水漏れ事故に見舞われた話

月代零

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保険は大事

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 床を拭いて、濡れたものを片付ける作業も大体済んでぐったりした頃、水道屋と電気屋のおじさんが代わる代わるやってきた。
 二人とも、天井裏を確認して、特にうちでの作業はなく、安全確認をして帰って行った。

「ここが上の部屋の排水管で、これが換気扇の配管ですね。ここからこう漏れてきたんですね~」

 と、おじさんがスマホで撮った天井裏の写真を見せてもらいながら説明してくれる。
 へえ、天井裏ってこうなってるのかぁと、せっかくの機会なので観察させてもらう。マンションの天井裏の描写が必要な機会などあるかわからないが。

 電気は、おそらくシーリングライトに水がかかって、漏電ブレーカーが落ちただけで壊れてはいないとお墨付きをもらったので、ブレーカーを上げて、電気は復活した。ホテル暮らしはしなくてよさそうだった。
 よくよく見たら、配電盤に漏電ブレーカーというのがあって、そこが落ちていた。メインのブレーカーは自分で落としたが、漏電ブレーカーは気付かなかった。

 水道屋のおじさんには、「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝られたが、おじさんが謝ることじゃないのになあと思った。サービス業は大変である。
 それに、故意や明らかに防げたミスならブチギレるが、事故ならまあ……仕方ない。うん。

 不動産屋のお姉さんから何度目かの電話があり、火災保険の会社から被害の確認が入るから、対応をお願いしますと告げられた。
 賃貸物件を契約しているなら、ほぼ強制的に火災保険に入っていると思うが、余計な金を払わされていると思ってはいけないと実感した。人生、何が起こるかわからないのだ。

 水道屋と電気屋のおじさんが帰った時には、既に夕方。家にあったタオルをほとんど雑巾にしてしまったので、買い足すために疲れた身体を奮い立たせて出かけた。夕食を作るのも面倒になったので、ついでにスーパーで惣菜を買って帰った。
 予想外のことが起きた一日は、そうして終わった。



 数日後、保険会社から、保険請求の書類が送られてきた。(うちが加入している保険ではなく、上の部屋のもの)
 いわゆる賠償金的なものはなく、純粋な物損に対して支払われるもののようだった。破損したもの・購入した時期・被害金額を書き、写真を添付する仕様だった。

 とりあえず、カーペットはクリーニングに出すのも面倒なので廃棄。布張りの椅子などもそのまま使うのは気持ちが悪いので、破損したことにする。
 あとは、水を被ったゲーム機、マウス、コントローラーなど、いつ買ったっけ? いくらくらいだっけ? と思い出しながら、おおよそのことを適当に書いた。大袈裟に書いていいって言われたし。

 そして、スマホからパソコンに写真を転送し、プリンタに出力。写真を撮っておいて正解だった。何かあったら、まず証拠の保全である。

 普通紙しかなかったので、印刷がいまいち不鮮明だった。濡れていることがかろうじてわかるくらいで、壊れたかどうかの証拠にはならない。これでいいのか? 仕方がない、まあいいか……と妥協することにする。
 買い足したタオルや、トイレのスリッパや便座シートなどのレシートも入れ、書類を返送した。

 数日後、書類が無事に受理されたと連絡があった。
 これで、この件はひとまず終了である。


 残されたのは、シミの浮いた天井だが、これをどうするのかはまだ連絡がない。
 張り替え工事をするなら、一旦部屋の荷物を全部出さないといけないという話だった。そうしたら、猫もペットホテルに預けないといけない。
 まあ、シミが残っていても困ることはないし、面倒なので、うちがいつかこの部屋を引き払った後に工事をしてくれても構わないのだが。

 ともかく、水回りのメンテナンスは日頃からきちんとやっておこう。何かあってからでは遅いし、いつ自分が被害者・加害者になるかわからない。
 それから、何かあったら写真を撮ったり、証拠を残しておくこと。その後の対応がスムーズになる。

 これを教訓として、この話を終わる。



                                  
追記

 天井の修理は、入居中でも、いつか引き払った時でも、どちらでも構わないようだった。カビが生えたりすれば、話は別だが。
 日程の調整や、部屋の荷物を全部出したり、猫をペットホテルに預けないといけないことを考えると、うちは後者を選択した。
 そんなわけで、天井には未だ、事故の爪痕が残っているが、それも目に入らなければ忘れている程度になった。
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