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すてきな出会い
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23時 自室にて
ベッドの中で、ナユタはぼんやりとスマホの明かりを眺めていた。
少女との出会いは幻ではなかったかー。
受験への漠然とした不安とストレスが生み出した空想の産物ー。
もしくはあの公園にいた地縛霊か何かか…
帰ってから今までそんなことばかり考えていたが、目の前のメッセージアプリのやりとりを 反芻してみて、おそらく現実にあったことに間違いはなさそうだった。
いや、メッセージをしているのは彼女本人でないかも知れないし、こちらを油断させてなにがしかの勧誘の機会を伺っているのかもしれない、とも思ったが、不思議とそれでも別に構わないとさえ思っていた。
(本当に、綺麗だったなぁ…)
そう、あの少女の美貌・身体的造形・可愛らしい声は間違いなく存在していた。
(私がぜんぶ叶えてあげる…)
彼女の鈴のような声がまだ耳元から離れない。
メッセージにはこれからの具体的な計画のアイデアがいくつも羅列していた。
①くるみとタイツを穿こう
➁くるみとレオタードを買いに行こう
③くるみと行く♪はじめてのバレエ鑑賞(解説付き)
(いやいや無理無理無理!)
冷静に考えてバレエ少女からのこんな非現実的な提案はイタズラか逆罰ゲームに違いない。
ただ、以前にテレビで男性アイドルが実姉にメイクをされて遊ばれていたというエピソードを話していたのを思い出した。
年上の女性は母性本能というのか、年下の男子を愛でたい欲求が潜在的にあるのかも知れない。
そうした理由であったなら、かろうじて理解はできた。
ピロン♪
新しいメッセージが入った。
トーク画面をみていたのですぐに既読がついて恥ずかしい。
"土曜日 こないだと同じ時間に待ってるねー♪"
"ずっとトーク開いてたでしょ? かわいいなぁw"
どうやら遊ばれているのは確からしい。
まぁ上記の提案が冗談だとしても、宿題以外にやることもない。
もう一度くるみに会えるなら、というか会えるだけで会う理由になるな、と 傍から聞けばおかしな理屈で予定をリマインダーにセットした。
ー土曜日 午後8時
ナユタはベンチのそばに自転車を置いた。
街灯はついているものの、1人で来るのは少し心細い。
というか彼女のほうは大丈夫なんだろうか。日が長いとはいえ、夜に女子高生が1人でくるなんて
比較的治安のよいこの地区でも不安だし危険だ。ましてや夏休みである。
しかし事前に出迎えの打診をしたら体よく断られてしまった。やはり謎が多い人である。
「おまたせ!」
突然、肩を叩きながらくるみが現れた。
ナユタは思わず手に持っていたスマホを落とした。
「びっくりさせないでくださいよ!もー。」
幸いスマホは傷つかずに無事だった。
…しかし、画面には某バレエ学校のインスタの投稿を映していた。
「あら、妖精ちゃんの学校じゃん!ナユタくんこういうの好きなんだw」
投稿の内容は海外のバレエ少女たちがトウシューズを履き替えている、という写真だった。
"妖精"というのはこの学校の少女たちへの愛称だ。
背中が大きく開いたシンプルな水色レオタードに立膝のポーズ、見る者のによっては性的消費と捉えてもおかしくない写真だ。
「いや、これは綺麗だなって思って……」
これはナユタの本心だった。
世界一のバレエ学校の生徒であってもトウシューズへの憧れは変わらない。
これから 数多の厳しいレッスンが彼女たちを待ち受けているだろう。
トウシューズに足を通すことはその覚悟を受け入れた証でもあるのだ。
その先にあるバレリーナという果てしない夢に希望を抱く。
その写真は彼女たちのそんな思いまで見えるようでとても尊いのだ。
「わかるよ~尊いよねぇ。うんうん。」
くるみは腕を組みながら、画面を食い入るように覗く。
ナユタは身近に思いを共有してくれた人がいてうれしかった。
「ナユタくんも、このシチュに憧れてたりして?」
いたずらっぽく、しかし柔和な表情でいう。
「………はい。」
思わず、言葉にしてしまった。
自分の感情を理解してくれた人になら、自分をさらけ出していいのかもしれない、と思ったからだ。
「ちょっとあっちに行こっか?」
くるみは両手でナユタの脇を抱え、(やや強引に) 東屋のほうへ向かった。
ベッドの中で、ナユタはぼんやりとスマホの明かりを眺めていた。
少女との出会いは幻ではなかったかー。
受験への漠然とした不安とストレスが生み出した空想の産物ー。
もしくはあの公園にいた地縛霊か何かか…
帰ってから今までそんなことばかり考えていたが、目の前のメッセージアプリのやりとりを 反芻してみて、おそらく現実にあったことに間違いはなさそうだった。
いや、メッセージをしているのは彼女本人でないかも知れないし、こちらを油断させてなにがしかの勧誘の機会を伺っているのかもしれない、とも思ったが、不思議とそれでも別に構わないとさえ思っていた。
(本当に、綺麗だったなぁ…)
そう、あの少女の美貌・身体的造形・可愛らしい声は間違いなく存在していた。
(私がぜんぶ叶えてあげる…)
彼女の鈴のような声がまだ耳元から離れない。
メッセージにはこれからの具体的な計画のアイデアがいくつも羅列していた。
①くるみとタイツを穿こう
➁くるみとレオタードを買いに行こう
③くるみと行く♪はじめてのバレエ鑑賞(解説付き)
(いやいや無理無理無理!)
