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三章
喧嘩上等! その2
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欠伸をしながら登校する宗一。
隣には洋介がおり、つい先ほど登校中に一緒になっていた。
「なんだ? 寝不足か?」
「ああ。昨日、誰かさんと延々と電話で話していたからな」
「そういえばそうだったな!」
そう言って洋介は脳天気な笑いを立てていた。
電話の相手とはこの隣を歩いている洋介である。
パソコンの挙動がおかしいと相談を受け、トラブルの解決まで付き合っていたのだ。
ゆえに普段よりも、二時間は睡眠時間が短くなった。
体中を眠気とだるさがむしばんでいるのは、そういった理由がある。
校門をくぐり校内に入ったときだ。
校舎の入り口に一人の生徒が立ち尽くしていた。
体格の良い男子生徒であり、制服をだらしなく着こなしており、それが彼の雰囲気にはよく似合っている。
「あれ、板東じゃね?」
洋介が小声で耳打ちでもするかのように宗一に伝える。
宗一も、その名前は知っていた。
彼は学園の二年生で、ライムとは違った意味合いで有名人である。
見た感じからして厳つく、強面。
喧嘩が強いらしく、いわゆる問題児であるし、周囲の真面目な生徒たちからは敬遠され、浮いた存在として認識されていた。
まあ、別に絡んでくるやつではない。
腕っ節は強いが、いわゆる「硬派」な感じのする昔すぎる風な不良性とが板東為吉である。傍らを通り過ぎるとき、洋介は最後まで彼を意識していたが、宗一は普通である。
何もしなければ大人しいのだから、特に意識するまでもない。
むしろ、眠気とだるさと戦っていたので、それどころではないというのが実情であるが。
「はぁー…なんか俺、ああいう手合いは苦手だな…」
「お前はなんか後ろめたいことしすぎてんだろ。ああいう手合いに睨まれそうなこととか」
「んなことしてねーけどな-。まあ、そんなことよりあれだあれ」
「ん?」
「ちょっと前に話したことあんだろ? あの今年入った一年のすっっっっごく可愛い子。あれやっぱり可愛いわ。こないだ偶然、見かけたんだけどな。なんか元気あって、凄く可愛いんだ、あの子」
「そんなこと言って歩いているから、睨まれるんだろうが」
心の底からそう思う。
いつかシメられるのではないかと心配になる。
だが、そんな忠告じみたつぶやきなんかはまったく耳に入っていない様子である。
「その時、あの子の取り巻きが何人かいたんだけど、群を抜いて可愛いんだよ。いや、むしろ、取り巻きとの比較がいっそう彼女を引き立たせていた!」
その熱の入った説明に思わず呆れた気持ち混じりのため息が出る。
嘆息というやつだ。
「さっきからそうやって説明しているけど、一年生だろ? 名前はなんて言うんだよ…」
「それが名前誰かから聞いたんだけど…なんて名前だっけな? ははは、忘れちまった」
「そんなに可愛い子だって言うのに忘れるかよ、普通…」
「ああ、女の子の名前はたくさん聞きすぎているからな-。あまりに多すぎて忘れちまうんだ。でも、なんか変わった名前だったぞ」
「まったく…」
どうしようもないやつだと、宗一は心の奥底のさらに深い深い部分からそう思うのだった。
隣には洋介がおり、つい先ほど登校中に一緒になっていた。
「なんだ? 寝不足か?」
「ああ。昨日、誰かさんと延々と電話で話していたからな」
「そういえばそうだったな!」
そう言って洋介は脳天気な笑いを立てていた。
電話の相手とはこの隣を歩いている洋介である。
パソコンの挙動がおかしいと相談を受け、トラブルの解決まで付き合っていたのだ。
ゆえに普段よりも、二時間は睡眠時間が短くなった。
体中を眠気とだるさがむしばんでいるのは、そういった理由がある。
校門をくぐり校内に入ったときだ。
校舎の入り口に一人の生徒が立ち尽くしていた。
体格の良い男子生徒であり、制服をだらしなく着こなしており、それが彼の雰囲気にはよく似合っている。
「あれ、板東じゃね?」
洋介が小声で耳打ちでもするかのように宗一に伝える。
宗一も、その名前は知っていた。
彼は学園の二年生で、ライムとは違った意味合いで有名人である。
見た感じからして厳つく、強面。
喧嘩が強いらしく、いわゆる問題児であるし、周囲の真面目な生徒たちからは敬遠され、浮いた存在として認識されていた。
まあ、別に絡んでくるやつではない。
腕っ節は強いが、いわゆる「硬派」な感じのする昔すぎる風な不良性とが板東為吉である。傍らを通り過ぎるとき、洋介は最後まで彼を意識していたが、宗一は普通である。
何もしなければ大人しいのだから、特に意識するまでもない。
むしろ、眠気とだるさと戦っていたので、それどころではないというのが実情であるが。
「はぁー…なんか俺、ああいう手合いは苦手だな…」
「お前はなんか後ろめたいことしすぎてんだろ。ああいう手合いに睨まれそうなこととか」
「んなことしてねーけどな-。まあ、そんなことよりあれだあれ」
「ん?」
「ちょっと前に話したことあんだろ? あの今年入った一年のすっっっっごく可愛い子。あれやっぱり可愛いわ。こないだ偶然、見かけたんだけどな。なんか元気あって、凄く可愛いんだ、あの子」
「そんなこと言って歩いているから、睨まれるんだろうが」
心の底からそう思う。
いつかシメられるのではないかと心配になる。
だが、そんな忠告じみたつぶやきなんかはまったく耳に入っていない様子である。
「その時、あの子の取り巻きが何人かいたんだけど、群を抜いて可愛いんだよ。いや、むしろ、取り巻きとの比較がいっそう彼女を引き立たせていた!」
その熱の入った説明に思わず呆れた気持ち混じりのため息が出る。
嘆息というやつだ。
「さっきからそうやって説明しているけど、一年生だろ? 名前はなんて言うんだよ…」
「それが名前誰かから聞いたんだけど…なんて名前だっけな? ははは、忘れちまった」
「そんなに可愛い子だって言うのに忘れるかよ、普通…」
「ああ、女の子の名前はたくさん聞きすぎているからな-。あまりに多すぎて忘れちまうんだ。でも、なんか変わった名前だったぞ」
「まったく…」
どうしようもないやつだと、宗一は心の奥底のさらに深い深い部分からそう思うのだった。
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