化している僕。
ここからは見張りが見えるけど、さっきからずっと彼等に動きはない。
あと5分…か。
僕はシロに渡された腕時計のデジタル表示に目を落とす。
" ヒロ君はミレとし……いや、選択はヒロ君がすることだけどさ、一つだけ忘れないで。オレはヒロ君に生きていて欲しいからここに来たんだってこと "
((スゥゥ~~…ふぅーー~~… ))
僕だって死ぬ気なんかないし死にたくなんてない。
でも抗えない相手による暴力と殺意。
それを容易く喰らってしまう野生の脅威。
((ふぅ~~ぅ、ふぅ~~ぅ))
そうじゃなかった。
僕程度の力じゃ及ばない事の方が遥かに多い。
そしてミレには明確な理由があって僕には…無い。
命を賭ける理由が…
だからもし…
もしもミレを助けられない状況……もしくは助からない状況になったとしたら…
((ふぅ~、ふぅ~~))
勿論精一杯のギリギリまでは手を尽くすけど、ここで心中するつもりは無いから安心してよね。
これが何度も何度も葛藤した結果に、何とか絞り出した自分なりの答え。
シロ…
そっちこそ無理はし過ぎないでよ。
sideミレ
決行5分前、か……
何とかここまで来れたな。
「………………… 」
正直家族を助けると言うのは諦めていた。
もし衛都に辿り着き事態が収束したとしても、人質にとなっている家族は無事に済まないだろうと。
だけどヒロの一言でこうして戻って来ることが出来、そして家族の為に戦い家族の近くで死ねるなら…
そう思っていたけれど…
それじゃダメだ。
私の望みはそうじゃない。
そう。
ヒロとシロが私に希望をくれたんだ。
((フゥーーーーーーーーゥ…… ))
手足の力を抜き全身の脱力をする。
たかだか数日間の事だったけど、苦しくて泣きたくて、辛くて痛くて……
何度挫けそうになったことか。
ギュウゥゥッ
愛剣を握る手に力を込める。
『ギリィィッっ』
この落とし前…きっちりと付けさせてもらう。
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