冷静に考えてバレエ少女からのこんな非現実的な提案はイタズラか逆罰ゲームに違いない。
ただ、以前にテレビで男性アイドルが実姉にメイクをされて遊ばれていたというエピソードを話していたのを思い出した。
年上の女性は母性本能というのか、年下の男子を愛でたい欲求が潜在的にあるのかも知れない。
そうした理由であったなら、かろうじて理解はできた。
ピロン♪
新しいメッセージが入った。
トーク画面をみていたのですぐに既読がついて恥ずかしい。
"土曜日 こないだと同じ時間に待ってるねー♪"
"ずっとトーク開いてたでしょ? かわいいなぁw"
どうやら遊ばれているのは確からしい。
まぁ上記の提案が冗談だとしても、宿題以外にやることもない。
もう一度くるみに会えるなら、というか会えるだけで会う理由になるな、と 傍から聞けばおかしな理屈で予定をリマインダーにセットした。
ー土曜日 午後8時
ナユタはベンチのそばに自転車を置いた。
街灯はついているものの、1人で来るのは少し心細い。
というか彼女のほうは大丈夫なんだろうか。日が長いとはいえ、夜に女子高生が1人でくるなんて
比較的治安のよいこの地区でも不安だし危険だ。ましてや夏休みである。
しかし事前に出迎えの打診をしたら体よく断られてしまった。やはり謎が多い人である。
「おまたせ!」
突然、肩を叩きながらくるみが現れた。
ナユタは思わず手に持っていたスマホを落とした。
「びっくりさせないでくださいよ!もー。」
幸いスマホは傷つかずに無事だった。
…しかし、画面には某バレエ学校のインスタの投稿を映していた。
「あら、妖精ちゃんの学校じゃん!ナユタくんこういうの好きなんだw」
投稿の内容は海外のバレエ少女たちがトウシューズを履き替えている、という写真だった。
"妖精"というのはこの学校の少女たちへの愛称だ。
背中が大きく開いたシンプルな水色レオタードに立膝のポーズ、見る者のによっては性的消費と捉えてもおかしくない写真だ。
「いや、これは綺麗だなって思って……」
これはナユタの本心だった。
世界一のバレエ学校の生徒であってもトウシューズへの憧れは変わらない。
これから 数多の厳しいレッスンが彼女たちを待ち受けているだろう。
トウシューズに足を通すことはその覚悟を受け入れた証でもあるのだ。
その先にあるバレリーナという果てしない夢に希望を抱く。
その写真は彼女たちのそんな思いまで見えるようでとても尊いのだ。
「わかるよ~尊いよねぇ。うんうん。」
くるみは腕を組みながら、画面を食い入るように覗く。
ナユタは身近に思いを共有してくれた人がいてうれしかった。
「ナユタくんも、このシチュに憧れてたりして?」
いたずらっぽく、しかし柔和な表情でいう。
「………はい。」
思わず、言葉にしてしまった。
自分の感情を理解してくれた人になら、自分をさらけ出していいのかもしれない、と思ったからだ。
「ちょっとあっちに行こっか?」
くるみは両手でナユタの脇を抱え、(やや強引に) 東屋のほうへ向かった。
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