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三章
喧嘩上等! その1
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「雲野…分かっているな? 解散だ、解散!」
淡々とした口調で述べたのは、教職員の一人、緒方であった。
目の前に立っていた俊美は困惑顔をするしかなかった。
雲野俊美は方丈学園の生徒である。
ゆえにこうして度々職員室に呼ばれる。
本日は退魔クラブの件で呼び出しを食ったのだ。
なんでも、部員が俊美とライムの二人しかおらず、活動らしい活動もしていないので廃部にすると言われたのだ。
「だけど、俺たちは影ながら学園を守っているんですよ! 今は二人だけなんで活動は出来ていないですけど…」
そこまで言いかけたとき、緒方はびしっと指を差してきた。
「学園を守るとかそういうのはいいから。とにかくなんで部員が集まらないのか、理由を考えてみろ! トマトなんか連れて、アホなことやってんじゃないぞ! お前もう一年ダブりたいのか?」
とりつくしまもない。
もはや何を言っても無駄だろう。
それを感じた俊美は深く深く項垂れた。
「ただし…」
「えっ?」
「もしも、今月中にお前が部員七人集めることが出来れば話は別だ」
「七人の部員…?」
「そうだ。その時は正式に部活動として認められるからな。部の存続もあり得る」
静かに厳かに緒方が行ったように見えたが、それは彼の中にある不本意な気持ちがにじみ出ていただけかも知れなかった。
◆◇
後輩相手に試合形式の練習をしていた。
華麗な動きで相手を圧倒し、倒した後に相手の改善点を述べていく。
次から次へとライムは後輩たちに的確な指導をしていった。
フェンシング部の練習が終わった後、部室で着替えをする。
厳しい練習時の緊張感が解けてなくなり、それぞれがワイワイと適当な話に花を咲かせていた。
今日帰って、なんのドラマを見るとか。
この後、どこかで何かを食べるなど、それは年相応の女子たちの話である。
着替えを終えて、そんな会話をしていたライムであるが、それもわずかな間だけである。
この後に退魔クラブの部室に行かなければならない。
そろそろ部室内がゴミゴミとしてきたので、片付けようと心に決めていたからである。
「それじゃ、私、先にいきますからー」
ニッコリと笑って挨拶を済ませ、部室から出る。
フェンシング部の部室は他のいくつかの部と共用であり、体育館の使用が認められているとき、同時に使用が認められる。
部室と言っても、もっぱら着替え用の部屋であり、それぞれの部が所有する道具や用具などは体育館に併設された物置の中である。
退魔クラブの部室は校内の敷地の中でも、離れた場所にぽつんとある小屋の中であり、移動するにはやや手間がかかった。
体育館から出たライムは学校の敷地内を半周ほどはしなくてはならない。
所要時間は十分というところか。
今し方、体育館のちょうど裏側の辺りを歩いていたとき、奇妙な違和感を覚えた。
「なにかしら?」
気配を感じて振り返る。
この辺りは素行の良くない生徒がたまり場として使っている場所である。
大方、体育館の建物の死角に隠れてだべっている生徒の気配かとも思った。
しかし、彼女が振り返るに人の形はない。
声くらいは聞こえても良さそうだが、まったくそれもなかった。
「うーん…」
気のせいだろうか。
だが、確かに自分が見られているかのような気がしたのである。
「ま、いいか」
とにかく先を急ごう。
そう思い直した彼女は釈然とはしない調子であるが、退魔クラブの部室に向かうのであった。
淡々とした口調で述べたのは、教職員の一人、緒方であった。
目の前に立っていた俊美は困惑顔をするしかなかった。
雲野俊美は方丈学園の生徒である。
ゆえにこうして度々職員室に呼ばれる。
本日は退魔クラブの件で呼び出しを食ったのだ。
なんでも、部員が俊美とライムの二人しかおらず、活動らしい活動もしていないので廃部にすると言われたのだ。
「だけど、俺たちは影ながら学園を守っているんですよ! 今は二人だけなんで活動は出来ていないですけど…」
そこまで言いかけたとき、緒方はびしっと指を差してきた。
「学園を守るとかそういうのはいいから。とにかくなんで部員が集まらないのか、理由を考えてみろ! トマトなんか連れて、アホなことやってんじゃないぞ! お前もう一年ダブりたいのか?」
とりつくしまもない。
もはや何を言っても無駄だろう。
それを感じた俊美は深く深く項垂れた。
「ただし…」
「えっ?」
「もしも、今月中にお前が部員七人集めることが出来れば話は別だ」
「七人の部員…?」
「そうだ。その時は正式に部活動として認められるからな。部の存続もあり得る」
静かに厳かに緒方が行ったように見えたが、それは彼の中にある不本意な気持ちがにじみ出ていただけかも知れなかった。
◆◇
後輩相手に試合形式の練習をしていた。
華麗な動きで相手を圧倒し、倒した後に相手の改善点を述べていく。
次から次へとライムは後輩たちに的確な指導をしていった。
フェンシング部の練習が終わった後、部室で着替えをする。
厳しい練習時の緊張感が解けてなくなり、それぞれがワイワイと適当な話に花を咲かせていた。
今日帰って、なんのドラマを見るとか。
この後、どこかで何かを食べるなど、それは年相応の女子たちの話である。
着替えを終えて、そんな会話をしていたライムであるが、それもわずかな間だけである。
この後に退魔クラブの部室に行かなければならない。
そろそろ部室内がゴミゴミとしてきたので、片付けようと心に決めていたからである。
「それじゃ、私、先にいきますからー」
ニッコリと笑って挨拶を済ませ、部室から出る。
フェンシング部の部室は他のいくつかの部と共用であり、体育館の使用が認められているとき、同時に使用が認められる。
部室と言っても、もっぱら着替え用の部屋であり、それぞれの部が所有する道具や用具などは体育館に併設された物置の中である。
退魔クラブの部室は校内の敷地の中でも、離れた場所にぽつんとある小屋の中であり、移動するにはやや手間がかかった。
体育館から出たライムは学校の敷地内を半周ほどはしなくてはならない。
所要時間は十分というところか。
今し方、体育館のちょうど裏側の辺りを歩いていたとき、奇妙な違和感を覚えた。
「なにかしら?」
気配を感じて振り返る。
この辺りは素行の良くない生徒がたまり場として使っている場所である。
大方、体育館の建物の死角に隠れてだべっている生徒の気配かとも思った。
しかし、彼女が振り返るに人の形はない。
声くらいは聞こえても良さそうだが、まったくそれもなかった。
「うーん…」
気のせいだろうか。
だが、確かに自分が見られているかのような気がしたのである。
「ま、いいか」
とにかく先を急ごう。
そう思い直した彼女は釈然とはしない調子であるが、退魔クラブの部室に向かうのであった。
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