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二章
科学の娘と化学の娘 その4
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ふらふらになりながら教室に戻った。
座席に着いて、おもむろに突っ伏してしまった。
朝なのに。登校したばかりなのに、マラソン大会が終わった後の夕方のような体調である。
「あー、もう早退したい…」
「どうしたんだ? 職員室で怒られでもしたのか?」
洋介に声をかけられて、ようやく顔を上げる。
「…怒られたほうがマシだったかもな…」
宗一が複雑過ぎる表情で言い放つも、洋介の脳天気な調子はいつもと変わらない。
「なんだなんだ。今日の朝からお前変だぞ!」
正確に言えば、昨日からもうすでにおかしいのだ。
退魔クラブにアンドロイド。
学園生活からかけ離れたというか、現実離れした出来事が大挙して押し寄せているのだ。
きっと自分の脳は受け入れられない現実を受けいるために必死だろうし、パニックだろうと思うのだ。
頭痛。
そういえば朝からである。
なんだか、こめかみの辺りがずきずきと痛む理由はそこに起因するに違いなかった。
「なんだ、マジに早退した方がいいんじゃないか? 顔色悪いぞ」
「出来るならそうしたいよ…」
そう言いながら、右手で頭を抱えたときだった。
担任が教室に入ってきたし、その後ろには一人の女子生徒の姿があった。
途端に教室がざわつく。
すでに席に着いていた洋介が隣から小声で「転校生かな?」と声をかけてきた。
「転校生、むっちゃ可愛いんじゃね?」
「本当…綺麗な子…」
誰かと誰かがそんな言葉を口にした。
一瞬、宗一自身も目を見張った。
そういえば、山野は性別には言及していなかったことを思い出す。
そして、転校生というものがやってきて初めて分かった。
周囲の彼らの感想が示す通り、担任と共に教室に入ってきたのは彼ではなく彼女だったのだ。
身長は、まあ、高い方だろう。
アイドルのように顔は整っているが、どこか表情に陰りがある雰囲気だ。
アンドロイドとは言われていたが、見た目はまったく人間と変わらないように思える。
「こちらが転校生のアンシーさん。みんなよろしく頼むな」
そう紹介されて、彼女はお辞儀をする。
この辺りもまったく自然な動きだ。
本当にアンドロイドなのだろうか。
ふと、職員室で告げられていた事実に首を傾げたい気持ちである。
「とりあえず、相馬。お前の隣の席になるからよろしく頼むぞ!」
「えっ!? は、はい!」
突然話を振られ、戸惑い混じりの返事になった。
先に言われていたはずなのに、ぎこちなさが混ざるのは、単純にこのアンシーという少女型のアンドロイドに見とれていたからだ。
これが作り物という先入観があればこそだが、見事な造形美だと思う。
愛らしい感じのする瀬戸田とは違い、どことなく楚々とした美しさを漂わせていた。
慌ててしまうのは無理もない。
彼女に感心が言っていたときに不意打ち的に声をかけられたのだ。
そして、その瞬間、宗一は自分の腕が机の上からペンを落としていたのに気付かなかった。
アンシーは擦れ違いざまに、そのペンを拾うと、宗一の前に差し出した。
「あ、ありがとう…!」
やはり、ぎこちない礼を言うと、アンシーは微笑んだように見えた。
それはとても美しくて、なにがなんだか分からないのだが、宗一自身、顔が赤くなった。
凄くいい子みたいだ。
なんだか、先ほどまで頭を抱えていたことが馬鹿らしく思えた。
昨日の退魔クラブは悪い出来事だが、今日の転校生の件は途端に良いことのように感じられる。
今この瞬間から何か素敵なことが始まったのだ。
少なくともこのときの宗一はそう思っていたのだった。
座席に着いて、おもむろに突っ伏してしまった。
朝なのに。登校したばかりなのに、マラソン大会が終わった後の夕方のような体調である。
「あー、もう早退したい…」
「どうしたんだ? 職員室で怒られでもしたのか?」
洋介に声をかけられて、ようやく顔を上げる。
「…怒られたほうがマシだったかもな…」
宗一が複雑過ぎる表情で言い放つも、洋介の脳天気な調子はいつもと変わらない。
「なんだなんだ。今日の朝からお前変だぞ!」
正確に言えば、昨日からもうすでにおかしいのだ。
退魔クラブにアンドロイド。
学園生活からかけ離れたというか、現実離れした出来事が大挙して押し寄せているのだ。
きっと自分の脳は受け入れられない現実を受けいるために必死だろうし、パニックだろうと思うのだ。
頭痛。
そういえば朝からである。
なんだか、こめかみの辺りがずきずきと痛む理由はそこに起因するに違いなかった。
「なんだ、マジに早退した方がいいんじゃないか? 顔色悪いぞ」
「出来るならそうしたいよ…」
そう言いながら、右手で頭を抱えたときだった。
担任が教室に入ってきたし、その後ろには一人の女子生徒の姿があった。
途端に教室がざわつく。
すでに席に着いていた洋介が隣から小声で「転校生かな?」と声をかけてきた。
「転校生、むっちゃ可愛いんじゃね?」
「本当…綺麗な子…」
誰かと誰かがそんな言葉を口にした。
一瞬、宗一自身も目を見張った。
そういえば、山野は性別には言及していなかったことを思い出す。
そして、転校生というものがやってきて初めて分かった。
周囲の彼らの感想が示す通り、担任と共に教室に入ってきたのは彼ではなく彼女だったのだ。
身長は、まあ、高い方だろう。
アイドルのように顔は整っているが、どこか表情に陰りがある雰囲気だ。
アンドロイドとは言われていたが、見た目はまったく人間と変わらないように思える。
「こちらが転校生のアンシーさん。みんなよろしく頼むな」
そう紹介されて、彼女はお辞儀をする。
この辺りもまったく自然な動きだ。
本当にアンドロイドなのだろうか。
ふと、職員室で告げられていた事実に首を傾げたい気持ちである。
「とりあえず、相馬。お前の隣の席になるからよろしく頼むぞ!」
「えっ!? は、はい!」
突然話を振られ、戸惑い混じりの返事になった。
先に言われていたはずなのに、ぎこちなさが混ざるのは、単純にこのアンシーという少女型のアンドロイドに見とれていたからだ。
これが作り物という先入観があればこそだが、見事な造形美だと思う。
愛らしい感じのする瀬戸田とは違い、どことなく楚々とした美しさを漂わせていた。
慌ててしまうのは無理もない。
彼女に感心が言っていたときに不意打ち的に声をかけられたのだ。
そして、その瞬間、宗一は自分の腕が机の上からペンを落としていたのに気付かなかった。
アンシーは擦れ違いざまに、そのペンを拾うと、宗一の前に差し出した。
「あ、ありがとう…!」
やはり、ぎこちない礼を言うと、アンシーは微笑んだように見えた。
それはとても美しくて、なにがなんだか分からないのだが、宗一自身、顔が赤くなった。
凄くいい子みたいだ。
なんだか、先ほどまで頭を抱えていたことが馬鹿らしく思えた。
昨日の退魔クラブは悪い出来事だが、今日の転校生の件は途端に良いことのように感じられる。
今この瞬間から何か素敵なことが始まったのだ。
少なくともこのときの宗一はそう思っていたのだった。
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