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[第2部] 第8話 夜めぐりの祭り
9 月と星の化身
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「ゆいり、なんで、全部わかっていたの……?」
るりなみが問いかけると、魔法使いは首をかしげた。
「はてさて……月の化身と星の化身の小さなともし人よ、この杖を受け取る準備は、できておりますかな?」
ゆいりに違いないその魔法使いは、演じるように、歌うように、問い返してきた。
ゆいりは、すべてお見通しで、わかってくれていたんだ……。
るりなみが目をぱちぱちさせているうちに、ゆめづきが「はい」と答えて、杖に手を伸ばした。
ゆめづきに、次いでるりなみに、魔法使いゆいりは丁寧に杖を渡した。
なめらかに磨かれた木の杖は、るりなみがついて歩けるほどの長さがある。
くるりと丸くなったその杖の先に、魔法の光が宿っていた。
魔法使いゆいりは、ゆっくりと呪文のように語った。
「あなたがたがともした光は、今夜のうちは、ゆらゆらと魔法の灯として燃えています。けれど、年越しの夜に冷やされて、明日の朝──新しい年の夜明けには、月か星、どちらかの形に固まります」
るりなみとゆめづきはうなずいた。
るりなみたちがこれから、この杖で街の家々にともして歩く、魔法の灯。その灯は、どういう仕組みか、一晩のうちに灯籠の中で、月の形、あるいは星の形に固まる……それが、このお祭りが「月祭り」「星祭り」と呼ばれるゆえんだ、と聞いていた。
るりなみに授業でそう教えてくれたゆいりが、今は街の魔法使いに扮して、最後の言葉を語った。
「誰がいつともした光が、月になるとも、星になるとも知れません。あなたがたの役割は、この年越しの夜を、歌と光で導いて照らすこと。新しい年を祝福する希望の心で、この王都をおめぐりなさい……さぁ!」
ゆいりは、ばさりとローブをひるがえして手を伸ばし、砂をまくようなしぐさをした。すると、るりなみたちの杖の先の光が、矢印の形になってある方向を示した。
まわるべき地区の「通り」は、杖をもらうときに割り振られて決まると聞いていたが、その光の矢印のほうへ進めばよい、ということらしい。
ゆめづきは、魔法使いのゆいりに軽く目配せで挨拶をして、さっそくそちらへと進み出した。
るりなみはそれを追う前に、小声でゆいりに「ありがとう」と告げた。
ゆいりは口もとに微笑みを浮かべ、るりなみにだけ見えるように、小さく手を振って送り出してくれた。
* * *
るりなみが問いかけると、魔法使いは首をかしげた。
「はてさて……月の化身と星の化身の小さなともし人よ、この杖を受け取る準備は、できておりますかな?」
ゆいりに違いないその魔法使いは、演じるように、歌うように、問い返してきた。
ゆいりは、すべてお見通しで、わかってくれていたんだ……。
るりなみが目をぱちぱちさせているうちに、ゆめづきが「はい」と答えて、杖に手を伸ばした。
ゆめづきに、次いでるりなみに、魔法使いゆいりは丁寧に杖を渡した。
なめらかに磨かれた木の杖は、るりなみがついて歩けるほどの長さがある。
くるりと丸くなったその杖の先に、魔法の光が宿っていた。
魔法使いゆいりは、ゆっくりと呪文のように語った。
「あなたがたがともした光は、今夜のうちは、ゆらゆらと魔法の灯として燃えています。けれど、年越しの夜に冷やされて、明日の朝──新しい年の夜明けには、月か星、どちらかの形に固まります」
るりなみとゆめづきはうなずいた。
るりなみたちがこれから、この杖で街の家々にともして歩く、魔法の灯。その灯は、どういう仕組みか、一晩のうちに灯籠の中で、月の形、あるいは星の形に固まる……それが、このお祭りが「月祭り」「星祭り」と呼ばれるゆえんだ、と聞いていた。
るりなみに授業でそう教えてくれたゆいりが、今は街の魔法使いに扮して、最後の言葉を語った。
「誰がいつともした光が、月になるとも、星になるとも知れません。あなたがたの役割は、この年越しの夜を、歌と光で導いて照らすこと。新しい年を祝福する希望の心で、この王都をおめぐりなさい……さぁ!」
ゆいりは、ばさりとローブをひるがえして手を伸ばし、砂をまくようなしぐさをした。すると、るりなみたちの杖の先の光が、矢印の形になってある方向を示した。
まわるべき地区の「通り」は、杖をもらうときに割り振られて決まると聞いていたが、その光の矢印のほうへ進めばよい、ということらしい。
ゆめづきは、魔法使いのゆいりに軽く目配せで挨拶をして、さっそくそちらへと進み出した。
るりなみはそれを追う前に、小声でゆいりに「ありがとう」と告げた。
ゆいりは口もとに微笑みを浮かべ、るりなみにだけ見えるように、小さく手を振って送り出してくれた。
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