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第9話 星菓子の花

7 お菓子のお祭り

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 るりなみは、今まであまり、厨房ちゅうぼうに足をれたことがなかった。

 王宮おうきゅう食事しょくじは、それぞれの部屋に運ばれる朝ごはんと、みなで食卓しょくたくかこばんごはんでまわっている。

 その料理りょうりは、種類しゅるいは多いがどれも軽いものだ。
 料理人りょうりにんわざによって、特別とくべつ栄養えいようを高めている……ということだが、厨房でなにがおこなわれているか、るりなみには想像そうぞうがつかない。

 今はお昼どきで、料理人たちは、おしゃべりをしながらゆっくりと晩ごはんの仕込しこみをしていた。
 るりなみたちが入っていくと、みんなはこころよく「やぁ、歓迎かんげいしますよ」とか「おくへどうぞ」と言って、奥の料理台りょうりだいけてくれた。

「さぁ、ではちゃちゃっとつくりましょう!」

 そう言ってうでをまくりあげたみつみにエプロンをわたされ、るりなみとゆめづきは、星の花のみつでのお菓子かしづくりをはじめた。



 蜜を集めて、かきまぜたり、かためたり、なべ煮詰につめたり……こまごまとした調理ちょうり仕方しかたのひとつひとつが、るりなみにはおどろきだった。
 みつみが手本てほんとしてやってみせるときは魔法のように見えるのに、自分でおこなうと、ちから加減かげんもコツも必要ひつような技なのだとよくわかる。

 それでもやがて、カラメル菓子がしのような飴玉あめだまができあがり、透明とうめいがみにきれいにつつんでいくうち、るりなみはうれしくなっていった。

 ゆいりにそれをわたす場面を想像して、心がどきどきとする。

 ゆいりはよろこんでくれるかな……、美味おいしいと思ってくれたらいいな……。

 そのうちに、みつみは次々つぎつぎに、複雑ふくざつなお菓子のレシピを提案ていあんしていった。

 むぎ生地きじぜこんだり、たまごき合わせたり、るりなみとゆめづきは作業さぎょうけ合いながら、夢中むちゅうになってつくっていった。

 星の花の蜜は、たくさんのあめ菓子がしのほか、丸い、四角い、あるいは山のかたちの、小さなケーキにも仕上しあがったのだった。


   *   *   *
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