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四章

スクールバトル! その6

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神崎忍かんざきしのぶは素行の悪い生徒だった。
こういう生徒はこの学園に多いわけではないし、しのぶはそういう意味では珍しい部類に入ると言ってよい。
他の生徒と目立ったトラブルを起こしたという話は聞かないが、他校の生徒や街を歩いている同世代の若者とはしょっちゅうトラブルを起こしていた。
攻撃的な性格が彼にそういう生き方をさせたのであろう。
彼は一般の生徒に絡んだり、恐喝まがいのことをやったりということはなかった。
ただ、為吉ためきちのような目立つ者は嫌いだったし、それでいて仲間意識の強さが今のこうした行動に繋がっているということだ。
その神崎忍かんざきしのぶはつくづく蹴りが好きなようで、すでに足下がふらついている為吉ためきちに対して容赦なく、それを見舞おうとした。
先ほどは相手の攻撃も避けていた為吉ためきちである。
しかし、さすがに相手の殴る蹴るをもらいすぎた彼は、そのしのぶの蹴りを避けられない。
もろに腹で受け止めてよろけていた。
しのぶが止めとばかりに殴りかかってきたとき、為吉ためきちが放った拳がしのぶの腹部にめり込んだ。
体格的には大柄と言える部類の為吉ためきちの拳である。
やや細身と言って差し支えないしのぶがそれを受けてしまえばどうしようもない。
この必殺のカウンターが決め手となって、しのぶは涎を垂らしながら、その場に崩れ落ちた。
まったくもって立ち上がれない。
ただうめき声を上げるだけである。
そして、為吉ためきちは残りの三人をにらみつけていた。
「ひぃっ!」
情けない悲鳴。
もはや、喧嘩の勝敗は決したと言ってよかった。
ややあっさりと片がついたし、結局プリンは傍らにいるだけだった。
三人はしのぶを置いて逃げていた。
為吉ためきちも彼らの後を追わなかった。
すべてが終わったと悟ったとき、うめいているしのぶに何を言うわけでもなく、ただ、その喧嘩のあった場所に背中を向けて立ち去ろうとして、またよろけた。
為吉ためきちさん!」
プリンがまた慌てて駆け寄る。
そして、手を貸すことを拒否という、先ほどとまったく同じことが繰り返された。
両膝を両の掌ではぱんと叩き、まるで、気合いを入れるかのような行動を取った。
自力で体勢を立て直すと、プリンに向き直る。
「…お前…」
「えっ?」
「なんで、ここにきたんだ…?」
為吉ためきちがそれを問いかけると、プリンは意外そうな表情を見せた。
「それは為吉ためきちさんが連行されるのをみたから!?」
「……するな」
「え、なーに? もう少し大きい声で言ってくれないとプリン聞こえないよ」
「余計なことするな…女が…!」
吐き捨てられるかのように言われた。
プリンは一瞬戸惑いを見せて、それから眉根を寄せた。
「余計なことじゃないよ! プリン強いし、あんなやつらなんて…!」
そこまで言いかけたときである。
不意にプリンは背後に気配を感じた。
振り返ると、そこには宗一そういち丸尾まるおの姿があった。
駆けつけた二人は辺りを目の当たりにして愕然とする。
「ひぃぃぃぃぃぃ、神崎かんざきやられちゃってますよ、相馬そうまさん!」
「プリン、大丈夫なのか?」
「えっ、ああ、うん!」
自分の心配をしてくれたことが嬉しいのか、プリンは明るい表情を見せた。
そんなやりとりの横で為吉ためきちは黙って去ろうとした。
しかし、またもや体勢を崩した。
「おい、大丈夫か!?」
宗一そういちが近づこうとしたときだ。
「…熱があった。体調が良くなかったから苦戦したが、こんなやつら…。風邪をこじらせてなかったら、もっと簡単に…」
「おい、頭から血が出てるぞ! 全然大丈夫じゃないじゃないか!?」
「病院は嫌いだ…! だいっきらいだ!」
ひときわ大きな声で言い放つと事切れた。
為吉ためきちはその場にドッと倒れてしまった。
「ああ、もう病院に連れて行こう! とにかく救急車か、この場合!?」
宗一そういちの言葉を受けて、プリンがスマホを取り出したときである。
「…待って! その方を病院に運んではいけません!」
聞き覚えのある声がした。
宗一そういち、プリン、丸尾まるおが振り向いたその先には、いつのまにか現れたライムが、風になびく長い髪を押さえながら立っていたのだった。
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