上 下
45 / 51
六章

恋する娘と男の子 その7

しおりを挟む
みんなで、わらわらと部室へと戻ってくる。
たった今、ミミック滝本たきもとをゴミ捨て場に置いてきた。
ライムストーカー事件の真犯人は彼であったことが発覚し、プリンがどこからともなく取り出したガムテープでミミックを簀巻きにした。
今頃はガタガタと暴れているに違いなかった。
「さて…」
再び部室にて丸尾まるおのほうに皆が向き直った。
「とにかく俺じゃなかったでしょ? 言ったとおりじゃないっすか。俺は無実だって…」
なんだか、若干勝ち誇ったかのような笑みすら見せて丸尾まるおであった。
「堂々と勝利宣言か」
俊美としみが呟くようにして言う。
確かに彼の言うとおり、まだ処分は未決定だ。
ストーカーではなかったが、隠れてこそこそライムの写真を撮っていたというのは事実であり、動かない現実だ。
「ミミックみたいに簀巻きにしちゃう?」
プリンが先ほどミミックに使用したガムテープをちらつかせる。
「ひぃ! それだけはご勘弁を! …っていうか、写真撮ったのは確かに事実ですけど、やましくないですよ、俺…」
「そう言っても、それを決定づけるのはライムだろ?」
宗一の一言に皆がライムに注目した。
きょとんとした表情で、自分を指さして、「えっ、わたし」とライム。
「そう言われても…」
そんな明らかに困惑した様子のライムの前に丸尾まるおは身を乗り出した。
「俺、本気でライムさんのことが好きなだけですから! 迷惑かかりそうなことはなにもしていませんから! この写真が迷惑なら消しますし、もうしませんから! 本当っす! 信じてください!」
そう言い切る辺りの様子と迫力から真剣なのは間違いなさそうではある。
「確かに変な写真はなかったけどな…」
「ですよ! ライムさんの健全な写真を撮って、学校内外のファンクラブの連中と交換したりとか、そういう活動が主ですから!」
先ほども同じような説明を受けた。
もう一度それを丸尾まるおは皆に伝えていた。
確かにそれだけならば、退魔クラブよりはよっぽど健全な活動な気がしないでもない。
少なくとも、俊美としみにそのことを非難されるのは可哀想な気がする宗一である。
「で、どうするの、ライム?」
「うーんどうしましょう?」
妹に突っ込まれ、首を傾けて、困り顔である。
ちょっとだけぶりっ子したようなライムである。
「実害なさそうだし、いいんじゃない? プリンだったら、ちやほやされるの悪い気分じゃないしー」
「でも、盗撮ってのはなんだか気持ち悪いよな」
脳天気なプリンに突っ込みを入れたのは俊美としみである。
つまりはその辺りをどう感じるかが争点のようだ。
「あー…そうか。んじゃ、盗撮じゃなきゃいいんじゃない?」
「そうね。盗撮じゃないんなら…。でも、どうするの?」
ライムがプリンに問いかけた。
「簡単だよ! こそこそ撮るから盗撮になるんでしょ? こそこそ撮るから気持ち悪いんだよね? それなら堂々と撮ればいいって、プリンは思うべなー!」
「おい…まさか…」
「退魔クラブに入ればいいじゃん! ライムといつも一緒だし、そーそー君の舎弟になるなんて嘘吐かなくてもいいし、退魔クラブは部員増えるし」
そのプリンの提案に俊美としみは「おー」と感心したような声を上げた。
「やはり、そうなるんだな…」
なんとなく、それを言い始めたときから予感はあったのだ。
ただ、いくら自分が部外者で無関係者といっても、それで本当にいいのかどうかは疑問であるように感じたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。 ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。 下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。 幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない! 「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」 「兵士の武器の質を向上させる!」 「まだ勝てません!」 「ならば兵士に薬物投与するしか」 「いけません! 他の案を!」 くっ、貴族には制約が多すぎる! 貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ! 「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」 「勝てば正義。死ななきゃ安い」 これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。

処理中です...